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土地の数だけ種類があるのが「おでん」という料理。名古屋の味噌おでんは赤味噌で具材がこってりと煮込まれていて、宮崎の都城おでんはブタ軟骨やキャベツ、豆もやしが中心と、それぞれに特色がある。そうした味噌おでんや都城おでんと一緒に、テレビ番組で紹介されたことがあるのが、石川県金沢市の片町に店を構える赤玉本店の金澤おでんだ。(TOP写真:金沢市片町の赤玉本店)
テレビ番組で紹介され全国的に知られるようになった金澤おでん
金澤おでんと言っても、出す店によってそれぞれ守っている味がある。赤玉本店の場合は「お出汁は昆布と煮干しをベースにした薄めですが、具材に特徴があって、車麩や赤巻、梅貝、ふかし、地元の海の幸や山の幸を使っています」と、赤玉株式会社取締役専務の田端葉月さんは解説する。「あとは、パプリカで色づけした練りものにうずらの玉子が入っているばくだんや、ニギスのつみれ、牛肉と椎茸が詰まったロールキャベツなどが当店オリジナルの具材ですね」(田端専務)
そうした、ご当地の具材に独自のメニューを加えたおでんを出す店が、金沢市には古くから幾つもあって庶民の味として親しまれてきたが、「北陸新幹線が開通した時に、地域の名物としてテレビ番組に取り上げられたことで、金澤おでんの名前が一気に知れ渡りました」(田端専務)。番組に登場した赤玉本店にも、全国からおでんを食べに来る観光客がドッと増えた。1店舗しかない店にはひっきりなしに予約が入り、昼時も行列ができる賑わいを見せている。
混雑で店内に入れない客のために自動販売機を設置。店内の注文にもタブレットを導入。対応が改善され満足度と併せて売上向上も
「『いつ行っても人がいっぱいで入れない』という地元の人も出てました」(田端専務)。そういった人のために、おでん種を出汁とともにパックにして販売する自販機を作り、工場の置いてみた。「まだこれ1台だけですが、ご近所の方には評判が良いようで嬉しいです」(田端専務)。混雑するようになった店舗の方でも、「2023年7月から2階の予約席でタブレットを使って注文してもらうようにしました。これによって注文品を出すのがスムーズになりました」(田端専務)。
それまでは、店員が一つひとつ注文を聞いて厨房に伝え、できあがった品を運んでいた。今は注文された品を運ぶだけで済むようになって、店員の負担が軽減された。「お客さまが走り回っている店員を呼んでも、なかなか来てくれないといった不満が解消されました。画像を見て注文できるので、これも試してみようかといったお客さまも増えて、売上が伸びました」(田端専務)
好評を受けて、1階のテーブル席でもタブレット注文をできるようにした。「導入した時は、受け入れていただけるのかといった不安もありましたが、自然に使ってもらえて少ない人数で回せるようになりました。入れて良かったと思っています」(田端専務)。金沢市内でも歴史がある老舗のおでん屋であっても、便利ならタブレット注文という最先端のシステムを取り入れる。そんな革新を赤玉本店では、他にもいろいろと行ってきた。その一つが、見やすい上に使い勝手が良いホームページの作成だ。
ホームページはビジュアル中心にわかりやすく、食欲をそそる。金澤おでんのプレステージも上がるデザイン性
ホームページにアクセスすると、『古都金沢から「ようこそ」のおもてなし』という言葉とともに、赤玉本店で提供している料理の画像が表示される。少し下へとスクロールすると、丸く抜かれた中に金沢の古い街並みが見えるおしゃれなデザインとなり、さらに下へとスクロールすると、おでん、コースメニュー、飲み物といった「お品書き」が現れ、どのようなものを食べたり飲んだりできるかがわかるようになっている。
「他のページに飛ばなくても、そのまま主要な/必要な情報を見られるようにしてもらいました」(田端専務)。赤玉本店や「金澤おでん」のことを知ってもらうために作ったホームページということから、見やすさとわかりやすさにこだわった。
もう一つこだわったのが、スクロールをしても、「オンラインショップ」「予約」「採用サイト」の専用ページへのリンクボタンが、パソコンならページの右端、スマートフォンならページの下に常に表示されるようにしたことだ。メニューバーを操作してリンク先を探さなくても、すぐに目的のページに飛べるようにして、それぞれ利用しやすくした。
シンプルでありながらビジュアルで金澤おでんの美味しさをアピールしている。赤玉だけでなく金澤おでんのプレステージを高める効果も発揮している。
オンラインショップには画像を入れ決済もクレジットカード対応に
