ゴールデンルール
久保 華図八(くぼ・かずや)
バグジー代表取締役社長。15歳で美容業界に入り23歳で独立するが、技術を磨くために渡米。帰国後、北九州市で繁盛店を築く。幹部社員の相次ぐ退職という危機を社員一丸となって乗り越え、社員重視・お客様本位の経営で事業を成長させる。北九州市を拠点に美容室5店舗のほか、カフェ、エステサロンなどを展開。大手企業や各種団体などで年間100回以上の講演を行っている。2009年、サービス産業生産性協議会『ハイ・サービス日本300選』受賞、13年、経済産業省『おもてなし経営企業選』受賞。著書に『経営者には、幸せにするべき5人の人がいる』(日経BP社)、『ひとり光る みんな光る』(致知出版社)『人が育つゴールデンルール』(内外出版社)などがある。

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『人が育つゴールデンルール64』シリーズ
  1. 成長する組織に必要な「共通の価値観」とはなにか?
  2. 人が育つ「ゴールデンルール」?!全体的な視点を身につける方法
  3. 組織に進化をもたらす、4つの大事な要素を考える
  4. できているようでできていない「人」を大事にする経営で意識すべきこと

「積極的な精神」

問題は問題ではなく、問題をどうとらえるかが、真の問題なんだ。

人のモノの見方、考え方、とらえ方はすべて「価値観」がベースになっています。人が育っていくには「人が育つ価値観」がなければいけません。逆に言えば人が育つ組織には「共通の価値観」がみんなにあるとも言えます。

その中でも最初にくるのが「積極的精神」という価値観です。積極的に自分から動く、取りに行く精神がなければ望むものは手に入らないからです。

積極性の中で、いちばん身近なのは「言葉の使い方」です。声に出して言う言葉だけでなく、心の中でつぶやく言葉の使い方も重要です。

どんな言葉を使うか。何かにつけて「あいつはダメだ」という言葉は、聞いた人がムッとしたり嫌な気持ちになる。病院で「相当、状態良くないですね」なんて言われたら重たい気持ちになります。これは言葉のエネルギーにやられてしまうわけです。

反対に「すごいね!」「いつもありがとう!」「楽しみだね」という言葉をかけられたら気分が上がりますよね。言葉を通してプラスのエネルギーを受け取っているからです。

自分が何を見て、何を考え、何を思うか。常に「自分はダメなんじゃないか」というマイナスに考えるのか、「自分はできる」とプラスの積極的精神を持って、前向きな言葉を使っているかで育ち方は大きく違ってきます。

言葉の使い方と行動は、自分の価値観そのものです。「どんな苦しい目にあっても、どんな思いがけないことにあっても、日常と変わらず平然と対処する。これこそ積極的精神である」ということを思想家であり実業家だった中村天風さんが書かれていますが、すごいと思う。積極的精神はプラスのものごとだけではなく、マイナスのものごとのときにも持つことが大事だと教えてくれています。業績が良くても悪くても調子に乗ったり落ち込んだりせずに平然とできる。そういう人が本当に成長できる人でしょう。

具体的には「ないものを数えず、あるものを数える」というのが一つ。自分の周りにはこんな人しかいないというのでなく、周りにいる人が持っているものを考える。

さらに「~がないからダメ」という言い方をせず「~をしたらもっと良くなる」というプラスの言い方を常にすることです。成功している人はみんなそうです。

失敗したときも積極的精神がある人は「これをやったらダメなんだってことがわかったからよかったよ」と前向きにとらえている。だから、失敗を恐れない。失敗しても学ぶものがあるという積極性があるからです。そういう人はどんどん成長していきます。

僕は失敗にもリターンがあると思っています。うちのスタッフが集客のためにドイツビールをプレゼントする企画で失敗しても「若い子の発想がつかめてよかった」と思いました。ドイツビールの知識も増えたし、ビールの販社の人とのつながりもできた。他にも、美容室なのにビールの企画をするなんておもしろいと思ってもらえたら、それだけでも意味がある。バグジーというブランドにもリターンが得られます。

