矢野経済研究所
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2022年12月
主任研究員 金 龍京

筆者は矢野経済研究所のソウル支社に勤務している。そのため、日韓両国のビジネスの形態を自然に感じとることができる。
その中で一番大きな違いとして感じたのが両国の企業が目指すビジネス対象エリアである。韓国は総人口約5,000万人で、日本の約3分の1程度の小さな国である。そのためか、韓国企業は韓国国内に限ってビジネスを行うことはあまりないように思われる。その反面、日本は大手を除いた多くの企業が日本国内を対象にビジネスを行っているのではないだろうか。

当社は、ここ数年間(一財)日韓産業技術協力財団、(財)韓日産業・技術協力財団主催の‘日韓ビジネス商談会’のコーディネート業務を行っている。数年前から続く新型コロナウイルス感染拡大の影響から今年はオンライン・オフライン両方に対応するハイブリット型で実施した。韓国で実施した今年の商談会に参加したある日本企業の担当者は、自分がビジネスをやっている中で一番驚いたのが韓国は2~3人規模の小さな企業ですらもビジネスのターゲットをグローバルにしていることで「大反省」したと発言した。

筆者はこの発言に共感した。ソウル支社では日本本社と同様に自社発刊の市場調査レポートを販売しているが、韓国企業からよく聞かれるのはレポートの調査対象地域がグローバルではないのかということである。自社発刊資料の多くは日本の国内市場を対象にしており、日本企業向けの販売は好調である。これは、日本国内市場のみの市場調査レポートでも現時点では日本企業から受け入れられているのが現状だということだろう。

日本の中小・中堅企業の中には世界的に誇れる高い技術力を有している企業が数多く存在する。それにも関わらずこのような企業の技術がグローバル市場で十分に展開されているのか、一度考えてみるべきだろう。

日本企業は世界市場を視野に入れることで国内の限定的な需要から脱皮し、もっと大きな需要と利益を狙っていって欲しい。もちろんそのためには海外市場開拓に向けた人材の確保や経営ビジョン、海外拠点の設置に伴うさらなる投資など解決すべき課題は大いにある。これらの課題を一気に解決できるところはそれ程多くないと思う。しかし、国内事業を行う最中でもグローバル市場を念頭に置いて事業を営んでいる人とそうでない人の結果は異なってくるだろう。

日本企業がグローバル化を図るべき理由としては、国内市場の縮小、海外市場の大きさ、人件費の安さ、取引先の海外進出などが挙げられる。
日本では少子高齢化に伴い人口減少が続いている。これはそれだけ国内での消費量が少なくなることを意味する。一方、日本の人口が減少傾向にあるのに対して世界の人口は増え続けている。現在、人口が大きく増加している地域は主にアジアとアフリカで、具体的にはインド、ナイジェリア、インドネシアなどである。これらの国は人口増加に伴い、さらなる市場規模の拡大が見込まれると言える。
また、少子高齢化の影響は労働力の確保が難しくなり人件費が高くなることに繋がる。現在、発展途上国は先進国に比べて人件費が安く、日本国内の20%程度に抑えることができると言われている。但し、これらの国も経済発展と共にいずれ人件費が高くなるだろうから、人件費の安さだけでなく、長期的な視点を持って海外に進出する必要があると言えるだろう。 また、グローバル展開を実施している大手企業の多くは、自社の海外拠点の近くでモノを調達したいという要望が強く、取引先との関係を継続させるために海外進出を検討する企業もある。 このように日本企業が海外進出するメリットとして販路の拡大やコスト削減(人件費・税金・材料費など)が挙げられている。

日本国内と比較しても世界には何倍何十倍の市場が待っており、大きなビジネスチャンスを掴める可能性が高い分、日本企業は国内だけに留まらず是非グローバル展開を図り、優れた日本の技術を世界に知らせて欲しい。