脱0→1思考 情報を整理して新たな視点で考える方法とは?
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(本記事は、高松 智史氏の著書『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』=実業之日本社、2022年12月8日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

「示唆」は程度問題―脱ゼロ・イチ文化。答えのないゲームの始まり

さっそくですが、問題です。


問題

このグラフから言える「示唆」=このグラフという「ファクト」から言えることは何か。3つ答えなさい。

「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術
(画像=『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』より)

それも3つ!

何事もそうですが、ただ単に文字を読んでいるだけでは技術は習得できません。

無理やりにでも、答えをたくさん出すことが重要です。

量を絞り出すことによって、より技術を吸収でき、成長できるのです。

さて、示唆を3つ出せたでしょうか?

今回の見出しにもした示唆は程度問題について詳しく説明していきます。

ファクトと示唆の違いとは

まずはさきほどの問題でよくある答えを3つ挙げておきましょう。

【よくある回答】

①この会社は成長している
②売上が伸びており、今も伸びる
③この会社に投資しよう!

この中のどれがファクトでどれが示唆かわかるでしょうか?

①と②はファクトに近いけど、②の後半部分「今後も伸びる」はやや示唆が入っている気がするのではないでしょうか。

そして③はもっと示唆に近づいている感じがしませんか?

もう1つクイズを出しましょう。


【問題】 ①〜③よりも示唆っぽい④を挙げよ。

① この会社は成長している② 売上が伸びており、今後も伸びる
③この会社に投資しよう。
④(        )


当然ですが、ファクトよりも示唆に近づけなければなりません。

「合っているかもしれないが、実際のところはわからない」というのが示唆です。

断言できてしまうことはファクトです。

例えば次のような示唆はどうでしょうか。

④この会社の人事制度は崩壊している

ここまでいくとファクトではなく、「ファクトから言えること」=示唆に近づいています。

しかしこの④も皆さんが出してくれたであろう示唆も、ファクトなのかそれとも示唆なのか、この境界を明確に示すことはできません。

「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術
(画像=『「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術』より)

ファクトと示唆は白黒はっきりさせられるものではなく、上の図のように「程度問題」なのです。

さきほどの④は徐々に示唆の〝濃度〟が濃くなっていると捉えられます。

示唆成分の〝配合〟が増えている、と言ってもいいでしょう。

この辺のニュアンスはなかなか難しいのですが、示唆はグラデーション、つまり割合の問題であると強く意識してください。

違う表現をすれば、ファクトは100人中100人が「そうだよね」と納得することといえます。

この視点でさきほどの選択肢を見ていきましょう。

①この会社は成長している

これはおそらくほとんどの方が「そうだよね」と納得するでしょうからファクトといえます。

②売上が伸びており、今後も伸びる

これはどうでしょう。

いやいやいやいや、そうとは限らないだろ。

という方が出てきそうです。

ましてや、「今後も伸びる」ためにはそのためのアクションやあるいはお金も必要です。

これはやや示唆に近づいていると考えていいでしょう。

③この会社に投資しよう!

ここまでくるとますます「そうだよね」と言う人は減ってくるので示唆寄りです。

では、ファクトが「100人中100人」が納得する事柄とすれば、そのファクトから導き出せる価値のある示唆は何人中何人くらいか、これをここでは「100人中3人」としておきます。

僕はこの「100人中3人」が「そうだよね」と納得する示唆をプラチナ示唆と呼んでいますが、それは100ページで詳しく解説します。

その示唆を聞いただけでは「そうだよね」と納得しない人でも、説明を聞けば「なるほど、確かに」と納得すものが、ファクトから限界まで離れつつも示唆と認識される範囲というイメージです。

これを超えてしまうと、ただの「関係ないこと」になってしまうリスクが出てきます。

例えばさらに、このグラフから、「この会社は1年後に倒産する」までいくと「そうだよね」と納得する人が100人中3人未満となり、単なる「勘」となってしまう可能性が高いのです。

さて、前の項で伝授した口癖、「見たままですが」→「何が言えるっけ?」に「何人中何人」を加えてみます。

「見たままですが」→「何が言えるっけ?」→「それは何人中何人?」

こうして口に出し、思考グセを付けてしまうのが最善策。

ファクトから示唆を出す思考が自分の中にインストールされていきます。

最後に「④この会社の人事制度は崩壊している」の回答について説明して、この項を締めます。

④「この会社の人事制度は崩壊している」が出てくる理由

「売上が急激に増えたということは、当然、社員も増えていることが予測できる。社員の増加は、雇用形態の多様化につながる。するとどうしても、管理体制に〝例外〟が生まれ、それに応じて給料や働き方もバラバラになる。この〝例外〟の数の増加が5年も続いているとすれば、人事制度は形骸化し、もっといえば崩壊しているに違いない」と、このように説明できます。

もちろん「答えのないゲーム」なので本当のところはわかりません。

ただ、示唆の技術を身につけると、さきほどのグラフからこういった示唆を読み取れもするのです。

次からは具体的な示唆の出し方について説明していきます。

本書を深く理解するために/「答えのないゲーム」とは
私たちは「答えのあるゲーム」の戦い方が体に染みついます。これまで義務教育や部活、受験、就職活動と、あらゆる「答えのあるゲーム」で試されてきたからです。
「答えのあるゲーム」は答えが当たればそれでいい。ですが、「答えのないゲーム」には明確な正解ありません。
新規事業の立案や、コロナなどの緊急事態に対しての対策などの「答えのないゲーム」つまり、「答え」を出したところでその答えが「正しい」かどうか判断できない、ということです。
「示唆」を活用することで、「答えのないゲーム」を」戦うことができます。事実(ファクト)だけでなく、それから導き出される示唆に基づいて行動する重要性を述べています。
「答えのないゲーム」を楽しむ 思考技術
高松 智史
一橋大学商学部卒。
NTTデータ、BCG (ボストン・コンサルティング・グループ)を経て「考えるエンジン講座」を提供するKANATA 設立。
本講座は法人でも人気を博しており、これまでアクセンチュア、ミスミ等での研修実績がある。
BCGでは、主に「中期経営計画」「新規事業立案」「組織・文化変革」などのコンサルティング業務に従事。
YouTube「考えるエンジンちゃんねる」の運営者でもある。
著書に『変える技術、考える技術』(小社刊)、『フェルミ推定の技術』『「フェルミ推定」から始まる問題解決の技術』(以上、ソシム)がある。

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