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遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給要件の違いによって、「遺族厚生年金は受給できるけれど遺族基礎年金は受給できない妻」や、「遺族基礎年金の給付が65歳よりも前に終了する妻」というケースが発生します。

このようなケースで遺族厚生年金に加算される給付が「中高齢寡婦加算」です。

また、65歳になると中高齢寡婦加算は打ち切りとなりますが、急激な年金受給額の低下を避けるために、「経過的寡婦加算」が遺族厚生年金に加算されるようになります。

中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算について、詳しくみていきましょう。

中高齢寡婦加算とは

18歳までの子がいない妻は、夫が亡くなった後に遺族厚生年金は受給できても、遺族基礎年金を受給することができません。

18歳までの子がいて遺族基礎年金を受給できる妻であっても、その子が18歳到達年度の末日(3月31日)を過ぎると遺族基礎年金の支給が終了します。

このような妻について、40歳から65歳になるまでの間、遺族厚生年金に加算されるのが中高齢の寡婦加算です。

妻が65歳になって自身の老齢基礎年金を受給できるようになると、中高齢の寡婦加算は終了します。

中高齢寡婦加算の受給要件

中高齢寡婦加算を受給するためには、以下のように亡くなった夫と残された妻のそれぞれが所定の要件を満たす必要があります。

亡くなった夫についての要件 次のいずれかの要件を満たしていること
①厚生年金に加入中であった場合
②厚生年金に加入中の疾病が原因で、その疾病の初診日から5年以内に亡くなった場合
③1級または2級の障害厚生年金の受給権者であった場合
なお、亡くなったときに既に老齢厚生年金の受給権者であったか受給資格期間を満たしていた場合は、厚生年金の被保険者期間が20年以上あることが必要です。
残された妻についての要件 次のいずれかの要件を満たしていること
①夫が亡くなったときに40歳以上65歳未満で子がいない場合
②夫が亡くなったときに40歳未満で子がいたが、40歳に達した後に子が18歳到達年度の末日(3月31日)を経過したため遺族基礎年金の支給が終了した場合
受給対象者 妻のみ
受給期間 65歳に達するまで

なお、ここでいう「子」とは、18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子または20歳未満で障害等級1級または2級の障害を持つ子をいいます。

中高齢寡婦加算の受給額

中高齢寡婦加算の支給額は、年間584,500円です。

1ヵ月あたりにすると約48,708円になります。

この金額が遺族厚生年金に加算して支給されます。

いつからいつまで、いくらもらえる?

では、実際に中高齢寡婦加算はいつからいつまで、いくらもらえるのかを具体例で見てみましょう。

子がいない場合

以下のケースを想定してシミュレーションをしてみます。

・夫が2019年10月1日に死亡
・夫の死亡当時、妻は40歳
・妻の誕生日は6月15日
・遺族厚生年金の受給要件は満たしているものとする
・夫の死亡前の月収は約30万円

このケースでは、夫が亡くなった後すぐに妻は遺族厚生年金を受給できるようになりますが、子がいないため遺族基礎年金を受給することができません。

しかし、夫が亡くなった当時に妻が40歳に達しているので、遺族厚生年金と併せて中高齢寡婦加算を受給することができます。

2044年6月には妻が65歳に達するので中高齢寡婦加算の支給が終了し、翌月分からは妻自身の老齢基礎年金を受給できるようになります。

もらえる金額としては、平均報酬月額30万円に対応する遺族厚生年金が487,366円、中高齢寡婦加算が584,500円、老齢基礎年金が満額で780,100円(いずれも年額)ですから、以下のようになります。

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・2019年10月分から2044年6月分まで
遺族厚生年金+中高齢寡婦加算=1,071,866円(月額約89,322円)

・2044年7月分以降
遺族厚生年金+老齢基礎年金=1,267,466円(月額約105,622円)

子がいる場合

今度は少しケースを変えてシミュレーションをしてみましょう。

・夫が2019年10月1日に死亡
・夫の死亡当時、妻は39歳
・妻の誕生日は6月15日
・子どもが1人いて、夫の死亡当時16歳
・子どもの誕生日は8月15日
・遺族厚生年金の受給要件は満たしているものとする
・夫の死亡前の月収は約30万円

このケースでは、夫が亡くなったときに18歳以下の子どもがいるので、妻は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給できます。

しかし、2021年8月に子どもが18歳になるので、2022年3月分までで遺族基礎年金の支給が終了します。

その後は遺族基礎年金に代わって中高齢寡婦加算を受給できるようになります。

2045年6月に妻が65歳に達するので中高齢寡婦加算の支給が終了し、翌月分からは妻自身の老齢基礎年金を受給できるようになります。

もらえる金額としては、平均報酬月額30万円に対応する遺族厚生年金が487,366円、中高齢寡婦加算が584,500円、老齢基礎年金が満額で780,100円(いずれも年額)ですから、以下のようになります。

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・2019年10月分から2022年3月分まで
遺族厚生年金+遺族基礎年金=1,267,466円(月額約105,622円)

・2022年4月分から2045年6月分まで
遺族厚生年金+中高齢寡婦加算=1,071,866円(月額約89,322円)

・2045年7月分以降
遺族厚生年金+老齢基礎年金=1,267,466円(月額約105,622円)

経過的寡婦加算とは

遺族厚生年金を受けている妻が65歳になると、自身の老齢基礎年金を受給できるようになるため、中高齢寡婦加算の支給が終了します。

もっとも、老齢基礎年金は満額受給できるとは限らず、中高齢寡婦加算よりも低額になることも少なくありません。

そこで、妻が65歳に達した際の急激な年金額の低下を防止するため、中高齢寡婦加算に代えて経過的寡婦加算が支給されます。

経過的寡婦加算の受給要件

子がいない妻

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子がいる妻

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経過的寡婦加算を受給するためには、以下のように亡くなった夫と残された妻のそれぞれが所定の要件を満たす必要があります。

亡くなった夫についての要件 次の2つの要件のいずれかを満たす必要があります。①厚生年金への加入期間が20年以上あること②40歳以降に厚生年金への加入期間が15年以上あること。
残された妻についての要件 次の2つの要件をいずれも満たす必要があります。①昭和31年4月1日以前に出生したこと②65歳以上であること
受給対象者 妻のみ
受給期間 65歳以降、遺族厚生年金の支給が続く限り加算される

経過的寡婦加算の受給額

経過的寡婦加算の支給額は、老齢基礎年金額と合算することによってちょうど中高齢寡婦加算と同額になるように、受給者の生年月日に応じて設定されます。

計算式にすると、以下のようになります。

経過的寡婦加算=中高齢寡婦加算(584,500円)-老齢基礎年金の満額×乗率

乗率は、昭和2年4月2日以降昭和31年4月1日までに生まれた方について、生年月日に応じて12/312~348/312の間で定められています。

いつから、いくらもらえる?

経過的寡婦加算を受給する場合の受給額のシミュレーションは、結果として中高齢寡婦加算のところでご紹介したシミュレーションと同じになります。

経過的寡婦加算は老齢基礎年金が減額されて中高齢寡婦加算額に満たない場合に、その差額を埋めるものだからです。

経過的寡婦加算の受給額としては、「中高齢寡婦加算-実際に受給する老齢基礎年金額」になります。

まとめ

遺族厚生年金を受給できる方なら、遺族基礎年金がもらえないときや、老齢基礎年金が減額されるときでも、中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算を受給することによって不足をある程度補うことができます。

システムが複雑で分かりにくいかもしれませんが、漏れなく受給できるようにしましょう。
(提供:相続サポートセンター