経営者の公私混同は、深刻な経営リスクにつながることをご存じだろうか。本人にその自覚がなくても、社内での信用を失うような経費精算をすると、多くの社員は退職を考えてしまう。健全な経営体制をつくるために、社員から信用されるコツを押さえていこう。

目次

  1. 経営者の公私混同がダメな理由
  2. 経営者にありがちな公私混同の事例
    1. 事例1.プライベートの費用を経費で落とす
    2. 事例2.社員を巻き込むイベントを催す
    3. 事例3.会社の経費で取引先と趣味を楽しむ
  3. 公私混同を分けるコツは「社員の立場」で考えること
    1. 1.「同じことをした社員を許せるか」で線引きする
    2. 2.社員への投資を優先する
    3. 3.明確な評価基準をつくる
    4. 4.何よりも会社の成長を目指す
  4. 役員報酬と従業員給与も一つのポイント
  5. 家族経営では徹底したガバナンス強化が必要に
  6. 役職・階級に左右されない公平な仕組みづくりを目指そう
経営者の公私混同はダメ。ゼッタイ。社員から信用されるたった一つのコツ
(画像=BBuilder/stock.adobe.com)

経営者の公私混同がダメな理由

経営者の公私混同がNGな理由は、社員の信用を失う点だけではない。以下のようにさまざまな弊害があるため、公私混同の度合いによっては会社の倒産リスクが上がってしまう。

<経営者による公私混同の弊害>
・本業や社会貢献への関心が薄れる
・銀行や税務署から指摘されるリスクが高まる
・会社全体のモラルが低下する

例えば、融資を行う銀行や税務署などは、財務諸表の内容を細かくチェックすることで知られる。もちろん経費も調査対象であるため、そこに経営者個人の支出が含まれると、厳しく追及される可能性が高い。

また、公私混同が社内に知れ渡っている場合は、会社のモラルが低下することもある。「社長もやっているから」と考える社員が増えれば、不祥事や不正が起きることは想像に難くない。

つまり、経営者の公私混同は会社の信用を落とすため、調達できる資金や売上の減少につながる。

経営者にありがちな公私混同の事例

中小企業や地方企業では、実際にどのような公私混同が見られるのだろうか。以下では、公私混同のありがちな事例を紹介する。

事例1.プライベートの費用を経費で落とす

オーナー兼経営者の企業では、プライベートの費用を公私混同するケースが見受けられる。経営に関するものであれば問題ないが、以下のような個人的費用を経費にすると、公私混同とみなされる可能性が高い。

<公私混同にあたるプライベートの費用>
・プライベートでしか乗らない高級車の購入費
・経営者が趣味で集めているコレクション品の購入費
・全社員が帯同しない家族旅行の費用 など

上記のような費用は、言うまでもなく経営者個人が負担すべきものである。場合によっては脱税にあたるため、プライベートとビジネスは明確に線引きしておきたい。

事例2.社員を巻き込むイベントを催す

お金ではなく「立場」を公私混同するケースも、経営者が注意したい事例である。

例えば、仕事終わりの飲み会や食事会、休日のゴルフなどは、人間関係や立場によって捉え方が変わる。経営者本人は楽しくても、これらのイベントを「仕事」と感じている社員がいるかもしれない。

仮に自由参加であったとしても、社風によっては拒否権がないこともある。ひとり一人の本音を聞き出すことは難しいため、社員を巻き込むようなイベントは慎重に計画したい。

事例3.会社の経費で取引先と趣味を楽しむ

取引先が係る経費は、基本的に接待交際費としての計上が認められている。しかし、以下のように「趣味」の意味合いが強いと、社員からは公私混同に見えてしまうため注意が必要だ。

<公私混同に見えやすい接待や交際>
・個人的な友人との食事会
・二次会(カラオケやキャバクラなど)の費用
・新たな取引につながらないゴルフ など

法律上は問題がなかったとしても、経営者だけで経費判断をすると社員から反発されやすい。このようなリスクを防ぐには、「社員がどう感じるか?」を考えて行動する必要がある。

公私混同を分けるコツは「社員の立場」で考えること

経営者の公私混同を分けるコツは、判断基準を「経営者個人」から「社員」に変えることである。常に社員の立場で考えれば、個人的費用を経費にする考えは生まれないはずだ。

具体的にどのような対策が有効なのか、以下で一つずつ確認していこう。