興行,プロレス市場
(写真=Bjoern Deutschmann/Shutterstock.com)

本稿は、現在のプロレス人気を「市場」の視点から斬ることを目的としている。前稿まで読了してからご覧いただきたい。

  1. 現在のプロレス人気の元となった、とある買収劇(前稿)
  2. プロレスは、実は「〇〇〇」ビジネスである(前稿)
  3. これがプロレス市場の構造と市場規模(前稿)
  4. プロレスブランド-金額には出てこないブランドのポジショニングマップ-(本稿)
  5. その資料、「Xビジネスショートレポート」(本稿)

4.プロレスブランド-金額には出てこないブランドのポジショニングマップ

ポジショニングとは、ターゲットとなるユーザーのなかに、商品や企業、サービスやブランドなどについての存在を築き、差別化されたイメージを植えつけることである。差別化された自社製品の価値をユーザーに認識してもらうことで、競合製品に対して優位に立つことを目的にしている。
ある商品が、その市場において競合に対してどのような位置付けにあるのかを、2つの軸線上に置いて視覚化したものがポジショニングマップとなる。これらの軸線を「価格」「品質」などではなく「魅力度」「温度」として、「ユーザーがどう思っているか」という「ひとの気持ち」を視覚として表現・分析するツールがあるのだ。

≪プロレス市場のブランド比較 by「Xビジネスエンジン」≫
プロレス市場のブランドを矢野経済研究所の解析手法(Xビジネスエンジン)を用いて分析したところ、以下のようになった。

興行,プロレス市場

検索と口コミの総数量である「熱量」(バブルの大きさ)において、上図の通り「新日本プロレス」と「WWE」のバブルが突出して大きい結果となった。

WWEはアメリカのプロレス団体である。近年、日本人のスターレスラーが参戦するなどの理由で日本国内での注目度が上がっている。WWEは、2016年から日本での興行数の増加や同団体が配信するインターネットの有料チャンネル「WWEネットワーク」のサービスを開始しており、日本での活動も活発化している。
しかし魅力度(=メディアに左右されず自主的に反響しているユーザーの度合い)、温度(=情報の拡散度合い)においては、国内市場をリードする新日本プロレスの方が高い位置を占める結果となった。

その他の団体では、「大日本プロレス」の魅力度(ファンがメディアの影響を受けず自主的に情報を発信している)がトップとなり、温度(情報が拡散している)でも高い数値を示す結果になった。
また、2017年9月にサイバーエージェントの子会社となった「DDTプロレスリング」は、他団体より熱量は小さいものの、インターネットテレビ「AbemaTV」での配信が始まったこともあり、温度においてトップとなった。

≪主要事業者の動向≫
新日本プロレスリング(新日本プロレス):

1972年にプロレスラー「アントニオ猪木」が旗揚げしたプロレス興行団体である。同団体は、日本のプロレス界の最古のプロレス興行団体でもある。近年長く赤字体質が続いていたが、2012年にトレーディングカードゲーム会社である(株)ブシロードに買収された。その後ブシロードのグループ会社となって以降は、業績はプラス成長を継続している。プロレス興行は、毎年1月4日に行われる東京ドームの大会「レッスルキングダム」、夏の恒例行事である「G1 CLIMAX」といったビッグマッチをはじめ、年間で154試合(2017年)の興行を開催している。これらの興行は1969年からテレビ朝日系列「ワールドプロレスリング」で毎週放送されている。同番組は現在のプロレス中継番組として最長寿番組であり、新日本プロレスの中継を開始してからは2018年4月で45周年を迎えた。
2014年12月からは、同社とテレビ朝日が共同運営する有料動画配信サービス「新日本プロレスワールド」を開始しており、2018年7月現在の会員数は約8万人を数える。
2017年7月からは本格的に海外進出を開始している。同年同月にロサンゼルス大会、2018年2月にはオーストラリア大会、同3月に再びロサンゼルス大会、同7月にはサンフランシスコ大会を開催した

オールジャパン・プロレスリング(全日本プロレス):
「ジャイアント馬場」が設立したプロレス団体で、相手の技を全て受けた上で勝つ「王道プロレス」というファイトスタイルを標榜している。2017年10月時点では、秋山準、青柳優馬、諏訪魔、青木篤志、宮原健斗、大森隆男、渕正信、ジェイク・リー、ゼウス、野村直矢、中島洋平などが所属している。
2012年に、全日本プロレスから派生した「プロレスリング・ノア」所属であった秋山準が同団体を退団、2014年6月に新会社を設立した。同年7月より新会社側の社長に就任。旧全日本プロレスの運営を実質的に引き継いだ形で、選手も全員移籍した。結果、正式社名:オールジャパン・プロレスリング㈱、通称:全日本プロレスという体制となっている。秋山社長就任に伴い、同社の相談役にジャイアント馬場夫人の馬場元子氏が就任、また、興行の冠に「~ジャイアントシリーズ」を復活させるなど、「馬場全日本」の時代を一部引き継いで、「王道復権」を目指している。
かつては新日本プロレスと「二大メジャー団体」と称されていたが、現在では団体の存在が危ぶまれるほどの選手の大量離脱が続き、依然として厳しい状況が続いている。しかし、人気・実力を兼ねた諏訪魔を筆頭に、将来のエースと称される宮原健斗の躍進など、同団体の試合のクオリティ、選手層は他団体と遜色無しという見方もある。いかに最適なプロモーションで、プロレスファンのみならず世間一般に存在をアピールできるかが今後はの課題となっている。

興行,プロレス市場

5.その資料、「Xビジネスショートレポート」

実際に各種のプロレスの試合に足を運んでいるファンの方々は、上記のバブルチャートを見てどう思ったであろうか。分析の元ネタは、矢野経済研究所が保有する産業ビッグデータと独自に開発したリサーチAIである。きっとツボに入る分析内容があったことと思う。

Xビジネス開発室では、「Xビジネスショートレポート」として、同人誌市場の分析レポートを新体裁で掲載・販売している。ショートといっても体裁はA4サイズで30ページにわたるものであり、今回掲載した内容も、さらに深く掘り下げて解説している。

XビジネスショートレポートVol.3 プロレス市場
https://www.yano.co.jp/market_reports/R60201101

レポートの価格は10,800円、プロレスの試合のS席が一枚買えてしまう。なのであるが、各プロレス団体のマーケティング担当者はもちろん、企業のエンタメ系コンテンツの担当者、グッズの制作・販売店、もちろんプ女子の皆さんにも、肌感覚でご納得いただける内容になっていると自負している。もちろん購入前の内容問い合わせも随時受け付けているので、ぜひリンク先をご参照頂きたい。

(依藤 慎司)

関連資料:
XビジネスショートレポートVol.3 プロレス市場
https://www.yano.co.jp/market_reports/R60201101
2018 クールジャパンマーケット/オタク市場の徹底研究
https://www.yano.co.jp/market_reports/C60109800

関連リンク:
新日本プロレス
https://www.njpw.co.jp/
プロレスリング・ノア
https://www.noah.co.jp/
アイスリボン
http://iceribbon.com/
スターダム
https://wwr-stardom.com/
WAVE
https://pro-w-wave.com/
サムライTV
https://www.samurai-tv.com/