自民党は12月13日、畜産・酪農対策委員会(伊東良孝委員長)を開き、2023年度畜産物価格・関連対策の決定を報告し、価格等の決定に当たる決議を取りまとめた。
続けて開催された総合農林政策調査会(江藤拓調査会長)、農林部会(武部新部会長)合同会議でこれらを了承した。2023年度肉用子牛保証基準価格・合理化目標価格は黒毛和種、褐毛和種、その他の肉専用種でそれぞれ引き上げた。関連対策では飼料高騰対策や、「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」の後継事業として「和牛肉の需要開拓支援」に40.5億円を計上し、増加した冷凍を冷蔵中心の和牛肉流通に段階的に戻すための取組みに奨励金を交付する。
2023年度肉用子牛保証基準価格は、黒毛和種は前年度比1万5000円高の55万6000円、褐毛和種は同9000円高の50万7000円、その他肉専用種は5000円高の32万5000円に引き上げた。合理化目標価格は、黒毛和種が1万円高の43万9000円、褐毛和種が5000円高の40万円、その他肉専用種は3000円高の25万6000円に引き上げた。乳用種と交雑種は保証基準価格及び合理化目標価格ともに2019年度以降は据え置かれている。
緊急対策では、和牛肉の需要開拓支援(組替新規)に40.5億円とし、素畜価格が高い肥育牛が出荷される期間に当たる和牛肥育経営を支援する観点から、増加した冷凍を冷蔵中心の和牛肉流通に段階的に戻すため、食肉事業者が行う産地と連携した需要開拓の取組に対して奨励金を交付する。
災害・家畜疾病等への対策(組替)に36億円として、自然災害や家畜疾病により被害を受けた畜産農家の経営再開・継続に向けて、政府の方針と協調して支援を実施するとともに、家畜疾病互助基金の造成、基金加入農家に対する衛生指導、非常用電源を地域で計画的に導入する取組を支援する。
関連対策(ALIC事業)のうち畜産関係では、和牛生産者臨時経営支援事業として、市場等で取引される和子牛のブロック別(褐毛及びその他肉専用種は全国1ブロック)平均購買価格(四半期別、肉用子牛補給金制度を補完する臨時対策して措置)が、発動基準(黒毛和種:60万円、褐毛和種:55万円、その他肉専用種:35万円)を下回った場合、当該平均価格と発動基準の差額の4分3(マルキンにおける国と生産者の負担割合を念頭)を支援する。実施期間は2023年1月から12月までの1年間となる。
その他にも関連対策では、配合飼料価格安定制度のつなぎ拠出金の準備に最大79億円を措置し、補正予算における配合飼料価格高騰緊急対策(103億円)に対する民間積立がなされるまでの間、つなぎとなる拠出金を準備するもので、必要であれば今年度中に拠出を実施し、民間積立完了後に回収する。
肉用牛経営安定対策の補完事業には36.4億円(前年度同額)とし、子牛の早期出荷に資するほ乳強化の取組みを推進するほか、優良な繁殖雌牛の導入(1頭当たり4万円、高能力牛は5万円)を継続・推進する。
養豚経営安定対策の補完事業には12.9億円(前年度2億円)とし、特色ある豚肉生産のための種豚の導入支援のほか、野生イノシシへの豚熱経口ワクチンの散布等を支援する。
畜産環境対策では、補正予算においてたい肥の高品質化・ペレット化など広域流通等に必要な施設・機械導入の支援を拡充・継続しているが、関連対策として、家畜排せつ物処理施設の長寿命化対策に2.2億円とし、好気性強制発酵施設への低コストな改修事例の調査等を支援する。畜産環境関連施設などのリース支援等には1.2億円(1.2億円)とした。
その他、国産畜産物の安心確保対策には4.8億円(4.2億円)、負債整理や家畜伝染病発生農家等の資金対策に9.1億円(同額)、食肉流通の改善・合理化の支援対策には26.4億円(36.8億円)、肉骨粉などの適正処分対策に58.7億円(同額)、配合飼料価格低減に向けた取組みの推進に1.5億円(同額)が措置されている。
価格・関連対策を了承した後に取りまとめられた決議では、牛マルキンなど経営安定対策や配合飼料価格安定制度の着実な運用、耕畜連携による飼料・肥料の国産化推進、畜産の再生産確保と持続的発展、肉用牛の繁殖基盤を強化するための繁殖雌牛の増頭支援や簡易牛舎の整備などの取組み推進、輸出促進、持続的な経営継続のための金融支援、家畜疾病対策などを盛り込んだ。
〈畜産日報2022年12月14日付〉