平阪靖規氏

補助金や助成金は、中小企業や小規模事業者の資金調達手段の一つだ。様々な種類や規模のものがあるが、手続きや管理の煩雑さもあり、各事業者が十分に活用しているとは言い難いのが実情だ。コムラッドファームジャパンが運営する「補助金の右腕」は、補助金・助成金の申請から採択後のフォローまで、あらゆる側面で企業をサポートしている。今回は、自身も中小企業診断士である代表取締役の平阪靖規氏に、補助金や助成金について詳しく伺った。

▽お話をお聞きした人

株式会社コムラッドファームジャパン

代表取締役/中小企業診断士 平阪靖規氏
2012年4月に中小企業診断士登録し、1年間の企業内診断士活動を経て2013年4月に独立。2014年10月に株式会社コムラッドファームジャパンを設立し代表取締役に就任した。マーケティングの専門家として多くの会社の売上向上のための戦略立案・実行に従事。その他、創業支援・新規事業立上・中小企業施策活用など様々なコンサルティング業務を行なっている。

――まず、補助金や助成金とは何なのか、教えてください。

簡潔に言うと、国や行政が中小企業の事業を後押しするためにお金を提供するというものです。

都道府県や市区町村などの地方自治体も、それぞれの政策課題などに合わせた補助金を出していますので、すべてを合わせると相当数の補助金や助成金があります。また、財団などが独自に予算を確保し、ベンチャー企業支援などの形で補助金を出すこともあります。

――補助金や助成金に対する中小企業の温度感はどのような印象でしょうか。

「申請すればお金がもらえる」程度に捉えている事業者さんが多い印象です。実際は簡単にもらえるほど甘くはありません。仮に受給できたとしても毎年、検査や監査を受ける必要があるなどいろいろなものを背負うことになりますので、それなりに覚悟を持って取り組むべきものです。

――では、経営者は戦略の中で補助金や助成金をどう捉えるべきなのでしょうか。

補助金や助成金には必ず要件があります。目的を知った上で、自分たちの事業にどう生かせるかを考えてほしいですね。「補助金をもらえれば助かる」ということではなく、事業が先にあり、そこにお金が付いてくるという順番で考えてもらえると、うまく生かせるようになると思います。

――受ける側のメリットを教えてください。

分かりやすいのは金銭的なメリットですね。何かに投資する場合、それが売上になって利益が出て、回収できるまでには一定の時間がかかります。それが一定の割合で補助金として戻ってくるというのは、どんな企業にとっても大きなメリットだと思います。

また、申請する際は必ず事業計画書を作成して提出しなければならないので、申請を機に事業に対する本気度が高くなり、成功に繋がる事業者さんもいらっしゃいます。こうしたプロセスを踏めることは、目先の投資を回収する金銭的メリットよりも大きいと思います。

――補助金の右腕で主要補助金として紹介しているものについてご説明をお願いします。

「事業再構築補助金」は、コロナ禍の中で設立された補助金です。既存事業の売上が減った企業を対象に、コロナ禍の影響を受けない新規事業を後押しするものでした。2023年度からはコロナに関係なく、社会変化に対応しビジネスモデルを大きく変えるような取り組みをしたいと考える中小企業を支援する補助金に変わりました。

「ものづくり補助金」は、設備投資やシステム開発をして、新しいサービスや新規事業を立ち上げる動きをサポートする補助金です。また、既存事業の生産性を高める取り組みも支援してもらえます。

「小規模事業者持続化補助金」は名前の通り、小規模事業者に限定した補助金で、販路開拓をしたいときに申請できます。ものづくり補助金は広告宣伝費が対象外なのですが、小規模事業者持続化補助金は対象の幅が広いのが特徴です。

「IT導入補助金」は、システムを導入する際にかかる経費を補助金で賄えるものです。ソフトやクラウドサービスを提供している企業が申請の要件を満たすITツールやITソフトを登録していて、それらを導入する場合に限り補助金の対象になります。

