信用,社長,ビジネス
(画像=fizkes /Shutterstock.com)
黒坂 岳央
黒坂 岳央(くろさか・たけお)
水菓子肥後庵代表。フルーツビジネスジャーナリスト。シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、東京で会社員を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。ビジネス雑誌やニュースサイトでビジネス記事を書いている。著書に『年収1億円超の起業家・投資家・自由業そしてサラリーマンが大切にしている習慣 “億超えマインド"で人生は劇的に変わる!』など。

疑り深い人ほどビジネスでは損をするし、信用してドンドン仕事をお願いする方が得をする。

「得する」などというと、なんとも稚拙で軽い響きがあるように思われるかもしれない。なのでここでは「リスクの中のリターンの可能性及びビジネスプロセスが低コスト、スピーディーさを担保できるなど、ビジネス上の経済的合理性が存在する」という表現をさせていただきたい。記事ではその根拠をお伝えする。

経営者はビジネスのリスク・リターンのバランスを取るのが仕事

残念ながら世の中には信用ならない人が存在する。筆者の元にも、日常的に信用ならない人からビジネスオファーが舞い込んでくる。

だが、そのすべてを疑ってかかってしまっては、何一つビジネスが進まないのは言うまでもない。相手を騙してやろう、という心の底からの悪意を持った人は論外として、思うような結果が出ず「相手に騙す意図はなくても、結果的に思うような成果を上げてもらうことができなかった」というケースもあるだろう。

ビジネスにはリスクとリターンの関係はつきものだ。リターンは、不確実性の大きいものからしか大きく取ることはできない。故にその都度必要な意思決定をしながら、リスク・リターンのバランスを上手に取ることが経営者の仕事である。ひとたび、ビジネスをスタートさせて、思うように進まず傷が浅い内に損切りすることができなければ、経営者の仕事は成り立たない。

経営者は意思決定をするのが仕事の本質であり、まだ見ぬリターンを積極的に取りに行くことには「不確実性のものを信じる」という段階が存在する。

「疑心暗鬼」は思考できない者に残された唯一の防御

世の中にあまりにも胡散臭いオファーが溢れているので、そのすべてを「詐欺だ」「怪しい」という見方をする人がいる。

確かにすべてを疑ってかかり、何も信じないというポジションを取っていれば騙されずに済むであろう。だが、そうした完全防御の姿勢は経営者にあってはならないものである。繰り返しだが、ビジネスの大きなリターンは常に未知のリスクの中にしか存在することはない。果敢にリスクを取りに行かなければ、リターンはないのである。

こうした完全防御の姿勢を取る人の中には「話だけでもしっかり聞く、やってみてダメなら途中で降りる」という選択肢がない。故にいかなる未知のチャンスからも切り離されているのだ。

筆者はこれまでいくつものリスクとリターンを取りに行き、思うような成果が得られないと感じた時点でビジネスを降りるという形で損切りをしてきた。だが、その中には思った以上の大きな成果を得ることができ、降りることなく今も大きなリターンを得ているものもある。「やってみないとわからない」、ビジネスはこうした要素に満ちているのだ。

疑心暗鬼で相手の一挙手一投足を疑う姿勢は、一切のリスクが無い代わりにリターンもないというノーチャンスの姿勢に他ならないのである。

信用することにはビジネス上の合理性がある

また、相手を信用してビジネスをスピーディーに進めていくことには経済的合理性がある。

筆者はある人物にビジネスのサポートをお願いしている。彼はマーケティングの領域で卓越した知識と経験を持っており、そのおかげで月3ケタ以上の収益を生み出している。サポートを受けることで対価を支払っているのだが、その金額は「彼の言い値」である。

毎回、見積もりを取り、きちんと契約書を交わし…という煩雑さが介在すると「頼みたいけど、お願いをするための手間のほうがムダだ」と「お願いをする手間>得られるリターン」という構図になる。実際、かつて彼に頼んでいたことを法人にお願いをしていた時は、毎回契約書を作成し、見積もりが入り、稟議を通すというプロセスだったので非常に面倒な手間と待たされるストレスが生じていた。

それとは対象的に、彼とはビジネスチャットで「これ頼めますか?」と尋ねれば「分かりました」で契約成立、終わったら「ありがとう」とあらかじめ決めていた代金を支払うというシンプルさ、スピーディーさがあるので、まさに日進月歩でビジネスが進んでいく感覚があるし、煩雑なプロセスを管理する手間からも開放されている。

人を信用することにはたしかにリスクが有る。だが、その中にこそ思わぬリターンがあるのも事実だ。何でもかんでも疑いの目を持つのではなく、「いざとなれば損切ればいい。意思決定は常に自分がするもの」という経営者としての姿勢を持ってビジネスに望むべきなのだ。

文・黒坂 岳央(水菓子肥後庵代表 フルーツビジネスジャーナリスト)

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