キャラクタービジネス
(画像=FUN FUN PHOTO/Shutterstock.com)

日本のアニメ・ゲームキャラクタービジネスが2020年、新たな成長ステージに突入しそうだ。アニメ・ゲームキャラクターとのコラボを企業が積極化させる中、東京五輪では日本のアニメ・ゲームキャラクターが広報活動の一翼を担うことが期待されている。さらに、キャラクタービジネスは今、IPビジネスという形で金融市場に評価され始めた。

安倍マリオ登場の衝撃

2016年8月のブラジル・リオ五輪の閉会式で行われた引継ぎ式のイベントで、日本の安倍首相が任天堂のゲームキャラクター「マリオ」に扮して颯爽と登場したことは、今でも語り草となっている。

このイベントでは、映像上で「マリオ」とともに国民的アニメとなっている「ドラえもん」が進行役を務めたほか、サンリオの「ハローキティ」、世界50か国以上で放映されたサッカー漫画の「キャプテン翼」、1980年代にテレビゲーム界を席巻した「パックマン」といったキャラクターも登場した。

日本のアニメ・ゲームキャラクターはバラエティーに富み、世界中に普及している。2019年にはイギリスの大英博物館で日本の「マンガ展」が開催されたほどだ。

内閣府(日本政府)が成長戦略として掲げる「クールジャパン戦略」において、官民連携プラットフォームでは「アニメ」「マンガ」「音楽」「放送」がコンテンツ企業群として位置づけられている。「アニメ」「マンガ」はいわば国策となっているわけだ。

一般社団法人日本動画協会が2019年12月に発表した「アニメ産業レポート2019」によると、広域のアニメ産業市場を総額2兆1814億円とその市場規模を試算している。6年連続で最高値を更新している成長産業だ。ゲームから生まれるキャラクタービジネスを加えると市場規模はさらに膨らむことになる。

キャラクターと企業のコラボ続々

そして、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでも「おもてなし」スタッフの一員として、日本のアニメ・ゲームキャラクターが活躍することはまず、間違いないだろう。アニメ・ゲームキャラクターは今、企業にとって需要を喚起できる素材として、ビジネスの上でも積極的に活用され始めている。

漫画雑誌「モーニング」に連載され、テレビアニメ化もされた「鬼灯の冷徹」という漫画のコラボ商品を、和雑貨の物販を展開する和心(本社・東京都)が、キャラクターをモチーフにかんざし3種類を商品化して話題となった。このほか、飲食店を展開するエスエルディー(本社・東京都)は、任天堂の「ポケモン」キャラクターを活用した「ポケモンカフェ」の開業支援および運営業務を受託し、カフェは盛況だ。

そして、今年は東京五輪の開幕前を目指して大阪のユニバーサルスタジオジャパン(USJ)内には、任天堂のエリアがオープンすることが話題となっている。一方、横浜の山下ふ頭には、イベントスペースの「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」が2020年10月にオープン予定で、その目玉として高さ約18メートルに及ぶ実物大の「機動戦士ガンダム」が動くことが発表されている。

機体にポケモンキャラクターなどがラッピングされた航空機も登場し、「新世紀エヴァンゲリオン初号機」はJR西日本の新幹線にも描かれた。これらはアニメキャラクター活用の一部であり、日本のアニメキャラクターは商品の需要喚起や、店舗やイベントへの集客力、企業イメージや知名度の向上に貢献している。

こうしたアニメキャラクターの利点の一つは、生身の人間と違って「スキャンダルリスク」が、ほぼ無いことにある。一方、デメリットとしては一時的なブームで終わる作品やキャラクターの寿命の問題がある。

しかし、それらが終了しても人気が持続するキャラクターも多い。「ドラゴンボール」などはその定型的な例だ。さらに、漫画週刊誌の連載やテレビでの放映が長期化するほど知名度が向上するケースが「ドラえもん」であり、「ワンピース」や「名探偵コナン」といった作品が挙げられる。

「ワンピース」はお茶漬けの永谷園とコラボしてお茶漬けにキャラクターカードが付くキャンペーンを今年1月まで3か月間展開していた。アニメキャラクターは短期の期間限定のコラボキャンペーンでも採用しやすいという特徴がある。

マーケット評価高まるIPビジネス

こうしたなか、キャラクタービジネスのモデルとして近年高まってきたのがIP(知的財産)ビジネスだ。雑誌から生まれたマンガ作品や登場キャラクターの場合、原作者、漫画家、出版社など権利関係が複雑化する。

こうした権利関係をまとめてビジネス化するのがIPビジネス。IPビジネスは、作品自体を販売して収益化することにとどまらず、自身の知的財産を販売または貸与、異業種などとコラボすることによって収益に厚みをつけるビジネスモデルだ。

2019年7月に東京証券取引所マザーズ市場に新規上場したブシロードはそのIPビジネスを標榜している企業の一社だ。トレーディングカードゲームの「カードファイト!! ヴァンガード」「バンドリ!」、グループ化した「新日本プロリスリング」などが主要IPだ。さらに、今年に入ってはマスクプレイミュージカル(ぬいぐるみ舞台劇)、2.5次元ミュージカル展開の「劇団飛行船」を子会社しIPビジネス領域を広げている。

ブシロードの株価は、新規上場時に初値2204円でスタートし、およそ3か月後の11月には4280円の上場来高値を付けるなど、株価はほぼ倍増を達成していることが、IPビジネスに対するマーケットの高評価と関心を表している。キャラクタービジネスは国策支援の下、IPビジネスへと成長が期待される。

文・THE OWNER編集部

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