矢野経済研究所
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国内化学産業川上における2030年度のGHG排出量(Scope 1+2)は5,969万t-CO2eを予測

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向を調査し、石油精製会社、石油化学メーカー、総合化学メーカーの動向、カーボンニュートラル技術の現況と課題、将来展望を明らかにした。

国内化学産業川上におけるGHG(Green House Gas: 温室効果ガス)排出量(Scope 1+2)推移予測

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1.市場概況

国内の産業部門において、化学産業は鉄鋼に次ぐCO2の多排出産業として位置づけられており、国としてカーボンニュートラル(脱炭素)を実現するには、化学産業のカーボンニュートラルの達成が不可欠である。

化学産業のサプライチェーンは、石油製品であるナフサを起源に燃料多量消費を含む複数の工程や企業を経て最終製品となるため長く、川下に向かうほど産業や業種の幅が広くなる特徴を有している。そのため、特にプラスチック、合成ゴム、繊維といった化学製品の原料である基礎化学品を製造するサプライチェーンの川上に位置する企業が化学産業全体に与えるカーボンニュートラルの影響は大きい。

化学産業の川上に位置する各企業のCO2排出源をScope別にみると、自社排出にあたるScope 1, 2では自家石炭火力発電設備やナフサ分解炉などの燃料多量消費型設備での燃料使用が主である。一方、サプライチェーン全体での排出にあたるScope 3では、購入した製品による排出が多くを占めているようにみられる。これらの状況に対して、各企業では、Scope 1, 2において①燃料転換、Scope 1~3で②CO2の資源循環・回収(CCUS:Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage:CO2の分離回収・有効利用・貯蔵)、Scope 3では③ケミカルリサイクル(後述)、④原料転換の取り組みを主に進めている。

2.注目トピック

国内の化学産業川上のScope 3における取り組み

化学産業の川上に位置する企業は、2050年のカーボンニュートラル目標のほか、2030年に向けてScope 1, 2でのCO2排出量の削減率などを中間目標として設定している。現下、各企業ではScope 1, 2でのCO2排出量の削減を主体としており、ナフサ分解炉や自家石炭火力発電設備を対象に燃料転換や設備のエネルギー高効率化などに取り組んでいる。

一方、Scope 3は化学産業のサプライチェーンの複雑性からCO2排出量を把握しきれていない企業がほとんどである。そのため、企業によってはScope 3のCO2排出量の調査・算出・集計などを行っている状況であるが、化学産業の川上ではScope 3でのCO2排出量の削減に貢献する技術の研究開発が進められている。具体的には、Scope 1, 2での削減にも寄与するCCU(Carbon dioxide Capture and Utilization:二酸化炭素回収・有効利用)、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage:二酸化炭素回収・貯留)、廃プラスチック・廃棄物などに化学的な処理を行い、原料に戻してから再利用するケミカルリサイクルなどである。

また、Scope 3でのCO2排出量の削減に向けて、化学産業の川上に位置する企業は基礎化学品の従来の原料である石油由来のナフサからSAF(Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料)の副産物であるバイオナフサの調達もしく切り替えを検討する動きもみられる。

3.将来展望

化学産業ではケミカルリサイクルやCCU/CCSなどの技術研究開発が進捗しているものの、未だ技術実装に至っていないケースがほとんどである。そのため、各企業は対応できる範囲でScope 1, 2のCO2排出量を削減しているのが現状である。

しかし、カーボンニュートラルの実現においては、Scope 3のCO2排出量の削減が喫緊の課題であり、特にケミカルリサイクルがカギになると考える。現在、化学産業全体では物から物への再利用であるマテリアルリサイクルが主流となっているが、マテリアルリサイクルは処理できる廃棄物の条件や再利用用途の範囲が限定的であるなどの課題もある。そのため、ケミカルリサイクルを現在のマテリアルリサイクルのポジションに置き換えていく上で、化学産業の川上に位置する各企業はスピード感を持った投資判断を行い、ケミカルリサイクルの早期実装化を図っていく必要がある。ただし、全ての状況下でケミカルリサイクルは万能とはいえないため、マテリアルリサイクルと適材適所で使い分けることで、CO2排出量を最大限に削減していくことが求められる。

なお、化学産業の川上では、2025年度以降から低炭素燃料の混焼率増加、脱炭素燃料の導入、CCUS(カーボンリサイクルを含む)の実装化、ケミカルリサイクルプラントの稼働といった動きの本格化が想定されることから、2030年度の国内化学産業川上におけるGHG(Green House Gas: 温室効果ガス)排出量(Scope1+2)は5,969万t-CO2eを予測する。

調査要綱


1.調査期間: 2023年5月~7月
2.調査対象: 石油精製会社、石油化学メーカー、総合化学メーカー等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談、ならびに文献調査併用
<化学産業とは>
本調査における化学産業は、石油精製会社、石油化学メーカー、総合化学メーカーをはじめとするサプライチェーンの川上に位置する企業を対象としている。

なお、国内の化学産業川上におけるGHG(Green House Gas: 温室効果ガス)排出量(CO2換算)を試算するにあたり、事業者の自社排出(Scope 1, 2)を対象とし、2025年度と2030年度の排出量の予測値を公表する。

また、GHG(温室効果ガス)排出量算定については、下記に準じている。
Scope 1:事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)
Scope 2 : 他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
Scope 3 : Scope 1、Scope 2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他社の排出)
参照:環境省ホームページ https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/estimate.html
<市場に含まれる商品・サービス>
原料転換、燃料転換、資源循環、ケミカルリサイクル、水素・アンモニア燃料、バイオマス燃料、CCUS(CCU/CCS)

出典資料について

資料名化学産業のカーボンニュートラルに向けた動向と展望
発刊日2023年07月27日
体裁A4 165ページ
価格(税込)198,000円 (本体価格 180,000円)

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