Mobility Storyでは連載【プロフォトグラファーが教える北海道の絶景「道の駅」】などを担当していますが、今回は別シリーズの冬の北海道、道東エリアを旅する方にオススメするモデルコースです。
金曜日に都内での仕事を終えた友人を新千歳空港でキャッチアップし、火曜日の昼には道東エリアの大空町にある女満別空港から見送るという4泊5日とややタイトなスケジュールながら、キャンピングカーで「ジュエリーアイス」「タンチョウ」「ラッコ」「オオワシ」「オジロワシ」「野付半島」「流氷」といった貴重な野生動物や絶景の大自然をまわる撮影旅行を計画・実行しました。
この道東の冬の絶景旅の様子を4回にわけてみなさんに紹介していきます。#3の今回は、旅の4日目です。
目次
【4日目】世界最大級の猛禽類が群で飛び交う「風蓮湖」へ
「氷下待ち網漁」が行われる1月下旬から3月上旬にぜひ訪れたい!
3日目の夜に、道の駅「スワン44ねむろ」に到着した筆者たち一行はここで仮眠をとって、翌日の朝からはじまる数十羽から数百羽の「オオワシ」と「オジロワシ」が乱舞する風蓮湖(ふうれんこ)の様子を撮影する予定です。
掲載した写真をみてもらうとわかるように、画面内だけで10羽程度のオオワシとオジロワシが乱舞しているのがみていただけると思います。翼開長が2m程度という世界最大級の猛禽類であるオオワシやオジロワシが、とんでもない数で集まるには、当然種も仕掛けもあるのです。
道の駅 スワン44ねむろに隣接する「風蓮湖」では、1月下旬から3月上旬にかけて「氷下待ち網漁」が行われます。氷下待ち網漁は湖の氷に穴を開けて、氷の下にロープを這わせ、そのロープに網を結んで投入し、この網を引いて行う伝統的な漁です。オオワシやオジロワシは、この漁の際に選別して漁師さんたちが置いていってくれる雑魚をねらって道の駅「スワン44ねむろ」周辺に集まっています。
また、漁師さんたちもオオワシやオジロワシが乱舞する姿を楽しみに観光客が集まっていることを知っているので、わざと道の駅から見やすいポイントで、ワシたちに雑魚を与えてくれているようです。ありがたい。
筆者が最初風蓮湖にワシたちを撮影しに訪れたときは、漁師さんたちが漁に出掛ける時間に合わせて風蓮湖にいないといけないなら、かなり早朝と考えて日の出前から現地で待っていました。
しかし、実際には、すっかり日が昇った後の早くて7時、8時くらいから漁師さんたちが出掛け、漁を終えて戻ってきたときにワシたちに雑魚を与えるので、実際に乱舞するワシたちを撮影するのは10時から午前中いっぱいといった感じです。当たり前ですが、天候や漁師さんの予定などでも変わるので、あくまで目安と考えてください。
また、「氷下待ち網漁」の漁期自体も毎年変わるので、根室市や別海町の観光課などに問い合わせてみるとよいでしょう。実は筆者はハクトウワシの撮影に同行してカナダのスコーミッシュまで行ったこともあるのですが、ワシたちの数では風蓮湖のほうが多く感じました。
見たこともないような距離で翼開長2mクラスの猛禽類が乱舞する姿が見られる、この時期の風蓮湖はぜひ多くの方にご覧いただきたい道東の大自然といえます。
道の駅「スワン44ねむろ」
・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/doto/swan44nemuro/
・公式HP:https://www.swan44nemuro.com/
【おすすめ撮影アイテム】レフレックスレンズを持っていくのもいいでしょう
筆者たち一行のように「写真を撮るのが目的なのだから、機材なんてどんなに重くても構わない」という人たちは少数派でしょう。せっかく旅行に行くなら身軽な格好で足取り軽くあちこち見て回りたい、そして、それでも野生動物たちの姿をしっかり写真に残しておきたいという方が多いと思います。
「そんな都合のよいレンズはありません!」と言いたいところですが、最近はそうでもないのです。2022年末にクラウドファンディングサイトで発表されたTokina(トキナー)のレフレックスレンズは、レンズ構成にミラーを使用した望遠レンズで、一般的な光学レンズだけで構成された望遠レンズよりも劇的に軽いレンズを作ることができます。
