メディアECとは「情報を発信するメディア」と「ECサイト」が1つになったWebサイトを指す言葉です。ECサイトの運営者にとって「メディアECのメリット・作り方」が気になる方もいると思います。
そこで本記事では、メディアECの概要や取り組むうえでのメリットや注意点、企業の成功事例などを紹介します。
目次
メディアEC(メディアコマース)とは?
メディアEC(メディアコマース)とは、情報を発信しているメディアとオンラインショップのECサイトが1つになったサイトを指します。言い換えれば、ECサイトそのものが1つのWebメディアとみなして運営しているサイトです。
従来のECサイトの目的は「オンラインで商品を販売すること」でした。一方でメディアECの目的には「購買率の向上」も含まれます。情報発信と商品販売を両立しているのが特徴です。ユーザーへ商品の関心を集められるように、集客・購買率アップのためのコンテンツの発信も重要視されています。
メディアECが注目される背景
メディアECが注目される背景は「消費者が生活のなかで購買行動を起こす可能性が高い傾向にある点」が挙げられます。生活するなか自然にコンテンツを見つけ、商品を知り、そのままWebサイトを遷移することなく購入できるため、メディアとECを一体にしたWebサイトが注目されています。
経済産業省が調査した「電子取引に関する市場調査」によると、2022年BtoBのEC市場規模の推移は22兆7,449億円です。また、対前年比は2兆499億円も増加しています。
ECサイトが増えたいま、競合との差別化の観点でもメディアECは注目されています。
出典:令和4年度 電子取引に関する市場調査報告書|経済産業省 商務情報政策局 情報経済課
一般的なECサイトとの違い
一般的なECサイトは、ユーザーにとって「商品を探す」「商品を購入する」の2点に絞った目的でサイトに訪問します。
一方でメディアECの場合、情報を発信しているコンテンツがあるため、まず流入元のニーズが違います。「商品を購入したい」ではなく「商品に関する情報を知りたい」というユーザーも集めることが可能です。
ユーザーへの提供価値も違います。商品の購入だけでなく有益な情報の提供も含まれます。その結果、顧客のファン化を促すこともできます。
メディアECの主な”型”は3つ
メディアECの主な”型”は、下記の通りです。
●コンテンツ全般に力を入れたもの
●ブランディングに力を入れたもの
●SNSに力を入れたもの
順番に紹介していきます。
1.コンテンツ全般に力を入れたもの
「コンテンツ型」と呼ばれる種類で、定期的にブログ・コラムを発信するものです。オウンドメディアと一緒に立ち上げます。URL構造としてはECサイトのドメイン配下に「ブログ」のディレクトリを構築するのが主流です。
投稿するコンテンツは、「商品紹介」か「知識やノウハウ」のどちらかに特化したものになります。Webサイト上にあげたコンテンツが資産として残るのがメリットです。一方で、コンテンツを定期的に更新するので労力がかかります。
2.ブランディングに力を入れたもの
ブランディングに特化させたもので、テキスト情報だけでなく、ビジュアルデザインを重視します。前述のコンテンツ型とは異なり、写真や動画をメインにしています。
昨今では「動画コマース」と呼ば
れる手法で、動画から商品購入に動線を引く手法もあります。顧客に対して情報提供をするというよりは、「ブランドのファン化」を意識してWebページを構築します。
3.SNSに力を入れたもの
SNSの拡散力を活用した手法です。Instagram、Facebook、X(旧Twitter)、TikTokなどと連携して商品のプロモーションを行います。SNS上での企画はもちろん、コンテンツの投稿場所としてSNSを活用していくものです。
フォロワー数を増やすことでコンテンツを閲覧するユーザーも増えていきます。特にSNSを閲覧するユーザーは若年層だけでなく、幅広く閲覧しているので潜在的な顧客へのアプローチとして活用できます。
どのSNSに軸をおいて発信していくのか、明確にしたうえで取り組むことをおすすめします。
メディアECに取り組む3つのメリット
メディアECに取り組むメリットは、下記の3つです。
●SEO対策による集客を狙いやすい
●ユーザーの商品理解が深まる
●リピーターの獲得につながりやすい
順番に紹介していきます。
1.SEO対策による集客を狙いやすい
メディアECに取り組むと、SEO対策による集客を狙いやすくなります。商品ページだけの場合、十分な情報量がないことからSEO対策による集客力は低下します。また狙うキーワードのボリュームも減少してしまいます。
一方でメディアECの場合、情報量を担保できます。また「情報調査」をニーズとしたユーザーが検索するキーワードにも対応できます。
たとえば「カットソーの定義」について疑問に感じたユーザーは「Tシャツ カットソー 違い」というキーワードでよく検索します。このキーワードは商品ページだけでは対策できませんが、メディアがあることで記事を書けます。
