日本政府が「DX」(デジタルトランスフォーメーション)や「働き方改革」を推進していることもあり、多くの民間企業がペーパーレス化に取り組んでいる。しかし、一部の企業ではペーパーレス化がうまく進まず、「我が社では無理」と諦めてしまうケースもある。
この記事ではペーパーレス化に失敗する典型的なパターンを4つ紹介した上で、ペーパーレス化を成功させるための4つのステップも解説していく。
目次
ペーパーレス化のメリットは?
まずペーパーレス化のメリットについて整理しておこう。ペーパーレス化には業務効率と生産性の向上や経費の削減のほか、人材採用の面でもプラスの効果がある。
業務効率と生産性が向上するのは、紙で資料や書類をやりとりする必要がなくなるため、在宅や出張先などでもリモートで会議に参加しやすくなり、かつ紙で資料を用意するための手間もかからなくなることなどが理由だ。
また、資料を紙で印刷しないようになれば、印刷コストも抑えられ、経費削減につながる。高性能な印刷機を社内に設置する必要もない。また新卒人材などにとっては、ペーパーレス化が進んでいることは求職先を探す際の加点ポイントとなり、人材採用の面でもメリットがある。
しかし、ペーパーレス化はこのようにメリットがかなり多いのにもかかわらず、思うように取り組みが進まない企業もある。
ペーパーレス化に失敗する4つのパターン
ペーパーレス化の失敗パターンは大きく分けて4つある。
肝心の経営者がペーパーレス化に後ろ向き
まずは経営者がペーパーレス化に後ろ向きであり、なかなか社内全体でペーパーレス化の機運が高まらないケースが挙げられる。特に50~60代の経営者の場合、長く紙を使って業務を行ってきたこともあり、つい部下などに紙で資料や書類の提出を求めがちだ。
最初にペーパーレス化の推進計画を立てていない
経営者がペーパーレス化に前向きでも、最初に取り組みの計画を立てなければ、思うようにペーパーレス化は進展していかない。
定期的な進捗チェックを行っていない
最初にしっかりと計画を立てたとしても、定期的に進捗チェックを行わなければ、計画倒れに終わってしまうケースが多い。1ヵ月、3ヵ月、半年、1年といった期間で、それぞれ達成すべき中間目標などを定め、その目標が達成されているのか確認する作業は必須だ。
ペーパーレス化のメリットを社内で共有できていない
企業で業務に取り組んでいるのは「人」であり、従業員のペーパーレス化のモチベーションが高まらなければ、なかなか取り組みは前進していかない。そのため、ペーパーレス化を進めることで、企業や従業員にとってどのようなメリットがあるのか、最初にしっかりと説明しておくことが肝心だ。
ペーパーレス化に成功するための4つのステップ
前述したような失敗パターンに陥らないために、ペーパーレス化を確実に成功させるための4つのステップを説明する。
ペーパーレス化の計画を立てる
まずはペーパーレス化の計画を立てるわけだが、「タイムライン」を必ず計画の中に盛り込み、「マイルストーン」を設定することが必要だ。例えば書類のペーパーレス化においては、以下のように中間目標を決めていく。
・1ヵ月後:「全会議資料」のペーパーレス化
・3ヵ月後:「全稟議書」のペーパーレス化
・6ヵ月後:「全報告書」のペーパーレス化
ペーパーレス化の意義を社内で共有する
適切な計画を立てたあとは、社内でその計画を共有する際にペーパーレス化の意義やメリットをしっかりと従業員に伝える必要がある。失敗パターンの説明でも触れたが、肝心の従業員のモチベーションが高まらなければ、なかなか取り組みは進んでいかない。
コツは、企業としてのプラス効果を伝えるだけではなく、個々の従業員にとってもメリットがあることを説明する点にある。例えば、生産性が上がることで業績が向上し、従業員の給与やボーナスの底上げにもつながってくることなどを伝えるようにしたい。
経営者がまず姿勢を変える
経営者自身がペーパーレス化にしっかりと向き合うことが非常に重要だ。ペーパーレス化の計画における中間目標の達成時期を待たず、前倒しして自身でペーパーレス化を進めていくと、社内でもペーパーレス化の機運が高まっていく。
特命チームを組織し、定期的な進捗チェックを
定期的な進捗チェックを行うために、ペーパーレス化の「特命チーム」を社内で新たに組織し、計画に対してどれくらい達成されたのかを継続的に確認できるようにしておくといい。進捗状況を社内で共有する際には、もちろん紙ではなくデジタル資料で報告をするようにしよう。
生産性の面で不利にならないために
日本国内でも多くの企業がペーパーレス化に乗り出す中、自社で取り組みが進まなければ生産性の面で不利な戦いを強いられることになる。取り組みが不十分な企業の経営者は、早めに対策に着手したい。
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文・岡本一道