食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品高値で価格差縮まる、モモはジリ下げ、ムネ横ばい推移か〉

4月の鶏肉需給は、引続きモモが不振となるなか、ムネやササミ、手羽先といったアイテムは堅調だった。モモは荷動きが芳しくなかったものの、相場は日経加重平均で月前半に790円台、月後半にかけては780円台と緩やかな下げにとどまり、実需とはかけ離れた相場展開が続いた。

一部では生鮮で売り切ろうと相場を大きく下回る価格で投げ物が散見され、それでも売り切れなかった分は凍結回しで対応せざるを得なかったようだ。一方、ムネは季節的にも需要が高まってくる時期となり、生鮮、凍結品ともに引合いが強く、月間を通して410円前後と横ばいでの推移となった。輸入品は国産の高止まりを受け、量販店向けの荷動きが良かったものの、ここにきて輸入品も高値基調となったことで価格差が縮まり、荷動きは一時期に比べて落ち着きをみせた。

この結果、4月の月間平均相場は、日経加重平均でモモが790円(前月798円)、ムネが410円(前月411円)とモモはわずかに下げたものの、高値が継続した。正肉合計では1200円(前月1209円)と2023年に入ってから1200円台を維持している。モモは例年、不需要期に伴い相場も下げ傾向となるが、2022年同月比ではモモが166円高、ムネで95円高と、モモでは160円以上、ムネも100円近く前年を上回る水準となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラー生産・処理動向調査によると、5月の生体処理羽数は2022年同月比2.5%増、処理重量が1.2%増とともに増加を見込んでいる。6月も羽数が2022年同月比1.3%増、重量0.4%増と予測し、今2023年春の増体は概ね順調に進んでいるようだ。産地別にみると、北海道・東北地区は羽数1.2%増、重量0.4%減と重量で微減を見込む一方、南九州地区は羽数3.5%増、重量2.4%増と増加する見通しだ。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、5月の国内生産量は2022年同月比2.4%増の14.3万tと前年を上回る生産量を見込んでいる。一方で、輸入量は14.9%増の4万8,800tと予測し、前年同月に従業員不足でタイ産の輸入量が1万t割れと極端に少なかった反動で2ケタ増を見込む。   ただ、ブラジル産、タイ産ともに現地価格が高止まり傾向にあるなかで、国内の需要環境を踏まえると調達を大きく増やす向きはなく、4万t台半ばから後半にかけて一定程度の水準で推移するものとみられる。

〈需要見通し〉
2023年のゴールデンウィーク期間中の荷動きは、観光地を中心に多くの人出がみられ、外食需要は堅調だったことが伺える。量販店では、大型連休は牛肉など比較的単価の高い商品の需要が高まるなかで、日常使いの鶏肉は、ムネを中心にマズマズの動きだったようだ。「連休前に手当てしていた分で十分足りた」(関東の卸筋)との声も聞かれ、連休が明けた今週の補充買いの動きはそこまで多くないようだ。

5月は消費者の財布の紐が固くなるなか、他畜種と比べて単価の安い鶏肉は安定した需要に支えられ、堅調に推移すると予想される。モモの相場が下げ基調になったいま、問屋筋では量販店の特売に合わせて売り込みをかけたいとの施策もあり、これにより相場はさらに下げる可能性も。

〈価格見通し〉
連休明けの5月8日は、日経加重平均でモモ792円、ムネ415円を付けたものの、翌日にはモモ779円、ムネ409円まで下げた。5月の相場は前述の通り、モモはジリ下げとなる半面、ムネは安定した需要に支えられるとともに、季節的にも引合いが強まってくることから、引続き横ばいでの推移が予想される。

このため、5月の月間平均は、日経加重平均でモモが770円前後、ムネが400円前後(農水省市況でモモ780円前後、ムネ410円前後)と予想する。ただし、モモは荷動き次第で荷余り感が強まれば、770円を割り込む展開も考えられる。

〈畜産日報2023年5月12日付〉