(本記事は、高松 智史氏の著書『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』=実業之日本社、2022年12月8日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
ボジョレー思考VSロマネコンティ思考―エリートの罠
「答えのないゲームVS答えのあるゲーム」の次に私が意識しているのが、この「ボジョレー思考VSロマネコンティ思考」というゲーム感覚です。
それぞれを図にすると、このようになります。
ボジョレー思考というのは、「生産性」や「合理性」が何よりも重視される世界。
「もっともっと」を追い求め、行き着くのは「青天井」。
まさに資本主義の世界ですね。
追い求める場所へ、いかに「効率的」にたどり着けるかが重視される。
このような考え方が「ボジョレー」のようだという勝手なイメージからそう名付けました。
「ボジョレー」は量産、たくさん売ることが正義のイメージ。
一方でロマネコンティ思考は「生産性」や「合理性」よりも、「あらかじめ決めた」「ゆるぎない」ゴールを追い求めます。
そして「ゴール達成が最終目標であり、ゴール以上は求めない」という思考です。
「ロマネコンティ」は数も売り先も制限しているイメージ。
皆さんが一念発起して起業したとします。
その時皆さんは、この起業にどういうゲーム感覚で臨みますか?
仮に「ボジョレー思考」だったら、会社を大きく、事業を大きく、となるでしょう。
「生産性を重視」して、最速最強を目指し、事業拡大を狙う戦いをする。
そこに向かう道中で「少しは稼げるかもしれないけど、生産性が悪い」という案件は、切り捨てることになります。
さきほどの図にあるように、右肩上がりのグラフのイメージになります。
一方のロマネコンティ思考はその逆をいきます。
目指す売上が「1億円」だとしたらそれがゴールであり、それ以上は目指しません。
「売上1億円」に近づけるのなら、少々生産性が悪い案件でも取り組みます。
1日1万円稼げるバイトをしますか?
起業というと少しイメージしにくいかもしれないので、次の例で考えてみましょう。
「1日1万円稼げるバイトをするのか?」問題です。
皆さんは「金持ちになりたい」と思い、どうしたらお金持ちになれるかを考え始めたとします。その時が「今」だとします。
ロマネコンティ思考であれば、例えばまずは「年収3000万円」をゴールと決め、それ以上は求めません。
仮にその年の年収が決まる最後の1日を「2999万円」で迎えたとしましょう。
1万円を稼ぐために、「バイトを1日する」のが、ロマネコンティ思考です。
この思考は、あくまで自分が決めたゴールが重要であり、自分よりお金を稼いでいる人が隣にいたとしても気にしません。
人と自分を比べたりしないので、それで自己嫌悪に陥ることもなく健やかに過ごせます。
しかし「年収3000万円以上はいかない」ということになります。
なにせ、そこを目指しませんからね。
一方で、ボジョレー思考はもっともっとを追い求めます。
けれど「生産性」や「合理性」が命よりも大事なので、さきほどの年収が決まる最後の日を同じ状態で迎えたとしても、バイトをするという選択はしません。
こちらは際限なき成長を追い求めるので、いずれ「年収5000万円」を達成する可能性はありますが、他者と競争し続ける道を進みます。
これらの、どちらが良いということではありません。
今の自分は、目の前にあることについてどちらの思考で取り組むべきなのか?
また、取り組んでいるのか?
これらを明確にすることで、迷いなく健やかに戦えます。
そういった「ゲーム感覚」を持つだけで、無駄なイライラも、無駄な競り合いもなくなるのです(イをムに変える必要はありません)。
「ボジョレー思考VSロマネコンティ思考」で人生を健やかに
この2つの思考を意識して、人生を健やかにしていきましょう。
ちゃんと意識しないと、現代は「生産性」や「資本経済」に支配されているので、ボジョレー思考に染まってしまう、というよりすでに染まっている可能性が大きいです。
無意識なボジョレー思考が一番不健康になりやすいので気をつけましょう。
ですので、ロマネコンティ思考を意識しつつ、どちらの思考が自分に合っているのかを見極めましょう。
それには手始めに、自分はどれだけ稼ぎたいのか?についてリアリティ・スウィッチを入れて考えてください。
すると意外な発見があります。
無意識な「上へ上へ」の思考が消えて、本当に大事なことだけに焦点を当てられるようになります。
- 本書を深く理解するために/「答えのないゲーム」とは
- 私たちは「答えのあるゲーム」の戦い方が体に染みついます。これまで義務教育や部活、受験、就職活動と、あらゆる「答えのあるゲーム」で試されてきたからです。
「答えのあるゲーム」は答えが当たればそれでいい。ですが、「答えのないゲーム」には明確な正解ありません。
新規事業の立案や、コロナなどの緊急事態に対しての対策などの「答えのないゲーム」つまり、「答え」を出したところでその答えが「正しい」かどうか判断できない、ということです。
「示唆」を活用することで、「答えのないゲーム」を」戦うことができます。事実(ファクト)だけでなく、それから導き出される示唆に基づいて行動する重要性を述べています。