フォトグラファーライターの齋藤千歳です。北海道千歳市に住んでいます。Mobility Storyでは【プロフォトグラファーが教える北海道の絶景「道の駅」】等の連載で、北海道旅の魅力をお伝えしています。今回は関東にお住まいの方にオススメの冬の北海道旅です。4泊5日の日程でのモデルコースをご紹介していきます。
金曜日の仕事を終え羽田空港から北海道へ向かった友人を新千歳空港でピックアップ。火曜日の昼に道東エリアにある女満別空港から見送るという4泊5日のややタイトなスケジュールながら、キャンピングカーで「ジュエリーアイス」「タンチョウ」「ラッコ」「オオワシ」「オジロワシ」「野付半島」「流氷」といった貴重な野生動物や絶景の大自然をまわる撮影旅行を計画・実行しました。
この道東の冬の絶景旅の様子を、4回にわけてみなさんに紹介していきます。
目次
冬の道東には、いい大人が感動する“なにか”がある
「ジュエリーアイス」「タンチョウ」「ラッコ」「オオワシ」「オジロワシ」「野付半島」「流氷」と4泊5日にてんこ盛り
北海道の住むようになって約10年、筆者はレンズやカメラのレビュー記事のためなどに作例を撮影したり、キャンピングカーや旅行の記事などを書いたりするために、道内のさまざまな場所に出かけて、多くの写真を撮ってきました。そんな筆者が、北海道のなかでも愛してやまない場所、そして季節が“道東の冬”です。本当に美しい。
そして、何度も出かけているうちに、この美しさを写真や文章などで伝えるだけでなく、友人・知人と共有したいという気持ちがどんどん強くなっていったのです。とはいえ、元々東京の出版社に勤めていた筆者の友人のほとんどが東京在住。日々、忙しく過ごしているので、なかなかまとまった休暇もとれないわけです。
そこでキャンピングカーを利用して、道東の魅力をぎゅっと凝縮した今回の北海道冬の絶景旅を企画。今回は金曜の夜羽田発、火曜の昼に女満別空港解散の4泊5日で、豊頃町の「ハルニレ」と「ジュエリーアイス」、阿寒町・鶴居村の「タンチョウ」、霧多布岬で「ラッコ」探し、根室市風蓮湖に集まる「オオワシ」「オジロワシ」との出会い、北方四島のひとつ国後島を臨む日本最大の砂嘴(さし)「野付半島」を尋ね、網走では能取岬と観光船から「流氷」を眺めるというてんこ盛りな旅行プランを立案、実際に実行してみたわけです。
新千歳空港からキャンピングカーをレンタルしての冬の北海道旅、もしくはご自分のキャンピングカーで苫小牧港からスタートという方々の参考にもなると思いますので、ぜひご覧ください。
【1日目】新千歳空港:スタートから30分以上の遅れで、ラーメン山岡家へ
金曜日に仕事が終わった後、羽田から飛行機に乗り、21時半に新千歳空港に到着する予定であった友人は飛行機が遅れて、22時過ぎにやってきました。新千歳空港のレストラン街も閉まっているので、まずは「北海道といえばラーメンでしょ」のノリで「ラーメン山岡家 千歳店」へ。こういうときに24時間営業は心強いわけです。
ちなみに「ラーメン山岡家」の本社は札幌市、すっかり道民に定着しており、札幌ラーメンだと思っている人も多いようですが、発祥の地は茨城県牛久市となっています。厳密には北海道のラーメンではないのでしょうが、すでに北海道のラーメンを語るうえで欠かせない存在といえます。
というよりも、北海道では大都市圏以外で22時過ぎに食べられるものの選択肢は少ないのです。そんなときに「ラーメン山岡家」はありがたい存在といえます。
当初の目的の「ジュエリーアイス」が上がっておらず、いきなりの目的地変更
友人と合流したら、道東自動車道(以下 道東道)を使って約3時間でおおよそ220kmを走り、豊頃町大津海岸で「ジュエリーアイス」を撮影する予定だった筆者たち。しかし「ジュエリーアイス通信」といったジュエリーアイスの出現情報サイトなどをみても(2023年1月27日時点で)ジュエリーアイスは見ることのできない状態でした。
ジュエリーアイスとは、凍結した十勝川表面の氷が海に流され、この氷が波に洗われたものが十勝川河口付近の豊頃町大津海岸に打ち上げられた物です。この大津海岸が東向きの海岸のあるため、打ち上げられたジュエリーアイスが朝日に照らされる時間帯がもっとも幻想的なピークタイムとなります。
夜明けはだいたい7時前なので、これに間に合うように現地に到着。余裕があるようなら、豊頃町のもうひとつの観光名所であるハルニレの木に寄って、星空をバックに撮影を行う予定でした。しかし、肝心のジュエリーアイスはまったく打ち上げられていない状況です。
ジュエリーアイスはパスして、阿寒町・鶴居村の「タンチョウ」へ
友人とも相談の結果、今回はジュエリーアイスはパスして、その次の日に夜明けにシーンをねらう予定であった鶴居村の音羽橋まで一気に移動することにしました。道東道を使って、約4時間の移動です。
問題点は「ラーメン山岡家」で食事をするなどしているうちに、時刻が余裕で23時をまわっていたこと。現地到着は3時過ぎの予定になります。筆者は深夜の運転になることを考えて、昼寝をしておいたので問題ありませんでしたが、夜の雪道運転になるので、十分な注意が必要です。
夜中の移動なら、ガソリン補給を忘れずに!
