「コスト削減が大事」とよく言われるが、やみくもにコスト削減を実行しても、かえって経営がうまくいかなくなることがある。意味や目的を理解し、自社に合った形で取り入れることが大切だ。この記事では、中小企業がコスト削減する意味やメリットを解説する。また、コスト削減のアイデア事例やコスト削減を実行するステップも紹介するので、ぜひ参考にしてほしい。

目次

  1. コスト削減とは?中小企業でも必要なの?
    1. コスト削減の意味
    2. コスト削減の目的と効果
  2. 中小企業が注目したい3つのコスト
    1. 人件費
    2. 消耗品費
    3. 水道光熱費
  3. コスト削減のアイデア事例6選
    1. 1.ペーパーレス化
    2. 2.テレワークの導入
    3. 3.契約の見直し
    4. 4.ITツールの導入
    5. 5.マニュアルの整備
    6. 6.アウトソーシング
  4. 中小企業がコスト削減を成功させる3ステップ
    1. 1.現状を把握する
    2. 2.コスト削減の方法を検討する
    3. 3.実行に移し効果を検証する
  5. 中小企業がコスト削減を成功させるポイント
    1. 従業員を巻き込む
    2. 具体的な仕組みやルールを作る
  6. 中小企業がコスト削減に取り組む注意点
  7. コストを削減して会社を永続させよう
バカにできないコスト削減 中小企業が注目したい3つの費用【アイデア事例つき】
(画像=Mono/stock.adobe.com)

コスト削減とは?中小企業でも必要なの?

そもそも、経営においてコスト削減が大事だといわれているのはなぜか。また、大企業だけでなく、中小企業でもコスト削減は必要なのだろうか。コスト削減を実施する意味や目的、メリットを解説する。

コスト削減の意味

経営におけるコストとは、営業活動をする上で必要な経費のことである。材料費や人件費をはじめ、家賃、水道光熱費、消耗品費など経費の項目はさまざまだ。また、時間や労力など、目に見えない費用もコストと呼ぶことがある。

コスト削減とは、効率化や時間短縮によって必要な経費をなるべく少なく抑えることだ。

コスト削減の目的と効果

コスト削減というと「必要な経費まで減らされるのでは?」「息苦しくなるのでは?」と拒絶反応を示す人がいる。経営者でも従業員でも、コスト削減にマイナスイメージを持つ人は少なくない。

しかし、コスト削減の本来の目的は「無駄な経費をカットし、本来必要なところにお金を回す」ことだ。

会社の損益計算では、売上から経費を差し引いて利益を計算する。コスト削減で経費を減らすことができれば、利益が増えて会社に資金が残る。

潤沢な資金があれば、新しい事業の開始、必要な設備の購入、従業員への還元、経営者の報酬の確保などに資金を使うことができ、経営の選択肢が増える。また、会社に資金を貯めておけば、災害時などいざという時のリスクヘッジにもなる。

中小企業が注目したい3つのコスト

続いては、コスト削減に着手するとき、中小企業が注目したい3つの経費を取り上げて紹介する。

人件費

コストの中でも大きな割合を占める人件費は、経営者を悩ませるコストでもある。人件費は、材料費などと違って、売上の大小にかかわらず固定費として発生する。また、従業員の生活がかかっているため、業績が悪いからといって安易に給料を下げたり人員を減らしたりすることはできない。

しかし、人件費を見直すポイントは実はたくさんある。働きやすい環境を整えて従業員の定着率をあげれば、採用にかかるコストを削減可能だ。評価制度を導入し、成果を給与に反映させることで、一律に賃金を上げるより費用対効果を高められる。

業務を効率化して残業代を減らしたり、テレワークを導入して通勤手当を減らしたりするのも効果的だ。

消耗品費

事務用品や備品などの消耗品費は、一つひとつが少額のため、つい内容を把握しないまま放置しがちなコストである。しかし、塵も積もれば山となるため、注意が必要だ。

消耗品費を削減するポイントは主に2つある。

1つ目は、発注先を変えたり価格交渉をしたりして、コストを削減する方法だ。発注先との関係性に配慮しながら、慎重に進める必要があるものの、大幅なコスト削減を実現できる可能性がある。

2つ目は、事業所や部署ごとにどのくらいの消耗品費がかかっているかを見える化し、コスト削減に取り組むよう促す方法だ。数字が共有されると、コストがかさんでいる事業所や部署は、消耗品の管理方法や使い方を見直すようになる。時間はかかるものの、長い目で見ると効果の持続が期待できる方法だ。

水道光熱費

水道代や電気代、ガス代などの水道光熱費も、意識次第で削減できるコストだ。

たとえば、水道の蛇口に節水コマを取り付ける、LED照明に変える、エアコンの温度設定を変えるといった方法で、大きなコスト削減につながるかもしれない。

消耗品費と同じく、事業所や部署ごとの水道代や電気代を見える化し、改善を促す方法もある。

コスト削減のアイデア事例6選

次に、コスト削減のアイデア事例を紹介する。自分の会社で取り入れられるアイデアがないかチェックしてみてほしい。

1.ペーパーレス化

ペーパーレス化は、軌道に乗れば大きなコスト削減につながるアイデアだ。紙代やインク代などの消耗品費のほか、電気代、郵送代、複合機のリース料、膨大な書類を保管する棚の購入費用なども削減できる。

書類を印刷して配布したり、ファイリングして保管したり、必要な情報を探し出したりするには、膨大な時間がかかっていることも見過ごせない。ペーパーレス化で時間短縮できれば、残業代の削減にもつながり、必要な人員を必要な仕事に従事させることができる。

