中小企業,成功,マーケティング戦略
(画像=Bloomicon/Shutterstock.com)

自社の商品・サービスを市場に普及させるためには、マーケティングが重要だ。そして、利益を出して事業を継続していくためには、それを戦略的に行っていく必要がある。

ITの普及によって顧客の多様な価値観が顕在化してきたことで、これまで以上にマーケティング戦略のセンスが問われるようになった。数ある手法のなかから、自社に最適なマーケティング戦略を見出せるかどうかが成否を分けることになる。

今回は、マーケティング戦略の立案に生かせる基礎知識を押さえ、主に中小企業がマーケティング戦略によって最大効果を得るためのノウハウについて紹介する。

マーケティング戦略とは?

マーケティング戦略とは、シンプルに言えば「誰に、どんな価値を、どうやって提供するか」を戦略的に定めることだ。

具体的には、まず市場分析をした上でターゲットを定め、自社商品をターゲットに向けてどうアプローチしていくかを検討し、実行するための戦略を練っていく。一見シンプルに見えるが、その手法は数多く、資本規模や業界によっても変える必要がある。

近年は消費に対する意識の変化にともない、マーケティング活動がより高度化している。自社に合ったものを戦略的に進めていかなければ、効果が出にくくなっているのだ。

特に中小企業のマーケティングには「戦略」が重要

スマートフォンなどの普及にともなって企業と消費者との接点が増えている昨今、市場の細分化が目まぐるしく進んでいる。これまでは、テレビや新聞などのマス媒体が消費者の購買行動に大きな影響を与えていたが、今は「お金をかけてテレビCMを出稿すれば売上が上がる」とは限らなくなっている。

一方で、Webの普及にともなって広告のあり方も大きく変化し、いかに市場を細分化してターゲットを絞っていくかが重視されるようになっている。

逆に言えば、セグメンテーションとターゲティングさえきちんとできていれば、資本の少ない中小企業でも、特定の市場で存在感を示すことができるようになった。その意味で、今は中小企業がマーケティングを「戦略的」に実施していくことを求められていると言えるだろう。

マーケティング戦略を立案・実行する6ステップ

マーケティング戦略の立案・実行のプロセスは、以下の6ステップで進めていくのが基本だ。

1.マーケティング環境および市場の調査・分析

マーケティング戦略を立案では市場の分析から始めるのが一般的だが、自社について理解を深めることも忘れてはならない。

手法としては、「顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つを分析する3C分析や、比較的汎用性の高いSWOT分析、PEST分析などが有用だ。

成果を上げる戦略を立案するためには、市場における自社の現在の立ち位置を把握できるような分析が不可欠だ。自社にとって都合の良い解釈にしてしまわないよう、意識して取り組もう。

2.セグメンテーション

市場分析ができたら、ターゲットを的確に定めるために「セグメンテーション」という作業を行う。セグメンテーションとは、地理的変数(都市規模や人口、気候など)やデモグラフィック変数(国籍、年齢、性別、職業、所得など)、心理的変数(購買動機、価値観など)、行動変数(使用頻度、過去の購買状況など)を用いて、できるだけ細かく市場を細分化することだ。

市場を細分化することのメリットは、ターゲットの一人ひとりに合った高い価値を提供できることだ。大まかに市場を把握するだけでは、そこに隠れる潜在的なニーズに気づくことができない。競合企業との差別化を図るために、特に中小企業や小規模事業者は念入りにセグメンテーションを行うべきだ。

中小企業や小規模事業者は、経営資源が限られていることが多い。さまざまな切り口で市場を細分化し、ピンポイントでターゲットを定めることで、余力をもって競合と戦うことができるはずだ。

3.ターゲティング

セグメンテーションで市場を細分化したら、次にターゲットを定めていく。

ターゲティングは、細分化した市場それぞれの成長性や影響力を加味しながら、最適なターゲットを選ぶ作業である。マーケターのスキルが問われる部分であり、マーケティング戦略のプロセスの中で最も重要な作業の一つだ。

自社の強みと顧客の課題が絶妙にマッチする市場を選び、自社が優位性を保つことができる市場にリソースを集中させることが目的で、特に中小企業の場合は大手企業が進出できないニッチな市場をいかに見つけられるかがポイントになる。

4.ポジショニング

ターゲットが定まったら、次にそこに対してどのような価値を提供するかを検討する。すでにさまざまなサービスが溢れかえっている市場で、ターゲットに自社商品を選んでもらう方法を考えるのだ。

これを考えるにあたっては、自社商品がどのようにして顧客のニーズを解決するのか、競合他社と比べてどのような違いがあるのかなど、訴求ポイントを明確化する必要がある。このとき、商品の魅力を一方的に押し付けるのではなく、ターゲットが「欲しい」と感じるような魅力をアピールしなければならない。

ここで、「ポジショニングマップ」が役に立つ。ポジショニングマップとは、2次元の座標上に自社のユニークさや優位性を表すもので、顧客が市場の状況や特性をひと目で把握できるメリットがある。