潜在ユーザーを獲得でき、そのまま商品(カットソー)の購買に誘導できるのがメリットです。メディアECを運営する際は「商品に関連するキーワード」を意識しましょう。
2.ユーザーの商品理解が深まる
メディアECに取り組むと、テキストや商品の写真だけでは伝えられなかった情報を、ユーザーにアピールできます。たとえば実際に商品の利用動画を掲載することで、使用感をイメージしてもらいやすいです。
またSNSで商品開発の背景やストーリーをコンテンツとして発信すると、商品ページだけでは伝えられなかった情報を発信できます。
3.リピーターの獲得につながりやすい
メディアECに取り組むと、自社のファン化にもつながります。なぜなら、商品のこだわりや理念などのコンテンツの発信を閲覧したユーザーに”共感”を促しやすいからです。
ファン化が進むことで、競合との差別化につながり、リピーター獲得につながります。商品力だけでなく、開発の背景に共感したユーザーがブランド理解を深めたうえで商品購入するようになるのです。
メディアECに取り組む際の注意点は3つ
メディアECに取り組む際の注意点は、下記の3つです。
●効果を得られるまでに時間がかかる
●コンテンツ制作の負担が大きい
●内容によっては企業の信用を落とす場合もある
順番に紹介していきます。
1.効果を得られるまでに時間がかかる
メディアECでは、コンテンツの公開した直後に効果が得られるわけではありません。SEOを意識する場合、効果が得られるまでに時間がかかります。またブランディングを意識する際にもすぐにファンが増えるわけではありません。SNSのフォロワー数増加にも時間がかかります。
そのため、検証データを集めるのに時間がかかってしまうのがデメリットです。効果が得られるまで根気強くコンテンツを作成していきましょう。
2.コンテンツ制作の負担が大きい
前提としてメディアECを成功させるには、有益なコンテンツの更新が必要です。コンテンツの制作・更新には手間がかかります。
更新頻度が不十分になってしまうと、ユーザーは価値を見出しにくくなります。信頼してもらうためにも、ある程度のコストは事前に覚悟したうえで良質なコンテンツを発信し続けましょう。
3.内容によっては企業の信用を落とす場合もある
メディアECは「発信」が伴います。そのため「誤った情報を発表する」「他社の盗作をする」などがユーザーから判断された場合、反対に企業の信用を落としてしまいます。
そのため、制作者側のリテラシーは必須です。コンテンツ作成を外注した場合も必ずこまやかにチェックしましょう。事前に自社で伝えたいメッセージを定義したうえで、コンテンツをつくる必要があります。
メディアECの運用を成功に導く5つのコツ
メディアECの運用を成功させるコツは、下記の通りです。
●円滑に運営できる体制を整える
●有益な情報を発信し続ける
●サイト内をスムーズに回遊できる導線を設ける
●各種SNSアカウントと連携して情報を発信する
●収益を意識したコンテンツ作りをする
順番に紹介していきます。
1.円滑に運営できる体制を整える
メディアECを成功させるには、ユーザーにとって役立つコンテンツを円滑に作成できる体制を整えておきましょう。コンテンツ作成には、まとまった時間が必要です。たとえば、下記のようなメンバーを確保しておくと円滑にコンテンツを制作できます。
●ディレクター:コンテンツ制作全体の管理
●編集者:記事の企画や編集・校正
●ライター:記事執筆
●マーケター:アクセス分析
●デザイナー:デザイン作成
●エンジニア:コーディング
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2.有益な情報を発信し続ける
メディアECを成功させるには、前述したように有益な情報を発信し続けられているかが重要です。ユーザーがサイトに訪問した際、記事の情報が古いものだと、離脱率を高めてしまいます。
一方で、古い記事を常に新しい情報に更新していたり流行に沿ったコンテンツを作成していたりしているメディアECは、ファン化にもつながります。また、有益な情報だけ更新するのではなく、キャンペーンや特売などの情報も定期的に企画・更新しておきましょう。
3.サイト内をスムーズに回遊できる導線を設ける
メディアECを成功させるには、サイト内をストレスなくスムーズに回遊できるかが重要です。
情報だけ発信するのではなく、商品ページに遷移できる仕組みを構築しましょう。コンテンツを閲覧したユーザーがそのまま購買してくれるような動線設計が必要になります。
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4.各種SNSアカウントと連携して情報を発信する
メディアECを成功させるには、各種SNSを連携したうえで情報を発信しましょう。SEO対策による効果だけでなく、SNS活用もユーザー増加のために効果的です。
SNSはユーザーとコミュニケーションが取れる場です。積極的にユーザーとコミュニケーションをし、ファン化を促進できるよう運用しましょう。
