営業マン
青木 宏樹 (あおき・ひろき)
高校を卒業してすぐに建築業界に就職。 会社員時代は、忙しい仕事の合間に休みを返上して「宅地建物取引士」と「建築士」の資格を取得。自己啓発の本を読み漁り実践を繰り返していたおかげもあり、会社員時代の27歳の時はすでに年収750万円。人並み以上の生活をしていた。それでも自分の思い描く生活はできないと考え、友人のツテもあって一度飲食店経営の手伝いを経験。夢にまで見た起業に憧れ、奮闘した。しかし、朝9時~深夜3時まで1日18時間、毎日休みなく過酷な肉体労働を強いられ、時給300円以下の低賃金で、精神的にも肉体的にも苦痛を受け挫折。そこでもう一度成功をつかもうと一人で別事業に取り組み、見事3カ月で実績を上げる。自身の会社も1期目は年商4200万円、2期目は年商5億円を達成。現在では3社の経営者として活動中。不動産や投資信託などの投資家としても活動中。自身の起業の経験を活かし、主にサラリーマン層に向けて収入アップの方法やコミュニケーションスキルのノウハウを発信している。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます

僕のモチベーションが“絶対に”下がらない理由

僕のところには、若い人たちからの仕事の相談がよく入ります。人の悩み事というのはさまざまな要素が絡んでいることなので、もちろんひとまとめにして語るなんていう乱暴なことはできないのですが、それでもたくさんの相談事を聞いていると、共通項が浮き彫りになります。

この本では主に営業について語りたいので、営業という仕事をしている人たちの悩みにフォーカスしてみると、共通しているのは「営業がもうイヤになった」「なんだかやる気がしない」というモチベーションの低下を嘆くものです。

「どうしてそう思うの?」

と聞くと、

「断られると、それまでの努力が無駄になるから落ち込んでしまう」
「迷惑そうな声を聞くのが怖い」
「どうせダメなんじゃないかと思うと何をやるにも億劫で……」

などという答えが返ってきます。

そして、口をそろえたようにこう聞くのです。

「青木さん、モチベーションってどうやったらキープできるんですか?」

そういうとき僕はいつも、ちょっと驚いてこう聞き返します。

「モチベーションが下がるって経験、僕にはないんだけど、それってどんな感じなの?」

相談者からは「ええっ、マジですか?」なんて呆れたような顔をされてしまうのだけど、本当に、今までモチベーションが上がったり下がったりしたという感覚はありません。ずっと、高値安定という感じ。いつでもやる気は衰えない。

これはきっと、僕自身の性格に由来するところが大きいとは思います。自分自身に対する成長意欲が強くて、常に何か新しいことをやりたくて仕方がない。どんなことも自分で体験してみたいし、難しそうなことでもとりあえずはチャレンジしてみたい。

たとえば、本書を執筆中に結構忙しいスケジュールの合間を縫ってタイに4日間という強行スケジュールで行ってきました。その理由は「タイに行ったことがないから、行ってみたい」、ただそれだけ。普通、旅行でタイに行く人は、「タイにはこういう食べ物があるから食べてみたい」とか「こういう景色が楽しめるらしい」というような目的があると思うのですが、僕の場合はそのずっと手前にいる感じ。

「まず、行ってみよう」

実際に行ってみたら何か起こるんじゃないかというワクワク感だけが行動の源です。

だから、行ってみてがっかりするということがない。目的をもって行った人は、たとえば料理が口に合わなかったりしたら「思ってたよりおいしくないな」と感じたり、景色も「期待していたほどじゃなかったな」なんて思ったりするかもしれません。でも、僕にはそれはない。何が起こっても「おおーっ」って喜んじゃうんです(良いことじゃなくても「うわっ。そう来たか~」「これが、タイなのか~」なんてね)。

結局、一事が万事で、仕事にも僕はこの感覚で取り組んでいるのだと思います。「やったことないからやってみたい精神」です。

たとえばテレアポの場合なら、リストに上がっている人たちはまだみんな「話したことがない」人たちなので、「話したことないから話してみたい」と思うとワクワクするというわけです。だから、モチベーション(ここでは「やる気」と翻訳)がまったく下がらない。新しい経験はいつも楽しみであり、かつ自分自身の成長につながる︱︱そう確信しているからです。

「相手」がいるから営業ができる

自信をなくしている営業マンの中には、「僕、なんだか、対人恐怖症みたいです」なんてことを言い出す人もいるのですが、それは、その人が営業の本質である「お客様と一緒にゴール」というイメージを理解できていないからです。お客様を、倒すべき敵くらいに思っている。倒す、というのが大げさなら、説得すべきとでも言いましょうか。とにかく、「説得する側」と「説得される側」という役割を振って、その間に大きな壁をつくってしまっているのです。

営業の現場には営業マンである自分以外に、最低でも1人の人が存在します。合わせて2人(以上)になったとき、営業が始まります。その「1人」と「2人」の違いというのをまずは改めて認識してもらいたいのです。

その違いとは?

「1人」の場合なら、自分のことだけを考えていればOKです。自分で考えて、自分のやりやすいように行動して、自分が好きなものを選ぶ。「自分はこれがいいと思う」ということを忠実に行えばいいわけです。

仕事を離れて考えるとイメージが湧きやすいと思います。たとえば、外食で何を食べるのか。旅先でどこを観光するのか。1人なら、すべて自分で決められます。

でも、「2人」になると、そういうわけにはいきません。

相手がいる場合は、その人が何を望んでいるのか、何を考えているのか、今何を必要としているのかを考えなければなりません。まさに「相手の立場に立って考える」実践が求められます。営業という仕事は、こちら側に属するものです。

ただし、「2人」は、壁を挟んで向き合っているのではありません(ここが大事!)。

イメージとしては、並んで、壁に向き合っています。その「壁」は、いま、お客様が乗り越えたいと思っている壁です。何かを不満に思っていたり、不便さを我慢していたり、あるいは「こうなりたい」という希望をかなえるために越えなければいけないハードル。そういうものに、2人で向き合って「どうやってこれを乗り越えていこうか」と協力し合うイメージです。

並んでいるイメージをいつも持つことができれば、自分だけが一方的に主張したり押し付けたりということは自然とできなくなります。

それよりも、

「あなたはどうしたい?」
「今、困っていることはない?」

という気持ちが生じて、相手から具体的な要望や悩みや希望を聞き出したくなるはずです。できる限り正確に知りたい、という思いが丁寧なヒアリングにつながります。

これが、まさに、僕の言うところの「営業」なのです。

今、営業が辛いなあと感じていて、なんだか行き詰まってしまった人は、一度、この「相手のことを隣において考える」というのをやってみてください。そうすれば、次にどうすればいいかがきっとクリアに見えてきます。行動の質が、変わります。何をしたらいいのか悩むことがなくなって、次から次へとアイデアも湧き出すはずです。

僕は最近、もっと文章を上達させたくて、プロのコピーライターの方から文章の書き方を教わっているのですが、その基本の考え方も僕の営業論と同じでした。

つまり、受け手側のことを考えて文章を書く。どう書けば、読んでもらえるのか。どんな言葉なら相手に伝わるのか。自分が書きたいように書くというのは、個人の日記なら好きにすればいいけれど、読者が一人でもいる場合にはNGです。いつでも「相手」の存在を考える。これは、営業だけにかかわらず、すべての仕事において大切なことです。