悩みが武器
河田 真誠(かわだ・しんせい)
1976年生まれ。答えを教えるのではなく、相手に問いかけることで、企業の問題を解決に導く「しつもんコンサルタント」。指示命令ではなく質問をすることで、自ら考え行動する部下を育てていく「しつもんマネージメント」や、売り込むのではなく質問をすることで、買いたい気持ちを引き出していく「しつもん営業」などをテーマに、全国の企業や業界団体などで講演や研修を行い、これまでに約10万人に影響を与えてきた。
主な著書に、『革新的な会社の質問力』(日経BP 社)、『私らしく わがままに 本当の幸せと出逢う100の質問』(A-Works)、『人生、このままでいいの?最高の未来をつくる11の質問』(CCC メディアハウス)がある。

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悩みや失敗とは無二の親友になる

できるだけ、悩みや失敗を避けたい人もいるだろう。

本当はお金が欲しいけれど、悩みや失敗を抱えるのがイヤだからたくさん仕事をしたくないという人もいると思う。しかし、想像してみてほしいのだが、悩みがない人生なんてあるだろうか?

Q :悩みや失敗がなくなると、どうなると思いますか?

僕は、悩みや失敗はなくならないものだと思うし、なくなってはいけないとも思っている。生き続けている限り、どんな良い状態になっても、その状態にふさわしい悩みがやってくるものだ。

僕も、20代の頃はたくさん働いたので「ゆっくりしたい」という悩みが生まれた。そこで海外を旅することにした。旅をしていた数年の間は、「寝たい時に寝て、食べたい時に食べて……」という欲望のままの生活をしていた。こう聞くと、「夢のような生活だ!」と思うだろう。しかし、たった1年で、僕は「人の役に立つことがしたい!」と強く思うようになっていた。ただダラダラするだけの毎日ではなく、何かにチャレンジしたくなってきたのだ。言い方を変えると、毎日に張り合いがなくなり、何のために生きているのだろう?と考えるようになってしまったのだ。

要するに、ラクしかなかった毎日を過ごした結果、「ラクから抜け出したい」と悩みはじめたのだ。そこからすぐに帰国をして会社を興おこすことになる。どんな状態になっても、悩みからは逃れられないということがよくわかった。

あなたも悩みから逃げることはできないのだから、うまく関わった方がいい。前のページで話したように、悩みという壁を乗り越えることで人は成長していける。「なんで?」という質問で悩みの原因を明確にし、「どうすれば?」という質問で解決策を考えていけばいいのだ。そんなに難しい話ではない。

✓失敗して当たり前だ

「失敗」というものからも逃れられない。多くのことは考えるだけでなく、行動してみないと本当のところはわからないのだから、失敗を恐れずに行動することだ。失敗をすればするほど、「本当」にたどり着ける。ただ、そこには意識が必要だ。「なぜ失敗したのか?」「次は何を改善するのか?」ということをちゃんと考えないと、また同じ失敗を繰り返して成長のない人で終わってしまう。

もし、あなたが失敗を恐れているようであれば、何を恐れているのかをしっかりと考えてみよう。失敗することの何が恐いのだろう? みんなからできない人だと思われること? できない自分を認めること? 何を恐れているのだろう? それは、本当に恐れるべきものなのだろうか?

僕は失敗した人を見ても、ダメだなとは思わない。「そうだろうな。できないことにチャレンジしているのだから、できなくて当たり前だよな」と思うだけだ。むしろ、失敗を恐れて何も行動しない人を見るとダメだなと思う。あなたのところには、失敗しても挽回できるくらいの問題しかやってこない。何も恐れることはないのではないだろうか?

また、起こった過去を変えることはできない。その事実を取り消すことはできないのだ。しかし、意味合いを変えることはできる。「良いことか」「良くないことか」の認識を変えることができるのだ。僕は10年くらい前に離婚をした。それは事実だ。しかし、それは良くないことだと思っていない。ちゃんと自分の意思を伝え話し合った上でのことだし、離婚をするという経験をしたことでより深く愛について知り、経験することができた。あの出来事のおかげで今の僕があると本当に思っている。これははじめからそう思っていたのではなく、そう思おうとして創り上げたものだ。

過去に起きたことは変えようがないのだから、自分にとって都合が良いように解釈をした方がいい。そう考えると、起きた出来事を「失敗」だと思うこともできるし「成長のきっかけ」だと捉えることもできる。

悩みも失敗も、どちらも逃げ切れないものなのだから、逃げることは諦めて、うまく関わることを学んでいこう。

責任を楽しむ

大人になると楽しいことが増えてくる。欲しいものだって買えるし、やりたいこともできる。しかし、できることが増えるということは、同時に責任も増えるということだ。

例えば、自転車に乗れるという楽しさを覚えれば、人にケガをさせてはいけないという責任が生まれるだろう。心地よい家を借りることになれば、家賃という責任が発生する。何かを買うということには、支払うという責任が発生するし、日本に生きている以上、納税の義務もある。責任とは、あなたがやらなくてはならないことだ。

Q :「やらなくてはならないこと」は、どうすれば「やりたいこと」になりますか?

仕事も同じだ。「責任」と「対価」は同じだけある。

「コピーをとっておいて」などの簡単な仕事であれば、伴う責任も少ないが、得られる喜びも少ない。

世の中は与えたものが返ってくる。大切にされたいのであれば、大切にすることだろう。評価されたいのであれば、それに見合う仕事をすることだと思う。給料を上げてほしい、休みが欲しい、残業を少なく……などと自分の条件を言うのであれば、それに伴う責任もちゃんと背負うことだ。それができる人にだけ、得られるものがある。

そう聞くと、何だか大変なことに思えるかもしれないが、そんなに難しいことではない。また、果たすべき責任も工夫しだいでは「やりたいもの」になっていくし、あなたにできない責任を負わされることはまずないのだから、やるべきことをちゃんとやればいいというだけの話だ。評価を求める前に責任を果たしてみよう。評価は後から自然とついてくるはずだ。評価が先に高くなることはない。

今を、変えていこう

「何かを変えよう!」と決意しても、三日坊主で終わるなんてことがよくある。人は「慣れる」生き物だから仕方ないことだ。

この「慣れる」という力の方が「今日から変わる!」という意識よりも強いので、頭で決意をしても三日坊主で終わってしまうのだ。ということは、逆に言うと習慣化さえできてしまえば最高の自分を生きていくことができる。ここで話したことは読むだけでは意味がない。三日坊主でも意味がない。「こんな行動をしよう」「こう考えよう」など、一つでもいいので意識して今日を過ごしてほしい。はじめは違和感があるかもしれないが、徐々に慣れていって、当たり前になっていくだろう。