「事業承継・引継ぎ補助金」は2つの側面があります。1つは事業承継をサポートする側面で、企業が代替わりし、新しい代表者が新規事業を興そうとしたときに、それにかかる経費を補助してくれます。2つ目はM&Aを活性化するという側面で、仲介会社やファイナンシャルアドバイザーを入れた際の手数料などの費用を補助してくれます。

――各企業が申請できる補助金・助成金の数に制限はあるのでしょうか。

種類が異なるものに関しては、基本的には複数の補助金・助成金を申請することができます。ただし、テーマが重なったもので補助金を複数もらってはいけないというルールがあります。例えば「商品Aを作る」というテーマで再構築補助金とものづくり補助金の両方の補助金を受け取ることはできません。商品Aは「再構築補助金」、商品Bは「ものづくり補助金」という形であれば問題ありません。また、事業再構築補助金は申請枠によっては1回限りですが、年度が変われば再度申請できる補助金もあるなど、それぞれにルールが定められています。

――課題やデメリットとしてはどのようなものが考えられるでしょうか。

厳しい目にさらされるところが一番のデメリットではないでしょうか。正しく使われているかどうかについて国や行政からいつチェックを受けてもいいように、書類などを適切に管理しておかなければなりません。中小企業さんの場合、管理が不十分で保管しておくべき書類を紛失してしまうこともあり、それが要因となって返金を求められることもあります。管理するための労力やコストが増える点は課題として意識しなければなりません。

また、スピード感を出しにくい点も課題です。補助金・助成金は概ね数ヶ月に1回程度のペースで募集がかかり、一斉に審査が行われ、採択結果が公表されます。ですから書類を準備して提出までに数ヵ月、そこから結果が出るまでに2〜3ヵ月かかり、スタートできるのは長いと1年先などになってしまいます。そのスピード感では他社に先を越されて事業にならないケースもあるでしょうし、補助金を軸にスケジュールを立てると時間がかかるというのは考慮しなければなりません。

――そうした課題を克服するために、企業側はどうすればいいのでしょうか。

申請には人と手間がかかります。選任者を置ければ問題はないのですが、難しい場合は申請のサポートをしてくれる認定支援機関に委ねる方法もあります。ただ、認定支援機関の中には、申請までのサポートのみで、採択後の対応はしていないところもありますので、どのフェーズまでサポートしてくれるのかを事前に確認し、自分たちの希望に合う認定支援機関に依頼するのがいいでしょう。ちなみに「補助金の右腕」は、申請後のケアも含めて対応させていただいています。

――「補助金の右腕」のサービスについてご説明いただけますでしょうか。

大きく2つのサービスがあります。1つは補助金の申請をして採択を取るための事業計画書策定を支援させていただいています。やりたいことをそのまま書けば採択されるわけではなく、補助金ごとに評価ポイントが違いますので、工夫すべき点、修正すべき点を指導しながら、採択される可能性の高い事業計画書の策定をサポートします。

2つ目は採択後のサポートです。補助金は基本的には先に事業を進め、成果を報告して初めてお金が支払われるシステムです。その際は事務局から厳しいチェックを受けることになりますので、各種書類の策定も含め、最後までフォローさせていただきます。

また、各事業者さんに適した補助金・助成金を探すサービスも行っています。調べても分からない、どんな補助金が出るのか知りたいという要望に対して情報提供をさせていただきますし、何をしたいか、いつ頃どのような設備投資をするかといった情報をいただければ、市区町村レベルの細かい補助金・助成金まで調べます。担当者全員が中小企業診断士の資格を持っている点も当社の特徴です。

――改めて、各中小企業は補助金や助成金とどのように向き合うべきなのでしょうか。

事業計画書の作成に手間がかかるとか、事務作業が多いとか、大変な部分はゼロではありません。ですが、「補助金を出すので使ってください」という制度を国が作ってくれているので、活用しないのはもったいないと思います。何をするにもお金は絶対に必要ですし、融資とは違って原則返済しなくていいお金です。適切な申請をして、経営の推進力に変えていただきたいですね。

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