社長,フレームワーク,経営戦略
(画像=Matej Kastelic/Shutterstock.com)

カリスマ経営者は“直感力”で組織を率いているように思われがちだが、実はフレームワークを重視している人が多い。意思決定を行ったり、戦略を練ったりする際には、特定の“型”に当てはめながら、論理的かつ合理的に自分自身の中の“解”を導き出しているのだ。

では、フレームワークとはどのようなものを意味し、どういったバリエーションがあるのだろうか?その概念や効用、主要なフレームワークの具体例などについて紹介する。

そもそもフレームワークとは何か?

フレームワークの直訳は「骨組み・構造」で、ITの分野ではシステムを構築するうえでの基盤となるソフトウエアのことだ。これに対し、ビジネス用語としてのフレームワークは意思決定や業務改善、問題解決、経営戦略の立案などを進めるうえで有益な分析法や論理的思考の枠組みを意味する。

フレームワークはテンプレート化されており、それを用いれば誰でも円滑に意思決定を行えたり、見直すべきポイントに気づけたりする。MBAを取得している人なら、いくつかのフレームワークについて学んだことがあるはずだ。

基本中の基本、PDCAサイクルもフレームワークの一種

フレームワークの中には、すでにかなり以前から日本企業の間にも浸透しているものがある。その一種であるとは認識していないまま、多くのビジネスパーソンが活用しているのがPDCAサイクルだ。

“品質管理の父”と称され、終戦直後に日本でも活動したW・エドワーズ・デミング氏が提唱したもので、Plan(計画)、Do(実行)、Check(測定・評価)、Action(対策・改善)の頭文字を取ったものだ。生産・業務プロセスにおいて改善すべき点を浮き彫りにし、速やかにそれに対処するためのフレームワークである。PDCAのサイクルを回し続けていくことで、どんどん改善が施され、生産活動や業務遂行の効率化が進むことが期待できる。

Planとは、どんな目標を掲げて、それを達成するために、どういった実行計画を立てるのかを明確するプロセスだ。このスタート地点が曖昧だったり、計画性に欠けたものだったりすると、Doの経た後の結果は推して知るべしということになってしまう。

Checkについても、検証が不十分では次のActionにおいて有効策を見いだしにくくなってくる。なぜ計画通りに進まなかったのかについて、徹底的に要因を探るべきだ。

もともと生産現場で用いられてきたPDCAサイクルだが、ビジネスのさまざまなシーンに活用できる。こうしたことから、特に日本企業の間では使用頻度の高いフレームワークのスタンダードだといえよう。

さまざまな業界で用いられているフレームワークにはどんなものがあるのか?

先述したPDCAサイクル以外で、実際に多くの企業が活用している主要なフレームワークにはさまざまな種類がある。具体例としては、SWOT分析、3C分析、PEST分析、コア・コンピタンス分析、7つのS、ポーターの競争戦略などが挙げられる。それぞれの概要について説明していこう。

SWOT分析とは何か?そのメリットとは?

SWOT分析とは、策定した戦略や計画を客観的に分析するためのフレームワークだ。SWOTはS=Strength(強み)、W=Weakness(弱み)、O=Opportunity(機会)、T=Threat(脅威)の略である。

4つのキーワードのうち、SとWは「内部要因」に該当し、自ら(自社)の努力で強みを生かしたり、弱みを克服したりすることが可能だ。これに対し、OとTは「外部要因」で、政治経済や景気の動向、ちまたのニーズの変化、技術革新などといったように、自らではコントロールしがたいものとなる。

分析法はシンプルで、4つの項目に関してそれぞれ思い当たる事例を書き込んでいく。そのうえで、クロスSWOT分析と呼ばれる作業を進めていくところが最も重要なポイントだ。

例えば「O×W」のクロスでは、「弱みをいかにカバーして好機を得るか」という方策を導き出すことが可能となる。Oに「近くに保育所がオープンして親子連れの来店が増えた」、Wに「ターゲット層の利用が少なく、客単価が低い」と書き出されていたとしたら、「子ども向けメニューを拡充して親子連れの来店をさらに促し、同時に客単価も増えるように誘引する」といったプランが浮かび上がってくる。

3C分析とは何か?そのメリットとは?

3C分析は、著名な経営コンサルタントで、ビジネス・ブレークスルー大学の学長を務める大前研一氏が考案したフレームワークで、Customer(顧客)、Competitor(競合相手)、Company(自社)という3つの視点から分析を進めていくものだ。このうち、顧客と競合相手は「外部環境」を意味し、自社が「内部環境」となる。

まず、自分たちがターゲットにしているのは、どのような顧客でどういったニーズを抱いており、ライバルの強みは何でどれくらいのシェアを握っているのかについて冷静に分析する。そして、それに対する自分たちの弱気と強み、顧客から得ている評価などを照らし合わせてみると、競合に負けずに顧客からの支持を拡大させるための策が浮かび上がってくる。

PEST分析とは何か?そのメリットとは?

