パソコンやスマートフォンの普及に伴い、さまざまな場面で情報収集やデジタルを利用したサービスが普及しました。便利になった反面、新しい技術を使える人と利用できない人の間に情報の格差が生まれ、世界的な問題となっています。今回デジタルデバイドとは何か、種類や原因・問題点や金融サービスへの役立て方を見ていきます。
目次
「Now in vogue」は、ちょっと気になる世の中のトレンドや、話題の流行語などについて、少しライトな内容でお届けする企画です。
デジタルデバイドとは
インターネット格差と呼ばれ、問題となっているデジタルデバイドですが、どのような意味で使われるのでしょうか。
インターネットにおいての格差
デジタルデバイドは、情報格差を表す時に使う言葉です。パソコンやスマホ・ICT (情報通信技術)などを使える人と利用できない人との差が大きく開き、世界で深刻な問題となっています。デジタルを利用できないことで不利益を被り、世界的には貧富の差にもつながっています。
日本におけるデジタルの現状
日本でのインターネットをつなぐための回線整備は、順調に進展が見られます。しかし、デジタル競争力や電子政府に関する国際指標では低評価。その原因として、人材不足の影響が大きいようです。 年代別においては若い世代ほどデジタル利用が活発です。一方、高齢者の利用率は低く、70歳以上では利用していない人の割合が50%と顕著にあらわれています。デジタルデバイドを防ぐためにも、国では「誰一人取り残さない」デジタル化の実現に向けて取り組みがなされています。
デジタルデバイド3つの種類
デジタルデバイドは大きく3つの種類に分類されます。それぞれの特徴をおさえることで、デジタル格差を考える上での指標になることもあります。一つずつ見ていきましょう。
国際間デジタルデバイド
国際間デジタルデバイドとは、先進国と発展途上国の間に生じる情報格差のことを指します。要因は、インターネットやパソコンを利用するためのICT(情報通信技術)のインフラ整備がされていないという問題があるからです。そのため教育格差が生まれ、IT人材が育たないことが課題となっています。国際予算が足りない・企業の導入コストがかかりすぎるという根本的な原因もあります。
地域間デジタルデバイド
以前だと、地域によってはインフラ整備がされておらず、光回線が入っていない地域も見受けられました。しかし、2021年現在、日本のインフラはほぼ整っているので、地域間のインフラ格差は感じにくいこでしょう。しかし、人が集中する都市部には情報も集まりやすい傾向にあり、地方と都市部での情報格差は広がりがあるようにも見受けられます。
個人集団間デジタルデバイド
個人集団間デジタルデバイドは、年齢・性別・学歴・所得などにより生じる情報格差です。高収入であったり若い世代だったりすると、ICTリテラシーが高い傾向にあります。また、さまざまな年齢や性別・人種の人が集まった方がより情報は豊かになるでしょう。
デジタルデバイドの原因
デジタルデバイドが広がる原因はインフラの整備や情報・収入の格差など、主に4つあります。詳しく見ていきましょう。
ITインフラや人材不足
ITインフラについて、たとえばミャンマーでは水力発電が8割で、電力量は雨量により左右されます。2019年は重度の干ばつにより、発電量が減少。電力インフラそのものが不安定になることで、通信環境も利用しづらくなっていました。
日本のインフラは整っていて、例えば停電しても翌日には復旧することが多いのでしょう。ただ、IT人材の不足に関しては深刻な問題となっています。特に地方での人材不足は顕著で、優秀な人材は若いうちから都市部へ流れてしまう点が問題です。
教育格差
教育格差がデジタルデバイドの要因となる可能性もあります。収入が高いと幼少期から最新のデジタル機器に触れる機会が多く、その分ITリテラシーが高くなると言えます。そういった収入の格差によるデジタルデバイドをなくすため、公立小中学校では「GIGAスクール構想」が開始され1人1台パソコンを支給されるようになりました。
収入の差
インターネット利用の収入格差は課題です。全体で見ると、スマートフォンを中心としたインターネット利用率は上昇。所得別で見ると、年収が1,000万円を超える世帯では利用率が90.3%であるのに対し、年収200万円以下の世帯では54.4%と大きな差が出ています。
年齢による情報格差
近年、高齢者の間でもスマートフォンの普及は加速しています。通信環境化においてはいつでも情報収集ができるので、情報格差は狭まっているようにも感じられます。しかし、どの世代でも言えることですが、属しているコミュニティ内で使わないから知らないなどといった現象も起こり、情報格差に繋がっているようです。
デジタルデバイドの企業へ与える問題点
デジタルデバイドは情報格差を与えるだけではなく、あらゆる問題を引き起こす場合もあります。
デジタル弱者の孤立
PCやITツールを使いこなせる人とそうでない人の間では、デジタルデバイドが影響して、業務が効率的に進まない課題が見られます。これは、単純に知識の問題で使えないだけでなく、知識があっても費用や身体的な支障により使えないこともあり、孤立してしまう問題があります。そういった人にも配慮できるような環境づくりが大切です。
セキュリティリスクの拡大
デジタル機器やIT技術が進み便利になる一方で、セキュリティ問題が増える可能性が考えられます。デジタル環境が進化・発展し、今まで利用していたセキュリティシステムでは対応できなくなった時に、そこに精通した人材が確保できていないと、リスクが高まる危険性があるのです。
生産の非効率化
デジタルデバイドによる生産性の低下が問題視されています。デジタル機器が使えない人材が多いと、1つの機能を使おうとするだけで多大な時間がかかる可能性があり、業務効率が悪くなるからです。ITを活用できないことで従業員に不満が溜まることも考えられます。業務に手間がかかり、時間を効率的に使えず離職率が上がるかもしれません。生産性だけでなく、従業員の満足度という面でもデジタルデバイドの解消が求められます。
金融業界におけるデジタルデバイド解決策
企業や金融業界におけるデジタルデバイドの解決策を具体的な例を交えて調べてみました。
IT人材の育成
古くからあるOJTを行う上でも、IT機器があることがもはや前提なので、実際の機器やアプリケーションを使って業務を学びます。同様にマニュアルやeラーニングは具体的な仕事のアプリケーション画面を豊富に使う工夫も必要でしょう。
地方におけるリモートワークの推進
デジタルデバイド対策として、リモートワークしたい人を支援するような取り組みが行われている徳島県の例をみてみましょう。徳島県では誰でも気軽にリモートワークしたり、起業したい人を育成したりできるよう、場所を提供している施設もあります。また、有料会員制のコワーキングスペースの開設もあり、リアル会議やWEB会議などにも対応。IT人材を育成するようなプロジェクトも進められているようです。
このようにリモートワークが進めば、場所に依存せずに広い範囲から人材を雇用できるでしょう。
キャッシュレス化の定着
金融業界においてはデジタル化が進んでいるため、キャッシュレスや新機能の利用方法が分からない人に対して、丁寧な対応が重要です。「業務の効率化を進める」ために窓口を閉鎖するのではなく、「顧客を手厚くサポートする」ために対面窓口を活用し、利用者に対して丁寧に接することで、業績を伸ばす企業も見受けられます。
デジタルデバイドによる影響を縮める努力が必要
デジタルデバイドとは情報格差を表した言葉です。理由がありITを使えない人が取り残されていくのは問題です。このままIT化が進んでいくなかで、少しずつデジタルデバイドのない世界にしていく努力ができると良いですね。
※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。