食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

全国的に記録的な猛暑の影響で9月前半の枝肉相場は関東3市場(全農建値)でも上物税抜きで700円台とこの時期としては異例の高豚価を付けた。

当初はこのまま月末まで600円台後半を維持するとの見方があったものの、3連休が明けると一気に100円以上も値を下げ、500円台半ばとなった。8月後半からの記録的な豚価による高値疲れと、気温低下で増体が回復してきたことなどが影響したとみられる。

関東3市場以外も概ね500円台後半を付け、平年に近い水準まで下げてきている。10月は気温低下で出荷頭数がさらに増加することで、枝肉相場も一段下げの展開となるが、出荷増のタイミングによって価格が左右されることになりそうだ。

その半面、足元の需給環境からみて、以前のような400円台相場になる可能性はないとみる向きが多い。今後の出荷動向にもよるが、月前半は550円前後、後半は520円前後で推移するとみられる。

〈供給見通し〉
農水省の予測によると、10月の肉豚出荷頭数は、前年同月比4%増の145万頭となっている。9月(予想)から9.3万頭増加する見通しだ。2022年よりも稼働日が1日多いものの、1日当たりの平均出荷頭数は6.9万頭とほぼ前年並みの水準となる。朝晩の気温の低下や、日中も残暑が落ち着くなどして、発育成績が良くなり、重量も徐々に回復傾向がみられているという。問題は、これまでの出荷遅れの分がどのタイミングで出てくるか、あるいは集中するか否かで、それによって若干の価格の乱高下が予想される。

一方、10月の豚肉の輸入量は、農畜産業振興機構の輸入見込み数量から推測すると、チルドは前年同月比10.3%増の3.1万t、フローズンは前年同月比14.4%減の4.1万tと予想している。とくにチルドは外貨上昇で無理な買付けはないようだ。

〈需要見通し〉
9月の豚肉の末端需要は、残暑が続いたものの、ロース、カタロース、バラの中部位の動きが回復基調にあり、学校給食の再開でスソ物の需要も回復した。パーツ相場が高値を付けた関係で、凍結物への引合いも強まったが、こちらも在庫が少ないため、価格は下支えされた。このように需要は総じて堅調だが、末端の価格志向を反映して、安い値段での問い合わせも多く、やはり9月の3連休明け後の500円台相場が実勢を反映しているといえる。

10月は気温の低下に伴って、ようやく鍋需要が本格化するとみられ、スライス材やスソ物を中心に荷動きが良化しているものの、企業によってはカタロース、ロースに一服感がみられるなど、決して満遍なく荷動きが良いわけではない。9月後半の豚価急落が先物の見積価格にも影響したため、末端もいったん様子見の状況にあるようだ。

今後は、スライス需要で現物への手当て買いが強まることが予想される。部位別では、バラを中心に鍋物商材の需要がさらに強まるほか、節約志向でモモなどの小間材やひき材も堅調に推移すると予想される。生鮮物パーツの動きが弱くても、夏場前に比べると、コスト面で凍結に回し易くなったため、極端な下げは避けられそうだ。

〈価格見通し〉
2022年10月は残暑の影響で出荷頭数が少なく、連休前には関東3市場で700円をうかがう高値を付けたが、連休明け以降は150円近く急落し、下旬には510円台まで下げた。2023年はすでに500円台半ばまで下げた形でスタートしているため、残暑の影響で出荷頭数があまり伸びなくても、再びジェットコースター相場にはならないとみられる。

基本的には相場は下げ基調と予想されるが、どの段階でどの水準まで下げるかは、今後の出荷動向次第というところ。出荷動向は不透明な部分が多いが、現状での予想は、第1週目は上場頭数がさほど多くはなく、まだ重量が小ぶりな豚もみられること、そして連休需要の手当て買いなどで560~570円まで戻している。

連休以降は出荷増で下げ基調となり、月末にかけては500円台前半となり、月平均では530~540円と予想される。前述の通り、凍結玉の在庫が薄いため、相場が下がれば凍結回しの動きが強まることが予想されるため、枝肉相場は下げても500円を割り込むことはないものとみられる。

〈畜産日報2023年10月3日付〉