また、夜中に新千歳空港などからクルマで道東方面に向かうなら、千歳市にある24時間営業のガソリンスタンド「コスモ石油 千歳空港SS」で満タンにすることをおすすめします。釧路や帯広といった都市圏でもない限り道東に24時間営業のガソリンスタンドはないと考えて間違いありません。真冬の道東でのガス欠は命に関わるトラブルにまでなりかねません。
鶴居村・音羽橋:世界中からカメラマンが訪れる「タンチョウ撮影の聖地」
野鳥や野生動物を撮影する世界中のフォトグラファーの多くが憧れる、おそらく世界でもっとも有名なタンチョウの撮影ポイントが鶴居村の音羽橋です。冬でも川が凍結しないため、多くのタンチョウが夜に羽を休めるポイントとなっています。
この時期は日の出がだいたい7時前なので、その1時間程度前から夜明けの風景の撮影が始まるのですが、撮影ポジションの場所取りはそれよりも早い5時前後くらいから、音羽橋の上に自分の三脚を置くなどしてはじまります。 音羽橋の両側には駐車場があり、トイレも設置されているので、筆者はキャンピングカーで出掛け、余裕のあるときは、朝方ではなく、夜中に到着して撮影場所をキープ、仮眠後に撮影を開始することが多いです。
さほど長い橋ではありませんが、1月〜3月のタンチョウの飛来の多いシーズンは橋の1列目がいっぱいになるのは当たり前。2列でも足りずに、3列目までが形成されることもあるので早めの到着がオススメです。今回の旅(2023年1月末)もかなり混んでいました。
【おすすめ撮影アイテム】超望遠10倍ズームレンズ「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」がとてもいい
おそらく世界一有名なタンチョウの撮影スポットである鶴居村・音羽橋ですが、その撮影に超望遠ズームは必須です。筆者はさほど長い年月撮影をしているわけではないので聞いた話レベルですが、年々撮影する人々が増えるほどに「タンチョウたちが橋から離れた奥の方に移動している」なんて話もあり、休んでいるタンチョウたちを撮影するにも400mmを超えるような超望遠レンズが必要になります。
筆者は今回2023年2月17日発売予定の「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」をテスト的に使用する機会に恵まれ、このレンズをメインに撮影しましたが、35mm判フルサイズミラーレス一眼に対応する高性能な標準〜超望遠までをカバーする10倍ズームレンズはAPS-Cモードと組み合わせると標準域の60mm、900mm相当の超望遠までを1本のレンズで撮影可能にしてくれます。
そのため、野生動物のアップから、まわりの景色などを入れた風景写真的な撮影までレンズ交換なしでこなしてくれるのが、非常に魅力的な1本です。実勢価格で30万円ちょっとと高価なレンズですが、運動会や部活の撮影といった子どもイベントでも大きな力を発揮してくれるので、特殊なプロ向けとは考えずに、ぜひ一度試していただきたいレンズです。
タンチョウが飛ぶまではキャンピングカーならではの休憩タイム
季節にもよりますが、朝焼けのはじまる6時前後から完全に太陽の昇る7時半過ぎまで、音羽橋でタンチョウと日の出の様子を撮影したら、次は餌場に向かって飛び立つ、飛んでいるタンチョウを撮影するチャンスがやってくるのですが、筆者が知っている限り、この間の時間が長いのです。
だいたい8時前から10時くらいまで、当然前後はしますが、筆者は飛びはじめるのを待って11時近くまで橋の上に立っていたこともあります。しかし、キャンピングカーで訪れるようになってから、朝日の時間帯が終わるとクルマに戻って、トイレを済ませて、コーヒーブレイクということが多いです。
タンチョウたちが飛びはじめるまで、車内でしっかりと身体を温めておくといった感じになります。
タンチョウの飛ぶ、貴重なシーンを撮影しておきたい
朝日の時間帯から数時間後、(飛び立つ時間はその日の気温やタンチョウの気分などで変わるので、なんとも言えませんが)寝ぐらから餌場に飛び立つタンチョウたちを撮影して、鶴居村・音羽橋での撮影は終了です。