ケンコー・トキナーからは「Tokina SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF」「Tokina SZ 600mm PRO Reflex F8 MF CF」「Tokina SZ 300mm PRO Reflex F7.1 MF CF」の3本が発売されているのですが、重量はなんと725g、545g、235gと数kgということが多い超望遠レンズとは思えないサイズと重量なのです。
レフレックスレンズの構造上の問題から、オートフォーカス(AF)化が難しく、マニュアルフォーカス(MF)レンズですが、飛んでいるときを別にすると、前回の記事で紹介したタンチョウも、オオワシやオジロワシも冬はカロリーをセーブするためか、意外と動かないのです。そのため下に掲載した写真のようにMFでも撮影できてしまいます。
高性能で重い一般的な超望遠レンズに比べるとシャープネスが弱いといった弱点もありますが、北海道の旅行の際に持って行くなら超軽量でコンパクトなレフレックスレンズも選択肢として考えてみるのもありでしょう。
Tokina SZ 900mm PRO Reflex F11 MF CF
海の凍る「野付半島」は野生動物の楽園
普通の場所では考えられない風景が連続して現れるのが楽しい
根室や風蓮湖まで来たら、必ず寄りたいのが「野付半島」です。道の駅「スワン44根室」から国道244号線を約1時間北上すると、日本最大の砂嘴(さし)である野付半島の入口に到着します。ちなみに砂嘴は沿岸流に運ばれた砂が静水域で堆積して形成される嘴型の地形だそうです。
この野付半島ですが、野生動物などが多く生息しバードウォッチングなどでも有名ですし、浸食された砂嘴のあった林が立ち枯れたまま残り、この世の終わりのような荒涼感のある風景が人気の観光スポットになっています。
夏でも人気の観光スポットなのですが、冬は砂嘴に囲まれた野付湾が凍結するため半島内を走る北海道道950号線を走っていると海に突き出た半島を走っているのに、行きは左側の海が、帰りは右側の海が凍結し、逆側の凍らない海には状況によっては流氷と北方領土の国後島が見えるという幻想的な風景が広がります。
筆者たちは半島の付け根からクルマで約15分の「野付半島ネイチャーセンター」にクルマをとめて、立ち枯れたトドマツの林が見えるトドワラまで徒歩で向かいます。ネイチャーセンターには、その日の野生動物の出現状況が詳細に紹介され、ネイチャーツアーなども用意されています。
また野付半島に入ると道路沿いには、人間よりもエゾシカのほうが完全に多いレベルでシカたちが出現。大きな個体では200kg近くなるエゾシカとの交通事故はクルマが全損することも珍しくないので、走行には注意が必要です。
毎年のように野付半島に行くのですが、不思議なのが「海は凍らないはずなのに……」です。気になって調べてみると野付湾は野付半島に囲まれた波の弱い内海だからだといいます。確かに半島の逆側の海はまったく凍っていません。さすがに北海道でも海が凍るのは、野付湾くらいだそうです。
ネイチャーセンターからトドワラへの遊歩道は、野付湾に向かって歩くことになるので、雪原との見分けは付きづらいですが、上に掲載した写真のように凍った海を眺めながら進むことになります。 風景を眺めているうちに「なんで、ここにはなんにもないのだろう」となりますが、凍っているだけで海面なので当たり前です。
ちなみにネイチャーセンターからトドワラまでは徒歩で片道30分程度。往復でも1時間程度なのですが、筆者たちは到着したのが14時前と遅かったのもあるのですが、珍しい風景や動物たちにひかれて、あちこち撮影しながら、歩いたため帰り道には凍った海の向こう側に沈む夕日を撮影することもできました。
野付半島は道民の筆者でも普段の生活では目にしないような光景が次々に現れるので、ぜひ訪れてもらいたい冬の絶景スポットになっています。
北海道では絶対味わいたいグルメ系ローカル回転寿司
中標津の「根室花まる」はぜひ立ち寄りたいおすすめの回転寿司
北海道に来たら、ぜひ食べたいものといえば「寿司」でしょう。筆者たちも、寿司を楽しみにしていたわけです。そして、北海道で手軽でおすすめのお寿司は「回転寿司」です。それも「グルメ系ローカル回転寿司」。
何を言っている? と思われる方も多いでしょうが、国土面積の約1/4を占め、小さめのヨーロッパの国よりも広い北海道には、それぞれの地方ローカルからはじまったローカル系の回転寿司が多くあります。そのなかでも100円寿司がメインではなく、塩水うにやボタンエビ、地元の新鮮なネタまでもを扱うグルメ回転寿司は、多くの道民が愛するおいしいお寿司屋さんなのです。
