APIとは、Application Programming Interfaceの略称です。異なるWebサービスやシステムのあいだでデータを連携する際に多く使われています。 新しいサービスやプログラムを立ち上げる際に「このサービスに他社のデータはAPI連携できるのだろうか」と耳にすることがあります。しかし、APIをインターネットで検索しても、具体的な仕組みやメリットがわかりづらく、困ることもあるのではないでしょうか。 そこでこの記事は、APIの基本的な情報を調べてまとめてみました。他社や金融業界での活用事例や活用方法もあわせて見ていきましょう。
目次
「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。
APIとは
APIは、もともとコンピュータ用語です。コンピューターはあくまでも箱であり、実際に何かをするのはプログラムです。そのプログラムに何かしらの方法で命令やデータを与えなければいけません。そして、プログラムと人間の橋渡しをしたのが、キーボード、マウス、ディスプレイ、スピーカー(出力)などで、これをインターフェースといいます。
キーボードやマウスを使ってどのように入力をすれば、どのような出力を返されるのかといった定義が最初のAPIです。Windowsのプログラムを作った人にとっては、Windows APIは馴染みの深いAPIではないでしょうか。こちらは他のソフトウェアの機能やデータを呼び出したり、入力できたりするAPIで、ソフトウェア開発の際に頻繁に利用されていました。
インターネットの普及と共にAPIも拡大していく
インターネットとWebが普及すると、より豊富な情報を得ることが現実的になります。
「他のサービスで提供されている情報を自社のサービスにつなげると、もっとインターネットは便利なものになるはず」こんな発想から、インターネットを通じたWebサービス提供のレベルにもAPIを利用しよう、というアイディアが登場するようになりました。
旅行なら、ホテルと交通機関の予約情報・滞在先のレストラン情報などが1枚のスクリーンで把握できると、利用者は便利です。また、情報提供者も自社の情報にさらに付加価値をつけられます。
しかし、実際にはAPIの仕様が乱立してしまい、なかなか統一的な仕様でAPIを活用できませんでした。各業界で様々な努力がなされ、活用できるようになるには10年以上の歳月を要しました。
金融業界のAPIがオープンになった背景
近年、金融業界でもAPIはホットな話題です。特に、銀行口座残高の照会や、入金や支払いといった口座残高の更新情報をAPIの利用により外部公開することが活発化しています。クラウド会計・家計簿アプリなどへの活用をご存じのことでしょう。
EUや日本では、銀行のネットバンキングのAPIを銀行外から利用できるオープンAPIにするよう、法律で義務化しました。
APIのデータの連携は、銀行のIDやパスワードを、APIを利用するサービス側に渡す必要はないためセキュリティの面でも安全です。そのため外部サービスでの金融情報のデータ利用に向いています。
「APIを開示できるようにしておけば、金融情報を安全にサービスに使える」。これがオープンAPIの義務化のベースとなる考え方です。
APIの仕組み
APIは、リクエスト=要求とレスポンス=応答で構成されます。
次のようなプロセスでデータを外部サービスから利用できます。
- 要求者=APIの利用者が、他のサービスのAPIにアクセス、呼び出し
- 応答者=APIの提供者が、許可した範囲のデータを受け渡す
リクエストに対してどのようなレスポンスを返すかは、API提供者があらかじめ設計する際に考えておき、実装を行います。
APIを利用するメリット
APIを利用すると利用者側・開発者側それぞれにメリットが生じ、サービス提供者によるサービスの充実・ひいてビジネスの改革につながります。
利用者はさまざまなサービスを効率よく使える
利用者の目から見ると、他社のサービスで入力したユーザ情報を自社のサービスで使用できることがメリットです。
例えば金融業界では、ECサイトのWebサービスでクレジットカードの情報を入力するとクレジットカード会社のAPIを通じて決済できます。
これにより、利用者は別にクレジットカード会社に接続して、パスワードを打ち込んだりする手間をかける必要がなくなるため非常に便利です。会社としても利用者の利便性を向上させられます。
開発にかかるコストを削減できる
こちらはサービス開発者にとってのメリットです。サービス開発者が開発したい機能のプログラムがAPIで公開されている場合、データの連携機能を活用して一からプログラムを作成する手間が省けます。開発コストの削減やサービスリリースまでの時間の短縮につなげることが可能です。
新しいビジネス改革につながるケースもある
こちらもサービス開発者にとってのメリットで、APIを通して他社サービスのデータを使用すれば、顧客が持つ特徴や傾向などの情報を把握できる可能性があります。これをうまく活用することで、新しいビジネスに発展することもめずらしくありません。
APIにはさまざまな種類がある
金融業界で利用に期待がかかるAPIにはデータの出入力のほか、データ保管・翻訳・決済・あるいは機械学習など多彩な機能を提供できるものがあります。
APIの活用事例
なかでも著名なAPIの活用事例として、SNSのサービス種別を超えた登録情報の連携、YouTube動画の埋め込み、Google Map情報の提供による集客・顧客の誘導などがあげられます。
活用事例1:Facebook API
Facebook APIは、他のサイトの記事のシェア・データの読み取りが可能な機能があります。なかでも、FacebookとInstagramのSNS連携では、ユーザの登録情報の共有ができて、ユーザは都度入力する手間を省けます。
また、ビジネスユーザはそれぞれのサイト・個別広告からの流入オーディエンスの数など、必要な情報のシームレスな利用が可能です。効果測定から広告の改善や、コンテンツの改善につなげられます。
活用事例2:YouTube API