ちなみに冬の大型の鳥はおそらくカロリーの節約のためなのでしょう、なにか理由がない限り基本的に飛ばないので、タンチョウがドンドン飛んでくるシーンを撮影できるチャンスは、基本的にこの「朝の飛翔」と「餌場から寝ぐらに戻るとき」くらいといえます。
寝ぐらにいるすべてのタンチョウが餌場に行くわけではないので、どこまでタンチョウが飛び立ったら撮影終了とするかは、それぞれの判断になります。途中、キャンピングカーのなかでしっかりと身体を温めていた私と友人は、一番遅くまでタンチョウの撮影を楽しみました。
ちなみに音羽橋の奥の寝ぐらから橋の上で待ち構えている私たちに向かって飛んでくるタンチョウを撮影するのですが、筆者が普段から使っている「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports」よりも「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」は広角側に余裕があるため、だんだんレンズを広角にしながら撮影しているとワンチャン多く撮影できるシーンが多い印象です。これは非常に大きなアドバンテージでしょう。
またズームリングを回さずに、レンズ鏡筒を直進ズーム的に伸縮しても画角が素早く変えられる点もとても便利でした。本格的な野生動物や野鳥、飛行機や列車などを撮影する方にもオススメです。
「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」でタンチョウを楽しむ
音羽橋での撮影が終わった後、大部分の方の移動先は「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」もしくは「阿寒国際ツルセンター【グルス】」のどちらかでしょう。どちらもタンチョウへの給餌が行われるため、多くのタンチョウも、このどちらかに行くようです。
筆者たちは「阿寒国際ツルセンター【グルス】」の向かいにある道の駅「阿寒丹頂の里」内のRVパークに宿泊することが決まっていたので、先に音羽橋からも近い「鶴居・伊藤サンクチュアリ」へ。初めてのときの筆者もそうでしたが、今回いっしょに行った友人も「タンチョウってこんなにいるんだ!」と驚いていました。朝の時間帯以外に撮影しようという方以外は「鶴居・伊藤タンチョウサンクチュアリ」と「阿寒国際ツルセンター【グルス】」が定番です。シーズン中ならほぼ確実にタンチョウの姿を間近で楽しめます。
筆者たちは、お昼過ぎまで撮影を楽しんだところで、昨夜の山岡家からなにも食べていないことに気づき、食事を求めてレストランが完備された道の駅「阿寒丹頂の里」に移動することにしました。
道の駅「阿寒丹頂の里」の居心地のよさに負ける
14時過ぎに道の駅「阿寒丹頂の里」に到着した筆者たち一行。昨夜の22時過ぎに晩ご飯を食べて以来、ほとんど何も食べず、音羽橋に到着したときには、すでに朝日の撮影が始まる寸前だったので、30分程度寝ただけの状態で道の駅「阿寒丹頂の里」にある「RVパーク 阿寒丹頂の里」にチェックイン。
2022年7月13日にオープンしたばかりという「RVパーク 阿寒丹頂の里」は超好条件のRVパークです。まず基本料金が1泊1台1,500円、電源設備を使っても2,000円。もうこの時点でRVパークを利用したことのある方なら「安い!」と思うでしょう。しかもゴミ処理料込み、さらに同じ道の駅の中にある美肌の湯「赤いベレー天然温泉」の大人1人分(540円相当)の入浴チケット付きとなっています。まさに破格なのです。
しかし、なんと、さらに同じ道の駅内にある「レストラン鶴」での生ビールもしくはソフトドリンクの1杯サービスチケットまで付いてきました(これは期間限定)。本来、冬季はRVパークは休業予定だったのですが好評のため2023年3月31日まで延長営業中とのことです。お問合せなどは道の駅「阿寒丹頂の里」のWEBサイトから可能なので、ぜひみなさん利用してみてください。多くの方が利用すると来シーズンもきっと冬季営業してくれるに違いありません。
温泉も、レストランも、生ビールも電源も確保された道の駅「阿寒丹頂の里」。筆者たちはまだ15時前だというのに朝からマイナス19度と寒かったこともあるのでしょう。「とりあえずご飯、いやご飯とビール、そして温泉」というモードに入ってしまいました。
