残暑の影響で9月前半までは税抜き700円台の異例の高豚価が続いたが、その後、気温低下に伴って出荷頭数が回復し10月は月間通して600円を割って推移した。ただ、月後半は500円の大台を割り込み、コロナ禍以前の400円台半ばまで値下がりし、東京市場の場合、月間平均は上物税抜きで517円(前年同月比56円安)、中で501円(同)、並で488円(37円安)となり、等外(506円・123円高)を除き各等級で前年相場を下回った。これに対して末端需要はスライス系の動きが徐々に出始めたものの、気温が平年より暖かい日が続いたことや野菜価格の高騰、そして消費者の生活防衛意識の強まりから、例年よりはパッとしない商いに終わった。
例年10~11月は一年のなかで最も出荷頭数が多い時期であり、ことし11月は前月よりも出荷増が見込まれている。現状の実需が強くならない限り、豚価が大きく上向く可能性は少ない。ただ、各社、冷凍在庫が少ないため、スソ物を中心に凍結に仕向ける動きも継続することから、市中に投げ玉は発生しないとみられる。消費環境は良くないものの、輸入チルドのコストが上昇しているほか、鍋物需要が本格化するため、中旬以降、持ち直すことで豚価も月間平均(東京市場)では上物税抜きで480円~500円程度とみられる。
〈供給見通し〉
農水省が10月20日に公表した肉豚生産出荷予測によると、11月の出荷は前年並みの147.9万頭で、前月から1.6万頭増加と予想している。結果、1日当たりの平均出荷頭数も前年並みの7.4万頭となる見込みだ。一部の産地では呼吸器系の疾病の影響が尾を引いているものの、気温の低下に伴って成績は改善し、出荷キャンセルもなくなるなどこの時期らしい出荷となっている。
農畜産業振興機構の豚肉需給予測によると、11月の国内生産量は前年同月比2.7%増の8.3万t、前月から2.5%増と供給量も多い。これに対して輸入量はチルドが同25.8%減の3.1万t、フローズンが同16.4%減の3.8万tと予想している。とくにチルドは3万tを維持しているが、北米産中心に外貨上昇と円安の影響で買付けを絞ったとみられ、需要面で国産生鮮物にプラスに作用するか注目したいところ。
〈需要見通し〉
例年、10月は台風や豪雨が消費に影響を与えていたが、ことしは台風の発生が少なく、比較的過ごし易い天候が多かった。しかし、相次ぐ物価高騰の影響で消費者の生活防衛意識が強く、豚肉でも切り落としなどスソ物やバラ、ひき材などが中心となっている。10月中旬からバラを中心に中部位の動きが徐々に良くなってきたものの、例年よりはパッとしない荷動きとなったようだ。
今週も荷動きが良いのはバラとスソ物、チマキ、大貫正肉などで、カタロース、ロースの荷動きは弱く、供給数量に需要が付いて来ない状況にある。気象庁の季節予報によると、11月も前半は気温がかなり高くなる地域が多いとみられ、鍋物需要の強まりは今月中旬からとみられる。月初の段階では末端で大きな販促を仕掛ける動きは少ないが、輸入チルドがコスト高にあることと、豚価が平年並みに下がってきたことで、量販店からもスポットで入る可能性も高そうだ。
一方、豚価が400円台後半まで下がったことで、スソ物をはじめ前述のカタロース、ロースなどの中部位についても、各社凍結玉を仕込む動きが強まるため、少なくとも生鮮物の投げ玉が市中に出回ることはなさそうだ。
〈相場見通し〉
1日の東京市場の枝肉相場は上物税抜きで486円(前市比3円高)、関東3市場平均で485円(同)でスタートした。中間流通でも末端から徐々に問い合わせが入っており、発注が入るなどして、中旬以降、豚価も上向きに転じる流れになりそうだ。とくに月後半は祝日と12月に向けた発注への対応から、問屋筋の買いも強まる。今後の上場頭数次第ともいえるが、月間平均では上物税抜きで480~500円、中物で460~490円と上中格差も縮小すると予測する。
〈畜産日報2023年11月2日付〉