企業の責任としてコンプライアンス遵守が重要視されている。しかし「コンプライアンス=法律を守ること」と解釈し、「法を侵さなければ問題ない」と考えている人はいないだろうか。社会のルールには、法律のほか規則や倫理などもあり、これらをまとめてコンプライアンスと考えるのが望ましい。

本記事では、コンプライアンスを正しく理解できるように法律と倫理の違いについてわかりやすく解説する。法律と倫理の違いを理解してコンプライアンスについての正しい解釈、遵守に役立てて欲しい。

目次

  1. そもそもコンプライアンスとは
  2. 法律と倫理の違い
    1. 法律
    2. 倫理
  3. コンプライアンスは大きく3つのルールをまとめたもの
  4. コンプライアンス違反の例
    1. 顧客情報漏えい
    2. 不正会計
    3. 不正受給
    4. 景品表示法違反
    5. 労働基準法違反
    6. ハラスメント
  5. コンプライアンスを侵すとどうなるか
    1. 法律違反によるダメージ
    2. 倫理によるダメージ
  6. コンプライアンス強化に向けた取り組み
    1. 体制づくり
    2. ルールづくり
    3. 研修
    4. 相談窓口設置
  7. コンプライアンスとは何かを知り、倫理にもとづいた経営を心がけよう
法律と倫理の違いを知ることから始まるコンプライアンスの正しい理解
(画像=oatawa/stock.adobe.com)

そもそもコンプライアンスとは

コンプライアンスとは、社会的な良識を持ち倫理に沿った企業活動をすることを指す。そもそもコンプライアンスを遵守することで「社会からの信頼を失わない」「企業品質を維持したりより高めたりする」といったことが目的である。一般的には「コンプライアンス=法令遵守」といわれているため、社内でもそのように周知徹底している企業は多いかもしれない。ただ、遵守するべき対象の範囲は広い。

例えば以下のようなものが挙げられる。

  • 法令や業界内の定め
  • 社内規定などの企業内での定め
  • 社会通念に照らした倫理 など

法律と倫理の違い

コンプライアンスについての理解を深めるために、ここでは法律と倫理の違いについて解説していく。

法律

法律は簡単にいうと国会がつくり条文化したものだ。一国民、あるいはビジネスパーソンとして憲法、民法、刑法、会社法、労働基準法、税法などをすぐにイメージする人も多いだろう。その他にも多くの法律があるが、どの法律にも共通しているのが強制的な制裁力があることだ。「違反すると罰則を受ける」というとよりわかりやすいだろう。

どのような罰則を受けるかは、法律の種類や違反の内容、程度によっても異なるが、例えば逮捕や留置、罰金、業務停止、損害賠償などがある。

倫理

倫理は、社会的存在としての人、または企業体の間で共存する規範のことだ。社会規範とも考えられ、「人としてなすべきこと」「自分もそうしたいし、他人にもすすめられるような人としての営み」とされる。法律のように条文化されておらず、倫理に反することをしても強制的な制裁力で罰せられることはない。

とはいえ倫理は、善悪で解釈されるのが通常であり、倫理に反する行為に対しては社会的な制裁を受けることもある。また一般的に法律の条文は、社会規範にもとづき定められることを考えると「倫理という広い範疇のなかの一部が法律として条文化されている」と考えることもできそうだ。

コンプライアンスは大きく3つのルールをまとめたもの

このように法律と倫理がそれぞれにどのようなものであるかを見ていくと、コンプライアンスが単なる法令遵守にとどまらず、倫理や社会的良識、社会規範なども守るべきものであることが理解できるだろう。もちろん対外的なルールだけでなく対内的なルールも含まれる。つまりコンプライアンスは、大きく以下の3つのルールをまとめたものだ。

  • 法令
  • 社内規定や業界規定
  • 倫理

これらの規範に反する行為をすると強制かどうかに関係なく、さまざまな制裁を受けることになる。企業を運営する経営者・役員、その企業で働く従業員が一丸となってコンプライアンス遵守に努めることが大切だ。

コンプライアンス違反の例

ここでコンプライアンス違反にはどのようなものがあるのか、一般的な例を紹介しておこう。