矢野経済研究所
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価格修正で一服つくも需要変動に翻弄される特殊紙市場

~用途開発と新製品の研究開発が今後も特殊紙市場のカギに~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、特殊紙市場を調査し、各品種の市場動向や参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、産業・工業用途の特殊紙である産業機能紙市場について公表する。

産業機能紙の市場規模推移・予測

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1.市場概況

特殊紙は、これまでその付加価値性によって、固定ユーザー向けに安定した需要があり、用途も印刷用途をはじめ、産業・工業分野、食品分野、医療・医薬品分野、建材分野と幅広く、需要の変動に対してもある程度対応が可能な底堅い市場だった。

一方で、新聞用紙や印刷用紙などの一般紙は需要構造の根本的な変化により減少し続けており、印刷用途で活用されている特殊紙についても同様の影響が出ている。産業・工業用途である産業機能紙についても、生産拠点の海外移転による空洞化や大幅に変動する需要環境、価格競争力のある海外輸入品の定着、進出先や輸出先での海外メーカーとの競争などにより、市場環境の厳しさが増している。

2018年度の産業機能紙市場規模(国内メーカー出荷数量ベース)を前年度比101.4%の14万5,071tと推計した。内訳をみると、水に強く、破れにくい合成紙は国内市場はかつてほどの成長は見込めなくなっているものの、2018年度実績が前年度比3.3%増と合成紙の機能が認識されている粘着ラベル分野を中心に需要は拡大している。今後、合成紙が有する機能を活かした新規用途への展開やコーティングなどで機能性を付与することによる新規需要を開拓するなど、提案力次第で需要を喚起できる余地は残されている。キャリアテープ原紙は、スマートフォン関連や車載向けでコンデンサチップや抵抗などの電子部品の需要が拡大していることにより、需要が増加している。但し、2019年度は電子部品の需要が減退していることから大幅に減少する見込であり、産業機能紙全体市場に影響をあたえる見通しとなっている。

2.注目トピック

製紙メーカー各社の脱プラ・紙化戦略が始動

昨今、使い捨てプラスチックによる海洋汚染への懸念が国際的に高まる中で、“脱プラスチック” の動きが活発化しており、その需要(石油由来プラスチックの代替需要)を取り込む動きも具体化してきている。製紙メーカー各社では、こうした市場環境の変化を追い風にすべく、プラスチックの代替となり得る新製品・既存製品による脱プラ・紙化に向けて動き出している。日本製紙や王子ホールディングス、三菱製紙の他、レンゴー、大王製紙、北越コーポレーション、中越パルプ工業などにおいても、脱プラ需要の取り込みを推進している。

3.将来展望

リーマンショックを契機に需要構造が変化し、特殊紙市場は総体的に大きな成長が望みにくくなっている。顧客ニーズの多様化も進んでおり、既存分野においては成熟化・コモディティ化が目立つようになった。

その状況下において、大手製紙メーカーを中心に、次世代素材開発の動きも活発化しており、中でも注目度の高い素材であるセルロースナノファイバーについては、製紙業界では、日本製紙や王子ホールディングス、北越コーポレーション、中越パルプ工業、大王製紙などの大手製紙メーカーが先行して開発を進めている。また、脱プラ需要を取り込む動きも具体化してきている。

今後も、特殊紙事業における成功のカギは、用途開発と新製品の研究開発となり、ともにマーケットと対話する姿勢が重要になると考える。