自社商品の魅力をアピールできるだけでなく、ターゲットのニーズと自社が提供する価値にずれが生じていた場合、気づくことができる。

5.マーケティング・ミックス(4P)

ここまでが主にSTP分析と呼ばれるもので、ここから「4P分析」に入っていく。これはマーケティング戦略に用いられるフレームワークの一つで、4つのマーケティング要素である「Product(製品)」「Price(価格)」「Place(流通)」「Promotion(販売促進)」から最適なマーケティング戦略を立案するための分析方法だ。

商品のデザインなどを再考したり、品質に対して価格は適正であるかを確認したりするなかで、自社商品の長所・短所をあらためて把握する。なお、各要素は相互に影響し合っているため、どれか1つでも欠けてしまうと得るべき結果が得られないので注意してほしい。

6.マーケティング戦略の実行

誰に何を売るかを決め、その訴求ポイントを明確にしたら、その価値をどのようにして顧客に届けるかを考える。

前述の「4P」は企業視点であり、提供方法を定めるにはこれを顧客視点に置き換えた「顧客にとっての価値(Customer Value)」「顧客にとってのコスト(Cost)」「顧客の利便性(Convenience)」「顧客とのコミュニケーション(Communication)」を分析する「4C分析」が有用だ。

たとえば「コスト」には金額だけでなく、顧客が労する時間や手間、心理的な負担なども含まれる。顧客が実際に商品を手に取るまでの流れを再確認することで、アクセシビリティの改善点やベストなプロモーションが見えてくるはずだ。4C分析によって、「誰に、どのような価値を、どのように提供するか」が完成する。

中小企業が押さえておきたい3つのマーケティング戦略

大企業には大企業に合った戦略があり、中小企業には中小企業にしかできない戦略がある。経営資源を鑑みて、身の丈に合ったマーケティングを行うことも大切だ。ここでは、汎用的なマーケティング戦略のなかでも、中小企業や小規模事業者に向く手法に絞って紹介する。

1. STP戦略

STPとは「(S)セグメンテーション」「(T)ターゲティング」「(P)ポジショニング」の頭文字を取った言葉で、米経済学者フィリップ・コトラーが提唱した、マーケティング戦略の基本中の基本となるフレームワークだ。

前述のマーケティング・プロセスの6つのフローのうち、特に「セグメンテーション」「ターゲティング」「ポジショニング」に注力するマーケティング戦略である。市場を細分化して適切なビジネススペースを定めることは、ニーズの多様化およびマスメディアの影響力が低下している現代においては不可欠であり、また効果的と言えるだろう。

経営資源が豊富な大手企業は、生産量を増やすことでコスト削減と収益向上を狙ってくる。中小企業がそれに真っ向から勝負するのはナンセンスだ。STP戦略で自社の強みを生かせる市場を見つけ、たとえ狭くても確実に優位なポジションを得る手法は、中小企業のマーケティング戦略の基本である。最初は小さな市場を確実に勝ち、認知度が高まるにつれて販路を拡大していけばいいのだ。

2. 差別化戦略

差別化戦略とは、競合他社が真似できないブランド力や独自技術、販売チャネルなどを顧客価値に付加して提供する手法だ。競合との差別化は、マーケティング戦略の核の1つだ。他社にはない自社の強みを見出し、その魅力を戦略的に伝える方法を考えよう。

3. 集中戦略

集中戦略とは、ハーバード大学ビジネススクールポーター教授が提唱した3つの基本戦略の1つで、セグメンテーションによって市場を限定するだけでなく、流通チャネルなども特定のものに集中するなど、特定のターゲットをピンポイントで狙うことで効率的に顧客に訴求する方法だ。コストリーダーシップ戦略が難しい中小企業でも、生産コストを抑えられる。

絞り込んだターゲット市場そのものが縮小してしまったり、ターゲット市場での価格が高くなりすぎて顧客の許容範囲を超えてしまったりするリスクは念頭に置くべきだが、「低価格で高品質なものを買える」というコストリーダーシップ戦略を強みとする大企業と並んで市場で存在感を示すためには、ターゲット市場を業界全体ではなく、特定の範囲に限定することが有効である。

自社に合ったマーケティング戦略を吟味せよ

戦いを略すと書いて「戦略」。マーケティング戦略においては“いかに戦わずして自社が優位に立てる場所とその方法を見極める”ことができるかどうかがポイントになる。

市場動向や顧客の購買心理を常に理解しておかなければ、企業として生き残ることは難しい。理解が浅いまま流行りのマーケティング手法に手を出したり、市場の変化や競合他社の動き見逃したりすれば、マーケティング戦略は失敗に終わる可能性が高い。

常に市場や顧客の動向にアンテナを張って、優れたマーケティング戦略を実践すれば、資本の少ない中小企業でも特定に市場で優位性を確保できるはずだ。顧客視点のマーケティング戦略は、中小企業の得意分野だ。自社商品で課題を解決できそうなターゲットを想像しながら、市場を探るところから始めてみてはいかがだろうか。

文・THE OWNER編集部