YouTube APIは、動画の効果測定やチャネルデータをまとめて取得する際に便利です。いつ誰がどこで動画を見ているか把握・計測できます。
例えば、自社のサイトやサービスから、YouTubeの動画広告や提供コンテンツにユーザを誘導、その効果測定までデータ活用が可能です。
動画は閲覧する人が増えているので、今後YouTube APIを活用するケースが増えることが予想されます。
活用事例3:Google Map API
Google Map APIを使うとWebサイト上でGoogleマップの表示ができるうえ、高解像度での地図・ストリートビューが可能です。
例えば、飲食店を営むユーザがGoogleマップで潜在顧客に位置情報を知らせることで、スマホをもった潜在顧客を誘導できます。ストリートビューで経路誘導を行ったり、店の外観の雰囲気を伝えて集客効果を狙ったりする方法もあります。
金融業界におけるAPIの活用事例
金融業界におけるAPIの活用事例としては、クラウド会計・PFM(Personal Financial Management)サービス、電子マネーやQRコード決済へのチャージがあります。
PFM(マネーフォワード、freee)
クラウド会計や家計簿アプリのようなPFMサービスでは、金融機関のデータを帳簿や家計簿に反映できます。具体的には、マネーフォワードやfreeeといったサービスがこれに該当します。
複数の銀行口座やクレジットカードがあると、自分の家計の全体像を把握できないケースがあるでしょう。しかし、マネーフォワードのような家計簿サービスはすべての情報を取ってきて、合計金額やグラフで見える化できます。また、法人であれば同様のサービスをfreeeのような会計ソフト会社が提供しています。
電子マネーやQRコード決済へのチャージ
電子マネーやQRコード決済の際には、事前にチャージする・銀行口座と連携させて、引き落とすなどして残高をチャージする必要があります。スマホ上のウォレットにバリューチャージする際に、クレジットカードや銀行口座からチャージできるのもAPIを利用しているためです。
APIの活用方法
続いて、APIの活用方法を見ていきます。
例1:人気のサービスにあやかってユーザの顧客満足度を向上させる
人気サービスにはいち早くAPIを提供、データ・機能連携に対応することにより、自社と他社とで差別化することが考えられます。「あやかり」人気を利用することにより、顧客満足度の向上を狙えるでしょう。
例えば、米国では銀行APIのオープン化が法律で義務づけられていません。しかし、Venmo(スマホ送金)やAffirm(BNPL)が使えない銀行は相対的に人気が落ちてしまいます。そのため、米国は一斉に人気サービスへAPIを開放する傾向にあります。
日本でも主要なクラウド会計サービス・PFMの人気がさらに上がってきたときに、対応していない銀行の人気は落ちてしまうかもしれません。
例2:銀行以外の企業に銀行サービスを黒子として提供する
例えば、宅配サービスや、小売サービスのアプリに黒子として銀行サービス(決済・送金)の機能を一緒に提供するなどの場面でAPIを活用する方法です。宅配サービスや小売サービスには、「BaaS」や「Embedded Finance」といった形で金融サービスが組み込まれています。これを実際に可能にしているのが金融APIなのです。
「BaaS」や「Embedded Finance」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
例3:新たに出てきたサービスに実験的にAPIを提供する
例えば子どもは自分でお金を預けたり、金融商品を購入したりしないため銀行の主要顧客ではないと見なされています。しかし、海外では子ども向けのサービスを提供するFinTechが多数出てきています。
例を挙げると、JP Morgan Chase は当初、Greenlightという子ども向け金融サービスを提供しているFinTechに、JP Morgan ChaseのAPIを提供して、自行の口座とGreenlightの連携だけを行っていましたが、その後、自身でもChase First Bankという子ども向けサービスを開始しました。
今後は日本でも海外で評判のサービスなどのニーズに注目し、試験的にサービスを提供して反応を見ていくとよいかもしれません。
APIを活用する際に気を付けるべきポイント
企画者の観点では自社のAPIを外部に提供することと、外部のAPIを自社のサービスに利用する双方の在り方が考えられます。
安全性の問題を考える
自社以外のAPIサービスを使うとき、気を付けるべき点としては安全性の問題があります。
APIは仕組みから適切に管理すれば、比較的に安全なデータ連携を可能にする仕組みです。
ところが、外部の環境の問題として、サイバーアタックの問題がより複雑・悪質化していること、API間でどこまで安全対策をしているかに差があることなどから、もう一段上の安全策をとる必要があるかはよく検討するべきです。
さまざまな角度でAPIを活用した効果を考える
APIの利用によって自社のサービスが有効に使えるか、既存のAPIだけで効果を得られるか、あるいは新たなAPIを作った方がより効果的かなど、いろいろな角度で効果を考える必要があります。
利用者の利便性を高めながら、選んでもらえる金融機関のサービスをつくることを目指していきたいですね。
APIの活用は利用者だけでなく、企業にとってもメリットがある
APIの活用は利用者の利便性を上げるものです。また連携するデータの管理を行う企業など、他社サービスの利便性も上げるものも存在します。金融機関にとっても新しいサービスやビジネスモデルの可能性が広がることもあるでしょう。
また、APIは顧客動向の把握にも役に立ちますので、利用者の「こんなサービスがあったらいいな」を実現するカギとなります。海外の事例・外部環境にも気を配りつつ、利用者の満足度を上げる活用法を考えてみませんか?
※本記事の内容は、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。
※記事中の所属・役職名は取材当時のものです。