後継者のいない会社を買うメリット
後継者のいない会社を買う主なメリットは、以下の通りです。
事業参入の時間とコストをショートカットできる
新たに事業を始める場合、求める目標に到達するまで相当の時間とコストがかかります。新たな技術やスキルの拡大、顧客ネットワーク、市場シェアの拡大を短期で実現することはほぼ不可能に近いでしょう。 しかし、買収した会社にが保有する技術・ノウハウ・従業員や取引先を引き継ぐことで、スムーズに新規ビジネスへの参入、事業拡大が見込めます。
事業規模の拡大が見込める
自社と同業、もしくは関連事業を展開する企業を買収することで、既存事業の規模拡大やシナジー効果の創出が期待できます。
つまり、仕入れコストの削減、製造ノウハウの共有、物流面の連携、販売面の連携など、販路・人材・資産を相互に活用し、自社単独で行動するより大きな成果を生み出すことが期待できるのです。
文化の継承や社会貢献に実現できる
事業によっては、その会社しか保有していない特殊な技術を持つ場合があります。そうした技術・ノウハウが廃業によって消滅することは、国や社会にとって大きな損失となりえるでしょう。
そうした会社を譲り受けることで、技術やノウハウ、それにひもづく文化を次世代に引き継げることは、結果として国や社会への貢献につながるという点でメリットとして挙げられます。
後継者のいない会社を買う注意点
後継者のいない会社を買う場合の主な注意点は、以下の通りです。
従業員、顧客との信頼関係の構築
後継者のいない中小企業では、経営者の求心力によって従業員、取引先、顧客と強固な関係を構築しているケースが多く見られます。 そのため、譲受けた後もその関係性を維持するために、M&Aを行った目的、今後の方針について十分な説明とコミュニケーションを意識的に行う必要があります。
簿外債務への注意
株式譲渡などで会社を譲受ける場合、貸借対照表上に記載されていない簿外債務など、不要な資産を引き継いでしまうリスクもあります。 譲受けた後に発覚することを回避するためには、オーナー経営者への確認、デューデリジェンスの実施が必要不可欠です。
簿外債務の主な項目は以下の通りです。
簿外債務の例 | ポイント |
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未払い残業代 | 過去に支払われなかった残業代を従業員が請求するケースは少なくありません。 譲受ける側にとっては予定外の支払いとなり、本来であれば買収価格に加味すべき事項です。 隠れ債務として存在していた場合、買収価格に反映されないため、あらかじめ把握しておく必要があります。 |
退職給付引当金 | 退職給付引当金は、実際に退職金を支払うタイミングで費用計上されるため、簿外債務となるケースが多くあります。 退職金制度の有無、就業規則や規定を事前に確認しておくことで回避できます。 |
債務保証 | 中小企業間では、契約書を締結せず債務保証してしまうケースがゼロではありません。契約書がない為、後から簿外債務として発覚するケースがあります。 対象企業が債務保証している企業からの保証金入金の有無などを確認する必要があります。 |
偶発債務 | 偶発債務は、将来的に債務になる可能性があるものを指します。具体的には、訴訟に負けた場合に支払う必要がある賠償金や、自社の事業が引き起こす可能性がある公害に対する補償金などが挙げられます。 買収監査時に訴訟案件の有無や付近の住民からのクレームなどを確認して、将来的に債務になりうるものを把握しておくことや、発生する可能性がある債務の金額も想定しておくことが重要です。 |