再生医療市場,2019年
(写真=metamorworks/Shutterstock.com)

制度整備の進展や政策的後押しを背景に市場化・産業化の本格化、視野に

-産業化への国の意図は不透明-

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、再生医療関連市場を調査し、参入企業動向、海外動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

 再生医療についてはその実用化に関する環境整備の遅れがかねてより指摘されていたところ、再生医療における研究開発から実用化に向けて新たな施策の総合的な推進を図ることを目的として、迅速かつ安全に再生医療が提供されることを前提にその提供のための環境整備、審査・評価制度について国が推進していくことを宣言した再生医療推進法が公布され、これを受け再生医療等安全性確保法および医薬品医療機器法が2014 年11 月に施行された。再生医療等安全性確保法では、再生医療等の対象範囲およびその技術が定義づけられ、実用化までの基本的枠組みが示された。また、改正薬事法たる医薬品等医療機器法では再生医療等製品の特性を踏まえ上市に向けた規制が構築されるなど再生医療の実用化に向けた法整備が進められた。

 規制・制度面の整備に加え、再生医療実現拠点ネットワークプログラムといった国家プロジェクトを通じて10 年間におよそ1,100 億円に及ぶ研究支援を謳うなど経済面でのバックアップを背景に再生医療の市場化が進んでいる。

 再生医療等製品については、2009 年に再生医療の製品として初めて保険適用となった自家培養表皮ジェイスを始めキムリア点滴静注及びコラテジェン筋注用4mg を加え日本では7 製品が製造販売承認を取得している(うち保険適用は6 製品)。製品形態的には、組織製品で1 品目、細胞シート製品で2 品目、細胞医薬品で4 品目を数えるまでに拡大してきた。

 また、海外における主な再生医療等製品は66品目を数える。国・地域別にみると国単位では韓国が最も多く19品目にのぼる。13品目の米国がこれに次いでいる。地域的には欧州が19品目で韓国に並ぶ。その他は、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、中国である。 ※品目数等定量データは調査時点のもの。

2.注目トピック

再生医療等製品の上市

 ステミラック、キムリア、コラテジェンと2018 年から2019 年にかけ再生医療等製品の上市が相次いだ。日本国内初の再生医療等製品であり2009 年に保険収載された培養皮膚ジェイスの上市からこれで7 品目の再生医療等製品が上市ないし承認となった。

 現在、臨床開発中の再生医療等製品についても、癌や中枢神経系疾患の治療薬など開発が進んでおり、順調に推移すれば2020 年以降での相次ぐ製品上市が期待されている。

 また、既存製品については、急性移植片対宿主病治療薬テムセルの表皮水疱症、培養皮膚ジェイスの先天性巨大色素性母斑、表皮水疱症、あるいは培養軟骨ジャックの外傷等に起因する二次性の変形性膝関節症と適応拡大による製品価値最大化の動きも出てきている。当初よりフランチャイジングを視野に入れた研究開発も進められており、今後こうした動きが更に加速することが予想される。

3.将来展望

 市場のプレーヤーが拡大する中、研究開発は着実に進んでおり、キムリアとコラテジェンの承認で国内の再生医療等製品(承認ベース)は7製品を数えるに至った。治験についても、2020年前後の終了・承認申請を目標・見通しに掲げる企業が増加、順調に進展すれば今後製品上市が相次ぐ可能性が高まっている。

 iPS細胞の臨床応用も2014年に黄斑変性患者、2018年にはパーキンソン病患者へと移植が実施されており、再生不良性貧血、重症虚血性心筋症、脊髄損傷、角膜上皮幹細胞疲弊症への臨床研究も予定されている。安全性と有効性の検証が続いていくが、疾患治療への応用に向けiPS細胞研究も着実な進展をみせている。