日本M&Aセンターの新刊書籍『伸びる企業の買収戦略―実録 中堅・中小M&A成功事例の徹底解剖!』が発売されました(2023年9月13日ダイヤモンド社より発行)。
中堅・中小企業向けに買収戦略の考え方や成功パターン、デューデリジェンスやPMIなどのポイント、複数社買収の効果や海外M&Aなどについて、豊富な実例を交えて解説した「譲受企業(買い手)」向けの実践的な入門書です。
M&Aマガジンでは、全4回にわたって本書の内容の一部をご紹介していきます。第1回は、中堅・中小企業のM&A・買収戦略の「6つの類型」について見てみましょう。
パズルを埋めていくように買収戦略を考える
本書では、はじめに 「買わないリスク」 について話しています。買収の手間や失敗のリスクから二の足を踏んでしまったり、希望をすべて満たす案件を求めてしまうために他社に機会を奪われたり、タイミングを逸してしまうことを指します。
買わないリスクに陥らないために、 「一度の買収で全てを満たそうとしない」 ことが大切です。パズルを埋めていくように少しずつ条件に合う企業と手を組み、買収と統合の経験を積み重ねていけば、買い手としてのノウハウを高めつつビジョン達成に近づくことができます。
段階的にM&Aを実施していく上で知っておきたいのが、本書で紹介するM&Aの6つの類型です。パターンを理解しておくことで、案件ごとに叶えたい方向やM&Aの狙いをクリアにすることができます。
本書では具体的な事例を交えてたっぷり紹介していますが、このコラムでは6つの類型の概略を見ていきます。
M&Aの6つの「型」とは?
類型①「バリューチェーン型」M&A
企業を価値創造の仕組みとして捉えたバリューチェーンになぞらえた買収の戦略パターンが第一の型、「バリューチェーン型」です。
調達や製造、販売、サービスなどのプロセスの中で、自社が手掛ける範囲を上流側の「川上」、あるいは下流側の「川下」に向かって戦略的に拡大させていくことを指します。川上の企業買収は仕入れコストを下げたり、調達を安定させるのに有効です。一方、川下の企業の買収では販路開拓が図られます。
本書では、製造業、運輸業などからいくつか事例を紹介しています。
類型②「規模拡大型」M&A
同業や業態の近い企業を買収することで、シェアを高め、利益率の改善やスケールメリットを生かす戦略が「規模拡大型」です。買い手企業にとっては「目が利く」領域であることから、比較的投資判断をしやすい類型と言えます。
本書では、製造業の事例などを紹介しています。
類型③「地域戦略型」M&A
都市部から地方へ、地方から都市部へなど、他地域への進出や拡大を目的としたM&Aが「地域戦略型」です。
近年特に顕著なのは、地方の有力企業による都市部進出を図る事例です。地方経済の人口が着実に減り続ける中、生き残りをかけて積極的に打って出る企業が増えています。
本書では、11件ものM&Aを実施した建設業界の例を紹介しています。
類型④「異業種進出型」M&A
文字通り本業が異なる企業の買収ですが、大きく分けて商品ラインアップの「横展開」を図るパターンと、高収益企業が好調な他業種を戦略的に買収するパターンが見られます。
企業の「選択と集中」が進むトレンドの中、異業種進出型のM&Aの機会は今後増える可能性もあります。
本書では、M&Aで第二の事業の柱を育てた製造業の事例などを複数取り上げています。
類型⑤「人材獲得型」M&A
中小企業をめぐる人材不足の問題が深刻さを増す中、M&Aの目的としても人材獲得は大きなテーマになっています。
建設や土木、物流など、専門人材を求める業種を中心に多くの業界で加速。今後ますます増える類型の一つと考えられています。
本書では上場企業を含む比較的規模の大きな企業によるM&Aの事例を紹介しています。
類型⑥「コングロマリット型」M&A
特定の地域・エリア内での大規模化と他業種展開が特徴の「コングロマリット型」は、地域の「名士」のような存在の企業が本業の周辺や他業種企業をM&Aで取り込んでグループ化していくパターンです。地元での知名度や信頼に加え、M&Aの回数を重ねるほどに買い手としてのブランドや売り手企業に与える安心感が高まります。
本書では広島県と愛知県の企業の事例を取り上げます。
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