おいしいご飯に、お風呂。空腹、寝不足でほぼ丸一日マイナス気温のなか撮影していた筆者たちは、この誘惑に抗うことができませんでした。 そのため、信じられないことにわずか道の駅から350mしか離れていない「阿寒国際ツルセンター【グルス】」に行くことなく、すっかりとリラックスタイムに入ってしまったのです。
筆者は大盛りザンギ定食、友人はミックスフライ定食を食べ、温泉に入り、畳敷きの広い休憩所でのんびりしたら、再度防寒着を着てタンチョウを撮影に行く元気は出ませんでした。
道の駅「阿寒丹頂の里」
・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/doto/post_30/
・公式HP:https://www.akan.jp/
・RVパーク:https://www.akan.jp/rv%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%AF
【おすすめアウトドアアイテム】冬道も行ける折りたたみファットバイク
超おすすめの「RVパーク 阿寒丹頂の里」ですが、意外な弱点があります。これは実際に行ってみるまで、気が付かない人が大部分でしょうが、24時間利用可能なトイレからRVパークの駐車場が予想以上に遠いのです。
北海道の道の駅やオートキャンプ場などは敷地面積が広く、たまに歩いて行くのが「嫌だな」と思う程度にトイレなどが遠いことがあります。そんなときにために筆者が今回の道東旅向けに用意したアウトドアアイテムが「キャプテンスタッグ ワイルダーFDB206」です。
筆者のキャンピングカーには自転車用のキャリアが装備されているのですが「冬場は自転車が活躍することはない」と考え使っていませんでした。しかし、太いブロックタイヤを装備するファットバイクなら、雪道でも問題なく活躍してくれるのではないかと考えて、持って行ったのですが大正解!
夜中に目が覚めて零下20度近いなか、トイレまで行くのは結構辛いのですが、ファットバイクを使えば楽々です。また、幅約7cmの極太ブロックタイヤは、凍った雪道も予想以上に安定して走れました。とてもおすすめ。
ちなみに筆者は非常に気に入り、旅行以外でも「キャプテンスタッグ ワイルダーFDB206」を使って北海道の冬でも近所は自転車を使うようになりました。この詳細などは、ぜひまたどこかでお話したいと思っています。冬の自転車も楽しいですよ。
ご飯を食べた後は、温泉に入っては、休憩室のタタミで横になって休憩。また、温泉で温まってをくり返して、十分に温泉を楽しんでから、十分に暖房をしたキャンピングカーでぐっすりと眠ったわけです。
とはいえ、翌日も朝日の撮影から始まるので、かなり朝は早いわけですが……。3日目は厚岸の牡蠣に、ラッコ探しの予定、次回の記事もぜひお楽しみに。
冬の北海道クルマ旅では「燃料は常に半分以上、半分になったら満タン」で
キャンピングカーなら絶景の撮影ポイントの隣でそのまま宿泊というプランニングも可能です。今回の音羽橋のように駐車場とトイレの完備されている場所なら、ほとんど問題はありません。基本的には仮眠程度ですが、駐車に問題がないかなどあらかじめ調べておくことをおすすめします。
また、冬の北海道でガス欠は、即命に関わるトラブルに発展することが多いので注意してください。都会では考えられないかもしれませんが、土日はお休みとか、夕方は17時に閉まるといったガソリンスタンドもまったく珍しくありません。燃料は常に半分以上、半分になったら満タンといったつもりで行動するのがおすすめです。実際に筆者はガソリンスタンドがみつからないため、大ピンチを迎えた経験もあります。
とはいえ、新千歳空港から豊頃町大津海岸に向かいジュエリーアイスからスタートするつもりであった今回の旅は、世界的にも有名なタンチョウの撮影スポットである鶴居村音羽橋からスタート、朝から夕方近くまでタンチョウをお腹いっぱい? 満喫できました。
今回は行けませんでしたが「阿寒国際ツルセンター【グルス】」でも、とても美しいタンチョウの姿が見られるのでぜひチャレンジしてみてください。