ちなみに札幌などの一部の都市圏を除くと、基本的にクルマ移動なので、回転寿司もラーメン屋も大きな駐車場を備えた店舗が一般的。しかも家族連れでもお寿司が楽しめるように、レーン(カウンター)に隣接したボックス席で、できたて、すぐのお寿司をいただくのが北海道の普通です。
そんなローカル系グルメ回転寿司のなかでも、道東の根室に本店がある「根室花まる」は道民にも人気のお店。道南函館であれば「函太郎」、筆者の住む千歳周辺なら「旬楽」、北見生まれの「トリトン」、釧路No.1の「なごやか亭」など、北海道のローカル系グルメ回転寿司は本当にハイレベル。札幌などには、各系列の支店などがあるので、食べ比べもいいかもしれません。
ちなみに流氷の撮影に来るたびにほぼ毎回「根室花まる」の「中標津店」に寄る理由は、安くておいしいという当たり前の理由もあるのですが、実はこの辺りにGoogle マップなどで検索する限り100kmレベルでほかの回転寿司がないのです。ある意味「根室花まる 中標津店」は砂漠のオアシス的なローカル系グルメ回転寿司ともいえます。基本的に逃すとほかは根室市内とかになるので、北海道の回転寿司を味わいたい方は、ぜひ寄ってみてください。
筆者と友人は「根室花まる」の味と価格にすっかり満足して、温泉に寄ってから、今日の宿泊場所に移動することにしました。
期待の新規オープン「ふぁーむながの」のRVキャンプスペース
源泉掛け流しで銭湯並みの料金が魅力「公衆浴場くすのき」でぽかぽか
今回の冬の道東旅行は驚くほど天気に恵まれたので、防寒着さえしっかりしていれば、凍えるように寒いといったことはありませんでした。しかし、日中でも氷点下が珍しくない真冬の道東で1日撮影をしていると、すっかり身体は冷え切ってしまうわけです。
そのため、1日のシメに温泉は欠かせません。そして、できれば毎日なので安い方がありがたい。筆者たちの今日の宿泊予定は「ふぁーむながの」のRVキャンプスペースです。野付半島のほぼ根元の南側にある、こちらのRVキャンプスペースに中標津から向かう途中には多くの温泉があるのですが、筆者たちが気になったのが「公衆浴場くすのき」。公衆浴場というくらいなので料金も安いでしょうし、ネットの情報によるとなんと源泉掛け流しだといいます。
国道272号線から国道244号線に右折して、すぐに看板があるのですが、少し分かりづらく「ホテル楠」の裏手になると思っておくと見つけやすいです。さほど大きな温泉施設ではありませんが、お湯が素晴らしく、サウナと水風呂もあります。源泉掛け流しのお湯ですっかり暖まり、料金は500円前後。480円だったか、510円だったかを失念しました。すみません。まあ、どちらにしても安いのですが、銭湯並みの料金で素晴らしいお湯が味わえます。
キャンピングカーの生命線である充電。冬の充電スポットが増えただけでもありがたい
みなさんはキャンピングカーや車中泊で旅行をする際に、なにを基準にルートを決めていますか? まずは当たり前ですが、周りたい場所ですよね。そして、その次は? 筆者の場合は「充電できる宿泊場所」です。特に気を付けてほしいのはレンタルキャンピングカーでの冬の北海道旅行を計画されている方。車種による違いはありますが、キャンピングカーの電池はそんなに保たないということです。
筆者のキャンピングカーの場合はサブバッテリーが貧弱で、しかも冬は24時間FFヒーターを使用するということもあるのですが、2日に1回はキャンピングカーの充電が可能な施設に宿泊できるようにプランニングします。
簡単なことのようですが、冬の北海道、しかも道東では、これが予想以上に難しいのです。夏であれば、キャンプ場の電源付きオートキャンプ施設が利用できるのですが、だいたい雪が降る11月から4月までは休業中。実は冬季も利用できる充電可能なキャンピングカー向けの宿泊施設は数えるほどしかありません。
そして筆者がこれまで利用していたのが「RVパーク・知床清里町ウエネウサルみどり」です。しかし、なんと筆者の道東旅の期間はイベント出展のためお休み。そこで紹介してもらったのが2023年シーズンから本格オープンするという、野付半島の付け根にある「ふぁーむながの」のRVキャンプスペースです。利用料金はカーサイト(6×6m)が1サイト1日4,500円と入場料が1人250円。