「オンラインショップのホームページもリニューアルして、販売している商品の画像を入れられるようにしました。以前は文字だけでしたので、商品がどのようなものか伝わらなかったのが、商品を見て買って戴けるようになりました」」(田端専務)。受けた注文も、以前は手書きで伝票に起こしていたものが、自動的に注文票に記載されるようになって、担当者の手間が減った。
リニューアルによって購買意欲が喚起されるようになった上に、以前は銀行振込か代金引換だけだった決済手段が、クレジットカードの利用も可能となって、注文が増えていった。伝票が手書きのままだったら、とても対応が追いつかなかっただろう。こうした一連の改善によって、オンラインショップの売上も一段と伸張してきているという。
採用サイトは赤玉本店のすべてを知ってもらう作りに
採用サイトも一新した。「赤玉という会社のことを、もっと知ってもらえるようにしたいと考えました」(田端専務)。スクロールしていくだけで、赤玉本店の歴史から募集職種の概要、そして「美味しい日替わりのまかない付き」「社員65歳定年」「月に一度の連休あり」といった条件がわかるようになっていて、自分の興味や希望と重ねていける。「トップ画像も、おでんのメニューだけでなく働いている人を載せて、会社の雰囲気が伝わるようにしました」(田端専務)
赤玉本店のトップページにインスタグラムへの投稿を表示できるようにしたのも、若い人の多くが利用しているインスタグラムを通して、赤玉本店のことをもっと知ってもらおうという狙いがあったという。他の業種と同様に採用難が続いている中で、少しでも関心を持ってくれる人を増やそうと懸命な努力を続けている。
1927年に洋食屋として創業し、戦後におでん屋に業態を変えて現在まで100年近い歴史を誇る赤玉本店が、次のミレニアムへと向かうためにも事業の拡大は欠かせない。ホームページをリニューアルして人材の確保に力を入れる理由もそこにある。
今は、地元での採用以外に、金沢という日本でも屈指の観光地で、都会と違った住み心地を味わえる立地の良さをアピールして、UターンやIターンでの採用にも力を入れている。そうして採用した新しい人材には、「最初は店で働いて赤玉本店についての理解を深めてもらった上で、全国各地で行われる物産展に出てもらい販路を広げるような仕事をして欲しいと考えています」(田端専務)。
次代を担ってビジネスを拡大していける人材を求める
新型コロナウイルスの影響で店舗の売上が落ちる中、オンラインショップでの通販需要は逆に増えていった。ここに商機を見いだし、新型コロナウイルスで影響を受けた会社の構造改革のための助成金を利用して、工場を新しくした。生産能力が上がったことで、増大が期待される通販需要や、開拓を狙っているフェアやイベントへの出店に対応できる体制が整った。あとは活躍してくれる人材を得られればと、ホームページを通じた認知度の向上に期待する。
新しい工場は、HACCAPに基づく衛生管理が行われていて、常にクリーンに保たれている。加えて、ICカードを使った入退室管理を行うようにして、異物混入のようなトラブルや盗難などの被害を防ぐためのセキュリティ体制を強化した。ICカードはそのまま勤怠管理にも使うようにした。前はタイムカードを1枚1枚精査していたものを、自動的に計算できるようにして事務の負担を減らした。ここにも、老舗の伝統にこだわらず従業員の負担を減らすシステムなら積極的に導入しようとするスタンスが表れている。
従業員がビジネスチャットを使って日々の連絡事項を確認したり、入出金を管理するクラウドサービスを使って月ごとに資金状況を確認できるようにしたりと、他にも様々なシステムを活用している赤玉本店。「HACCAPに沿った温度管理状況や金属探知機の実施状況を、今は手書きで記録しています。これを自動化できないかと考えています」(田端専務)と、常に便利になるためのシステム導入を模索している。
すべては仕事の無駄を減らし、すべきことに集中できる体制を作るため。少ない人数で事業を広げて、赤玉本店と金澤おでんを日本中の人に知ってもらうための一歩を踏み出した。
企業概要
会社名 | 赤玉株式会社 |
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住所 | 石川県金沢市片町2丁目21番地2号 |
HP | https://www.oden-akadama.com/ |
電話 | 076-223-3330 |
創業 | 1927年 |
従業員数 | 33人 |
事業内容 | 飲食店の経営/食料品の製造、加工、販売/インターネット、カタログ等を利用した食料品通信販売 |