中小企業,福利厚生
(画像=ITTIGallery/Shutterstock.com)

令和元年6月3日、【金融審議会市場ワーキング・グループ報告書】が発表されてから世の中の将来に対しての不安感と、資産運用、特に金融資産を活用した資産形成に対しての関心度が一気に高まっており、メディアや金融庁や金融業者もその流れに乗るためのPRを活発に行っています。

そんな中、中小企業の社員の中でも特にアンテナが高い優秀な方ほど将来に対しての不安を強く感じている傾向があります。また経営者の中でも社員への想いが強い社長ほど社員や会社の成長のためにも何か会社としてできないかとおぼろげに考えているのです。

昨今、日本の企業は人手不足に悩まされている中、転職市場においては超売り手市場が続いている状況。優秀な社員が更なるスキルアップや将来不安などから高い年収を求めて転職してしまうケースが増えてきています。

社員数の少ない中小企業にとって優秀な社員の転職は経営に大きな影響を与えてしまい兼ねません。そんな状況を回避するためにも社員に対して金融教育を行う事を推奨します。

社員への金融教育を行うべき理由1:社員の資産形成を促し将来不安を和らげる

我々日本人義務教育で資産運用の教育を受けておらず、ほとんどの方が投資に関して非常に高いハードルを感じています。

「2019年8月29日日本銀行の資金循環の日米欧比較」によると、日本の金融資産全体の内、
現金預金の比率は53.3%、株・債券・投資信託の割合は15.2%となっている一方、、アメリカの比率は現金預金の比率は12.9%、株・債券・投資信託の比率は52.8%となっており、
いかに日本人がキャッシュ好きで投資嫌いかが読み取れます。

しかし、冒頭でもふれたように将来不安から投資を始めようと考える方が増えてきています。国は積立NISAやiDeCoなど長期投資を優遇する制度を推し進めてきました。

「今まで勉強してこなかった+投資に高いハードルを感じている」という方が投資を始めるとどうなるか。

高確率で陥るのが【金融機関の窓口に行って言われるがまま投資する】

という事です。多くの方が金融機関で投資商品を販売している方の事を「お金のプロ」だと思い込んで言われるがままに商品を買っているというケースをよく目にしてきました。

しかし金融機関で投資商品を販売している方はあくまで【営業のプロ】であり投資のプロではありません。彼ら彼女らは販売ノルマを課せられた商品を販売しているに過ぎないのです。

そういった実情があるにも関わらず多くの方が、知識がない事が原因で自分に本当に合った資産形成ができていません。

投資は自己責任です。自分や家族の価値観、家族構成、趣味、教育費、等々を考え分析し最適な手法は自分で決定する必要があります。
逆にそれができれば将来不安は解消され安心して前向きに働くことができるでしょう。

そういった学習や分析ができていないため資産形成ができていないにも関わらず、できていない理由を「年収が低いからだと思い込んで転職していく方も多くいます。

ある心理分析によれば、人は将来の自分の評価を甘く見る傾向があるようです。
「年収が上がればきっと自分は資産形成ができる」と思い込んでいる方が多いのです。

資産形成において金融リテラシーは必須です。
しかしハードルを高く感じている分、自ら学ぼうとする方は少数。
社員と共に成長する企業として、社員を大切に思っているならば是非、福利厚生としての社員向けの金融教育を実施し、社員に勉強するきっかけを作ってあげて下さい。

社員への金融教育を行うべき理由2:お金をきっかけとした人材育成に繋がり、人件費の効率が上昇

企業が福利厚生として金融教育に取り組むことによって社員の自主性を育み、人件費の効率を上げることが可能だと考えています。その理由は下記の4つです。

  • 1.自分自身の【お金】や【将来】と言えば、誰しもが関心のある身近な事なので勉強するモチベーションを作りやすい
  • 2.金融教育を通じて社会の事、経済の事、経営の事への興味付けになる
  • 3.金融教育を通じて、ビジネスパーソンとして学習し続ける意義を感じてもらえる
  • 4.お金の世界はすべて自己責任。したがって金融教育を通じて【自責】で考えられる人材の育成に繋がる

経営者は社員に対して支払った給与を是非有効活用して欲しいと考えている方が多いのではないでしょうか。
特に将来の成長を見越して行った昇給や、業績を反映したボーナスなどはなおさら。社員が受け取った給与を有効活用し、できれば個人の成長とそれに紐づく会社の成長に繋がってくれればと考えている方が多いでしょう。

企業経営をするにあたって人件費とは作業賃としての側面と、その社員個人や社員が成長する事に伴う事業の発展などに対しての将来の投資としての側面があります。その投資効率を上げるためにも上記のように考えるのは当然。

しかし、企業が社員に対して支払う給与は当然の事ながらその使い方については個人の自由です。資産形成に使おうが、学習などの自己投資に使おうが、旅行に使おうが、遊びに使おうがすべて自由。

会社として推奨はできても強制はできません。したがって人件費の効率性を上昇させるためには社員1人1人の自主性にかかってきます。

社員みんなが効率的に給与を使ってくれればいいのですが、実態はそのようにはなっていないようです。

文化庁の平成30年度「国語に関する世論調査」によると全国16歳以上の男女の読書量の内、47.3%が読まないと回答。総務省統計局の「平成 28年社会生活基本調査」によると有業者が「学習・自己啓発・訓練」に充てている時間は1日平均6分。いかに日本人が学習をしていないかが明らかになりました。

金融教育をきっかけとし、学習の意義を感じてもらえれば自主的に学習する社員を増やすこともできるでしょう。

また金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯)平成30年調査結果」によると、年収別の金融資産非保有者、つまり貯金ゼロの割合は300万円未満で34.8%、300~500万円未満で19.4%、日本の平均世帯年収である500~750万円未満で12.6%、750~1,000万円未満で9.6%、1,000万円~1,200万円未満で7.3%、1,200万円以上で3.8%となっています。

年収が上がれば上がるほど貯金ゼロの割合は下がっては行きますが、平均年収の世帯でも約12.6%が貯金ゼロ、750万円以上の世帯でも約1割が貯金ゼロ。
つまり社員の年収を上げたからと言って全員が自主的に資産形成を行い、経済的な豊かさを手に入れてくれるとは限らないという事です。

さらに総務省統計局の「家計調査報告(貯蓄・負債編)2018年平均結果」によると平均貯蓄額91万円の第Ⅰ階級では有価証券の割合が2.2%、そこから徐々に増えていき、平均貯蓄額5,294万円の第Ⅵ階級では有価証券の割合が17.7%と、8倍の差がついています。
貯蓄額が多い世帯ほど有価証券の割合が多くなっています。つまり金融リテラシーが高い方ほど資産形成ができていると読み解くことができます。

(提供:税理士法人M&Tグループ