PEST分析と呼ばれるフレームワークは、マーケティングの世界的な権威であるフィリップ・コトラー氏が提唱したものだ。マクロの外部環境を分析するうえで有効な手法だと位置づけられており、PESTはPolitics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の頭文字を取ったものである。

PEST分析では、4つの観点ごとに、現状を整理しながら認識していく。「政治面」では国際的な条約の締結、規制緩和・強化、増税、「経済面」では景気や賃金、個人消費、金融市場の動向、「社会面」では少子高齢化や流行、世相、文化、「技術面」ではIoTやビッグデータ、自動運転などである。ピックアップされた事象の多くは、それぞれのカテゴリーを越えて相関性がある。

例えば、政府が大幅な増税に踏み切れば、個人消費が落ち込んで景気が悪化する。企業はリストラを進めて失業が増えて世相が暗くなる一方で、研究開発の予算も削られて、技術革新において国際的に日本は後手に回るといった具合だ。それぞれの事象がどのように関連しているのかを検証することで、目の前で生じている変化を捉えられる。

そして、その変化にどのように対応していくべきなのかについては、先述したSWOT分析のように「内部環境」まで分析できるフレームワークも活用し、自社の強みを生かした戦略を練っていくわけだ。

コア・コンピタンス分析とは何か?そのメリットとは?

コア・コンピタンス分析とは、C. K. プラハラード氏とゲイリー・ハメル氏が1990年に米国の経済学誌「ハーバード・ビジネス・レビュー」において発表した論文「The Core Competence of the Corporation」で言及し、それを機に世界的に広まったものだ。コア・コンピタンスとは、その企業が有する能力(コンピタンス)の中で中核(コア)となるものを指している。

さらに突き詰めれば、その能力とは自社のキラーコンテンツ(売れ筋の製品・サービス)を創造するための技術力やノウハウのことだ。具体的には、広範で多様な市場に参入する可能性のある能力である、その能力で生み出した最終商品・サービスが顧客に価値をもたらす、競合他社が容易には模倣できないといった、3つの条件を満たすものがコア・コンピタンスだとされる。

「7つのS」とは何か?そのメリットとは?

「7つのS」は「7Sモデル」とも呼ばれ、世界的なコンサルティング会社のマッキンゼー・アンド・カンパニーが提唱したフレームワークである。企業が1つの組織として正しく機能しているか否かを分析するのがその目的だ。

組織に関わってくる要素を7つのキーワードでピックアップし、それぞれの関係がどのようになっているのかを検証していく。7つのSとは、頭文字がすべてSのキーワードで、具体的には以下の通りである。

  1. Strategy=競争優位性を保つための事業戦略
  2. Structure=組織の構造
  3. System=人事評価や報酬体系、情報管理などに関する組織内のシステム
  4. Shared Value=価値観や理念に対する社内の共通認識
  5. Skill=営業力や技術力、マーケティング力などといった組織の能力
  6. Staff=人材
  7. Style=社風や企業文化

このうち、1~3は「ハードのS」、4~7は「ソフトのS」と呼ばれている。「ハードのS」の見直しには正面から取り組むものの、「ソフトのS」にはあまり手を講じていないという企業も少なくない。

新たな中期経営計画の策定や組織の再編といったように「ハードのS」は具体策を打ち出しやすいが、「ソフトのS」は人が関わってくる要素が強いだけに、一朝一夕で改善を果たすのは難しい。片方だけ改革を進めても、もう片方がおろそかになっているのでは、その組織が真に有しているポテンシャルを発揮しづらい。

ポーター氏が唱えた競争戦略はマーケティングにおける定石

世界的に著名な経営学者のマイケル・ポーター氏が唱えた競争戦略は、「コスト・リーダーシップ戦略」「差別化戦略」「集中戦略」の3つから成る。

1つ目のコスト・リーダーシップ戦略は、ライバル企業よりもコストを引き下げることによって、競争優位を確保するというものだ。その具体的な手段としては、生産規模の拡大や間接コストの削減、技術革新などがある。また、トヨタの「カイゼン」活動のようにソフト面の技術を日々見直していくアプローチも有効だ。

2つ目の差別戦略とは、顧客が競合他社の製品・サービスに対して認知する価値よりも、自社のそれを高めることだ。工業製品でいえば、それを実践しているのがアップルで、よりハイスペックのスマートフォンが出回っていても多くの人がiPhoneを選んでいる。

3つ目の集中戦略は、もはや現代の企業においては常識と化していることだ。企業の経営資源を特定の顧客層や製品・サービス、組織、エリアなどに集中させるというものである。

そうすることによって、限られた経営資源でより大きな成果を追求できる。資金面に制約のある中小・中堅企業は、勝負すべきターゲットを絞って経営資源を重点的に投下する「選択と集中」が特に求められてくる。

掲げているビジョンの達成に向けて足元の状況を正確に分析する

さまざまなフレームワークの特徴や有効性を認識したうえで、それらをうまく活用して客観的かつ緻密に状況分析を行うことができている人はどのくらいだろうか。手間に思うかもしれないが、一手間かけることで弱点克服の一歩につなげられる。さらに、必要に応じて軌道修正を行っていけば、会社が掲げているビジョンの達成へと近づけられることだろう。

文・THE OWNER編集部