2018年度の医薬品原薬・中間体市場は前年度比3.0%増の4,430億円の見込
~国内医薬品生産金額の低成長を反映し、2016年度以降の成長率は2~3%増と鈍化~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の医薬品原薬・中間体市場を調査し、市場動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。
医薬品原薬・中間体の市場規模推移
1.市場概況
2018年における国内医薬品生産金額(輸入品は除く)は約6兆8,400億円※と推測される。2018年度の国内の医薬品原薬・中間体市場規模(生産金額ベース、自社生産分を除く)は4,430億円の見込みで、国内医薬品生産金額(輸入品は除く)が横ばい推移する一方で、医薬品原薬・中間体市場の2014年度から2018年度までの年平均成長率(CAGR)は3.5%の見込みである。
国内医薬品生産金額(輸入品は除く)は、薬価改定、主力品の特許失効とジェネリック医薬品の使用促進、国内製薬企業における新薬承認数の減少などが影響し、近年はプラス成長とマイナス成長を繰り返す状況が続いている。これに対し、医薬品原薬・中間体市場は成長を継続している。
製薬企業は収益向上に向けて経営の効率化を図っており、とくに製造部門の外部委託を推進する企業が多い。医薬品原薬・中間体市場もこうした製薬企業の外部委託強化の流れに乗っている他、従来からの専門企業に加え、総合化学企業をはじめとする化学企業や海外企業の参入も市場拡大の一因となっている。
※厚生労働省「薬事工業生産動態統計調査」より引用
2.注目トピック
品質管理体制の整備に対する要求が高まる
市場参入企業に対しては、GMP(Good Manufacturing Practice)基準のクリアなど品質管理体制の整備に対する要求が高まっている。品質管理体制の確立は、近年高まりを見せている要望というよりは発注の際の基本的な条件ともなっており、受託企業にとってはクリアが不可欠な状況となっている。さらに、グローバル化に伴って、FDA(Food and Drug Administration:米国食品医薬品局)レベルの体制が求められている。品質管理体制をベースに、価格や納期、安定供給能力、技術力など、様々な対応が求められている。このうち、価格については以前から継続的に要望が多い他、最近は開発初期段階を中心にスピードアップに対する要望が重視されており、納期の短縮化が進展している。受託企業としては、コストダウンに対応する一方で、品質管理体制の強化、開発のスピードアップを実現しなければならない。
さらに、継続的な設備投資が必要とされる。受託事業を展開する上では、最新鋭設備を導入し顧客(製薬企業)にアピールすることが重要である他、受託の中心が大型品目から少量多品種に移行するなど顧客ニーズの変化への対応も必要とされる。大規模設備は少量生産には適さない他、コストも見合わないため、生産量に応じた設備が必要とされ、高薬理活性医薬品に対応するためには専用設備が必要である。
3.将来展望
今後の医薬品原薬・中間体市場を予測する上で、成長要因と阻害要因を検討する必要がある。成長要因としては、製薬企業の外部委託の推進、製薬企業の製造設備の再編、高薬理活性医薬品の外部委託の推進、中分子医薬品の開発促進、国内医薬品原薬・中間体企業の海外生産、中国における環境規制の強化などが挙げられる。一方、阻害要因としては、ジェネリック医薬品の使用促進、国内製薬企業における新薬承認数の減少、大型上市品目の減少、大型新薬の特許切れ一巡、海外企業の台頭などが挙げられる。
大手製薬企業を中心に製造委託がさらに拡大すると見込まれる他、参入企業の増加と営業展開の強化、製造受託企業の設備増強や品質レベルの向上に伴う信頼性の向上などを背景に、受託案件の増加が挙げられる。ただし、ジェネリック医薬品の使用促進に伴う長期収載品の製造量減少、薬価改定などを背景に成長率が鈍化する可能性が高い。さらに、製造受託がある程度までの拡大を遂げたことで成長率の鈍化が見込まれる他、参入企業の増加に伴う競争状況が一段と激化する見通しである。