近年は、環境保護の観点からペーパーレス化が進められている。時流にうまく乗りつつコスト削減を目指すのが賢いやり方だ。

いきなりすべての書類をなくすことは難しくても、まずは社内のさまざまな申請やミーティング資料など社内のペーパーレス化に取り組み、効果を測定してみるといいだろう。

2.テレワークの導入

コロナ禍でテレワークを導入する会社は急増した。テレワークの導入にもコスト削減の効果がある。

在宅でできる業務は自宅で行い、必要なときだけ出社するスタイルにすれば、水道光熱費や通勤手当を削減できる。テレワークが定着したら、現在の事務所の広さは不要だ。より小さな物件へと移転し、家賃を下げるという選択肢もある。

また、テレワークを希望する働き手は増えていることから、人材不足の解消や採用コストの削減につながるのもメリットだ。

3.契約の見直し

契約の見直しと交渉によって、家賃や電気代を削減できる可能性がある。

家賃交渉ではまず、周辺相場を調べることが重要だ。周辺相場をもとに妥当な金額を割り出し、建物の老朽化や経営状態の悪化など、引き下げを願い出る理由に触れつつ交渉する。オーナーとの関係が悪化しないよう、慎重に進めることが大切だ。

電力会社を見直すことで、電気代の節約につながることがある。2016年4月からの電力自由化によって、契約する電力会社を自由に選べるようになった。最近では、法人向けのプランを用意している電力会社もある。相見積もりをとってみるのもいいだろう。

4.ITツールの導入

ITツールを導入して業務を効率化し、人件費の削減につなげる方法もある。

たとえば、質問に自動で回答してくれるチャットボットを導入することで、問い合わせへの電話対応業務を減らすのも1つの手法だ。ビジネスチャットやオンライン会議ツールを導入すれば、電話代や印刷代を削減することもできる。

5.マニュアルの整備

業務マニュアルの整備により、業務の効率化や時間短縮につながる。マニュアルがあれば、新入社員の教育にかかる時間や労力を削減でき、従業員を本来の仕事に専念させることができる。また、マニュアル化により商品やサービスの品質向上につながるのもメリットだ。

6.アウトソーシング

アウトソーシングとは、社内の業務を外部に委託することである。正社員が担わなくてもいい業務をアウトソーシングすることで、残業代を含む人件費の削減を目指せる。正社員を雇うのと違って、繁忙期だけ利用したり、業績が悪化したときは契約を終了したりして、臨機応変に活用できるのがメリットだ。

中小企業がコスト削減を成功させる3ステップ

それでは、中小企業がコスト削減を成功させるための手順を3つのステップに分けて解説していく。

1.現状を把握する

まず、決算書の損益計算書をみて、現状把握をすることから始めよう。コストの中で大きな割合を占めるものや、削減の余地がありそうなもの、そもそも内容がわからないものなどをピックアップし、どこにアプローチするかを決める。

2.コスト削減の方法を検討する

次に、どこに無駄が生じているか分析しながら、具体的なコスト削減の方法を考える。複数の選択肢を洗い出し、取り組みやすさや自社との相性も考慮して決めることが大切だ。

たとえば、「残業代を削減する」という目標に対しても、「ノー残業デーを導入する」「残業を承認制にする」「ITツールで業務を効率化する」など複数のアプローチ方法がある。

3.実行に移し効果を検証する

アプローチ方法が決まり実行に移したら、必ず効果を検証することが大切だ。1ヵ月など期間を定めて、取り組みの結果どのくらいコスト削減できたかを確認しよう。効果があれば継続し、効果がなければほかの方法を試す。このような取り組みを継続することで、無駄を減らせるだろう。

中小企業がコスト削減を成功させるポイント

中小企業のコスト削減では、経営者の独りよがりにならないよう注意が必要だ。続いて、コスト削減を成功させるポイントを2つ紹介する。

従業員を巻き込む

経営者がいくらコスト削減を促しても、従業員の協力が得られなければ、効果を出すことは難しい。うまく従業員を巻き込みながらコスト削減に取り組むことが大切だ。

たとえば、コスト削減のプロジェクトを立ち上げ、適性のある従業員をリーダーに抜擢するといった方法がある。また、管理職にコスト削減の重要性を伝え、人事評価で考慮すると伝えるのも1つだ。コスト削減に成功した事業所や部署を表彰するのもいいだろう。

具体的な仕組みやルールを作る

コスト削減に取り組むよう促しても、具体的な仕組みやルールを作らないと、うやむやになってしまうことが多い。

たとえば、部署ごとの消耗品費を計算して社内メールで共有するよう経理部門に指示する、1ヵ月に一度管理職を集めてコスト削減の目標と成果を発表する場をつくる、といった具体的な取り組みに落とし込むことが大切だ。

中小企業がコスト削減に取り組む注意点

コスト削減で利益を最大化できれば、会社にも経営者にも従業員にもメリットがある。しかし、誤った方法でコスト削減を実施すると、経営に悪影響が与えることがある。

たとえば、現場の声に耳を傾けずにITツールを導入した結果、かえって業務の負担が増え、残業代が増加することも考えられる。また、急激にコスト削減を推し進めようとした結果、従業員がミスをして商品やサービスの品質が下がってしまうリスクもある。

従業員の意見も取り入れつつ、自社に合った方法でコスト削減に取り組むことが大切だ。

コストを削減して会社を永続させよう

コスト削減は、会社に残るお金を増やし、経営の自由度を高めるには効果的だ。コストを把握し、無駄を省くことで、経営者も従業員もメリットを得られる。会社を長く存続させるためにも、定期的にコストを見直し、コスト削減に取り組むようにしたい。

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