結局、積極的精神があればどんなこともプラスに持っていくことができるんです。

うまくいくことだけを追い求めていたら人は育ちません。成功か失敗かは結果にすぎない。積極的精神があることのほうが大事。一度で成功できなくてもいい。たくさんチャレンジして失敗もして、そこから学んで成功できる環境があれば人は育つのです。

また、この積極的精神を維持することはとても難しいことです。自分を常に客観的に見るようにクセづけすると、消極的になりそうな自分を修正することができます。また、できるだけ積極的精神を持つ人と共に時間を過ごすことで、また、積極的精神はより強く維持できるのです。

「長期的な視点」

遠くを見る鷹の眼と、目の前を見る蛇の眼を持とう。

人生でも経営でも、今すぐはプラスにならないけれど、長い目で見たら絶対に必要なことがあります。

昔、徹底した成果主義でスタッフが辞めていったときに気づいたんです。それまで「仕事はお金を稼ぐためにやるんだ」と堂々と言っていた。

これだけ売り上げればこれだけ給料が上がる。まさに超短期的なことしかみんなに見せないようにしていたから、ついて来れない人がどんどん辞めていきました。

そこで経営を180度変えて軌道修正しました。これからは自分たちのためだけでなく、地域の幸せにも貢献できる店にしよう。そう言って、地域の児童養護施設に売り上げの0・02%を寄付するタイガーマスクプロジェクトを始めました。

実は、そのときの僕はずるかった。これを始めればスタッフに僕が変わったと認めてもらえるだろうと思ってたんですね。これは今だから言えることです。

けれども、そんなふうに自分をごまかすために始めたことが長期的には会社にとってもみんなにとっても素晴らしいことになったんです。現在まで20年続けられたという事実は、今すぐつくろうと思ってもできない。コツコツですが、多くの寄付につながり、バグジーが地域からもいろんな表彰をされ認められる存在になれました。

社会貢献やスタッフ教育への投資などは、今すぐ経営やスタッフにプラスのことがあるかなんてわからない。

でも長期的に考えればプラスになります。

僕の会社には研修センターという施設があって、技術的なものも含めていろんな研修をします。作るのに数千万円という費用がかかるので銀行に融資の相談に行きました。すると、銀行から「社長、それは無理。売り上げに関係ないでしょ。店を出すなら融資するけど」と言われた。

でも僕は逆に銀行に「それは勉強不足じゃないですか。今じゃなくて、5年後、10年後にもっといい会社にするために、もっと売り上げを上げるためにスタッフを育てる投資をするんです。だから融資してください」と言って貸してもらったんです。

結果的に、今、研修センターも持っていることは大きな強みになっています。現在では職業訓練校としての認定も受けているので、小さな学校としても運営できています。

どんなことでも最初は大変です。井戸を掘っていくときも最初は泥水しか出ない。かき出してもかき出しても泥水が湧いてくる。こんなことをして何になるんだろうかと弱気にもなる。やがて、少しずつ泥水が少なくなっていく。これは水が枯れたのかなと思ったぐらいになってようやくきれいな清水が湧いてくるんです。

目の前の泥水だけを見て井戸掘りをあきらめてしまったら、永遠にきれいな水を手にすることはできません。

人生全般なんでもそうだと思います。今しか見ていない人、見えていない人と長期的に見ている人では後から大きな差がつきます。

長期的にものを見る、考えるという価値観は「判断力」ともいえます。何か判断するときに「これは長期的に見てどうなのかな」という視点を入れてみてください。

僕の会社では入社式に、親御さんから「今まで育ててきた気持ち」を手紙にしてもらったものを読み上げるんです。みんな、そんなふうに親から自分が育ったことの素直な気持ちをあらためて聞くことがないのでボロボロ泣きます。

これも僕は長期的に必要だと考えて始めました。家族みたいな会社をつくるには最初に素の自分を見せないといけない。だから、親の手紙で泣く姿をあえてみんなに見せる。人の気持ちがわかる人間じゃないと僕たちの仕事はできないから、あえて最初にそんなことをするわけです。

そのときはわからなくても後になって長期的に見たときに、すごく意味があったと思える。そういうことを大事にできる人や組織が成長できるのです。