WEBサイトを見てもらうとわかるように、こだわりの潮彩牛を使ったレストラン、宿泊施設や各種アクティビティも充実しています。筆者たちは真っ暗な21時過ぎに到着して、充電などを行い、朝の3時過ぎに出発したので、充実した施設を利用することはできませんでした。
それでもキャンピングカーのサブバッテリーの充電がなくなり、真冬にFFヒーターが動かなくなった経験のある筆者にとって「ふぁーむながの」のRVキャンプスペースは本当にありがたい施設です。2023年シーズンの本格オープンにとても期待しています。
【おすすめアウトドアアイテム】Goal Zeroの「Lighthouse Micro Flash」と「Crush Light Chroma」
「キャンピングカーには明かりが常備されているのだから、小型のLEDランタンなんていらないでしょ」と思う方も多いでしょう。しかし、筆者はキャンピングカーで宿泊する際には必ずGoal Zeroの「Lighthouse Micro Flash」と「Crush Light Chroma」を持っていきます。
これは就寝時の常夜灯として使用するため。Goal Zeroの「Crush Light Chroma」は、すでにキャンパーにとって定番ともいえる小型LEDランタンですので、ここで細かな解説はしませんが、実際に使っていても「確かに売れているのがよくわかる」と感心する作り込みのよさとデザインの秀逸さが光ります。
また、筆者がかなり、お気に入りなのが同じGoal Zeroの「Lighthouse Micro Flash」。
折りたたみ時には125 × 125 × 15mmと非常にコンパクトで、重さもわずか91gと軽く、蛇腹状の本体を開いてと台形のピラミッドのような形状にして使用するのですが、光が適度に拡散して、周りを優しく照らしてくれます。また、本体上部がソーラーパネルになっており、本体のみで太陽光充電も可能。非常時にも心強いLEDランタンになっています。
そして、このGoal Zeroの「Lighthouse Micro Flash」と「Crush Light Chroma」の筆者にとって重要なポイントは光量の調整が細かくできること。どちらとも、わずかに光らすことができるので、狭いキャンピングカーのなかで使う常夜灯としては、とても使いやすいのです。しかも、光っているので置いた場所も確認しやすく、夜中にトイレに起きたときにそのままトイレに行くまでの明かりとしても活躍してくれます。
アウトドアLEDランタンの定番商品ですが、筆者の場合キャンピングカーでの旅行でも必需品といえるアイテムです。非常におすすめ。
「Crush Light CHROMA」
「Lighthouse Micro Flash」
風蓮湖のワシの乱舞も、海までの凍る野付半島も“もう異次元レベル”
風蓮湖や野付半島の一部は別海町という人口1万5千人の町なのですが、この別海町の観光キャッチフレーズは「ここまで来ると、べつせかい」です。
完全に言い訳なのですが、きっと「朝方の新宿に行くとカラスが数十羽乱舞していて怖いよね」はみなさん想像し共感してくれると思います。しかし「風蓮湖の行くと翼開長2mのワシたちが乱舞していて感動するよね」といっても意味がわからないと思います。
さらに多くのフォトグラファーをとりこにする野付半島についても「自然豊かな日本最大の砂嘴で、ちょっと別世界のような荒涼した風景のなか、北方領土の国後島が見えて、冬は内海の野付湾が凍結するので水平線ならぬ氷平線が見える絶景ポイント」と説明しても、きっと意図やその感動は伝わらないですよね。
言葉でうまく伝えられないのは筆者の力量不足なのですが、冬の道東は、そんな想像を超えるような景色が当たり前のように連続して現れるのです。だからこそ、毎年のように通ってしまうわけですが、だからこそ、ぜひみなさんにも体験いただきたい。
また、北海道のローカル系グルメ回転寿司は、本当に安くてうまいので「根室花まる」以外も見つけたら、ぜひチャレンジしてみることもおすすめします。札幌はもちろん、新千歳空港のなかや東京にも店舗があるチェーンもあるようです。
次回は第4回目、最終回になります。網走の流氷をメインにお話をしますので、ご覧いただけると幸いです。ぜひ、いまから次のシーズンの冬の道東旅行を計画してはどうでしょうか? あっという間に、また冬がやってきますよ。
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