5.収益を意識したコンテンツ作りをする
メディアECの最終ゴールは「収益をあげること」です。ただコンテンツを発信するだけでなく、ユーザーの購買意欲を高められるコンテンツを意識しましょう。
いくら流入数が多い記事でも、購買につながらなければ「収益につながった」とはいえません。
企業におけるメディアECの成功事例3選
ここからは、メディアECを成功させた企業の事例を紹介します。今回紹介するのは、下記の3社です。
●ワークストリート
●ozie
●IKEUCHI ORGANIC
順番に特徴などを紹介していきます。
1.ワークストリート
引用元:ワークストリート
ワークストリートは、自社のECサイトを運営強化して、リピート率の向上に力を入れた企業です。集客コストの削減を目的にSEO対策を強化しました。「安全靴」をターゲットキーワードとした施策で、月間検索数は7万回を超えています。
常にリピーターを大切にしている姿勢が強く、サンクスページの作成や感謝状を送っているのが特徴的です。『ワークストリート解説書』も同梱されていて、ファン化につなげる施策が充実しています。
2.ozie
引用元:ozie
ozie(オジエ)は、2011年1月にサイトをリニューアルし、サイト回遊率を上げていきました。リニューアル前は商品数が増えていくにつれて、サイト構造が次第に複雑なものになってしまいました。
そこでサイトリニューアルを実施し、商品の大分類から小分類へと絞り込みながら商品を検索できるようにしたのです。特に新規顧客の利便性を重視していて、サイト内でほかの商品と比較できるような構造になっています。リニューアルした同年6月には、過去最高月商額である3,000万円を超えました。
3.IKEUCHI ORGANIC
引用元:IKEUCHI ORGANIC
IKEUCHI ORGANICは、休業中の店舗スタッフが「Zoomストア」でオンライン接客した企業です。Zoomを活用して店舗スタッフとユーザーがコミュニケーションをしながら商品を提案していったのです。
スタッフは自分を写すカメラと商品を写すカメラの2台体制で、コミュニケーションをするので、ユーザーにとって来店しているような空気感があります。試験的な取り組みだったものの、常にユーザーのニーズに沿った施策に取り組んでいるのが特徴的です。
メディアECでよくある3つの質問
ここからは、メディアECでよくある質問を紹介していきます。今回取り上げるのは、下記の3つです。
●メディアECの始め方は?
●集客力の高いメディアECを作るのに必要な機能は?
●ECサイトをメディア化するための主なコンテンツとは?
順番に回答しながら紹介していきます。
質問1.メディアECの始め方は?
メディアECの始め方は下記の通りです。
●KGI・KPI設定:マーケティングの方向性を明確にしたうえで数値目標を設定
●発信コンテンツの設定:コンテンツの方向性やターゲットを設定
●コンテンツ制作体制の構築:コンテンツの品質を保てるような体制を構築
●コンテンツの分析・検証・改善:記事のリライトや掲載写真の変更など
メディアECは、前述したように効果が得られるまで時間がかかるので、随時分析や検証などを繰り返していきましょう。
質問2.集客力の高いメディアECを作るのに必要な機能は?
集客力の高いメディアECを構築する際に必要な機能は、下記の通りです。
●自由度の高いデザイン:ブランディング力を向上させるにはデザイン性の高さが必須
●SNS連携:ターゲット層が活用しているSNSと連携
●ブログ連携:ECサイトのメディア化にはブログ機能との連携が必須
●インフラの強化:サーバーダウンが起こらないようなインフラ整備が必須
●レコメンド機能:ユーザーが興味を持ちそうな商品を表示させる機能
幅広く施策しておけば、多くのユーザーへリーチできます。
質問3.ECサイトをメディア化するための主なコンテンツとは?
ECサイトをメディア化する主なコンテンツは、下記の通りです。
●知識を発信するブログ:SEO対策やECサイトへの導線確保が可能
●コーディネート例の一覧:視覚的なアピールができユーザーの購入満足度が向上
●イメージしやすい動画:ECサイト運営側とユーザーとのコミュニケーションが増加
●企画型のオウンドメディア:イベントやキャンペーンを実施しファン獲得
自社ECサイトで販売する商品と相性のいいコンテンツを構築していきましょう。
まとめ
今回は、メディアECについて概要や種類、取り組むうえでのメリットや注意点などを紹介しました。メディアECは、自社でコンテンツを制作するならコストはほとんどかかりません。
しかし、制作の労力がかかるだけでなく、効果が得られるまでの時間もかかってしまいます。広告を活用した即効性のある集客施策を実施しつつ、長期的な対策としてメディアECを構築していきましょう。
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