IoT/M2M市場,2019年
(写真=metamorworks/Shutterstock.com)

2018年度の国内M2M市場は前年度比7.5%増の2,010億円と好調を持続

~LTE対応通信モジュールを中心として、主要3通信キャリア及びMVNOのサービスがともに堅調に推移~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内外のM2M市場を調査し、市場規模、セグメント別の動向、参入企業動向、注目技術動向、将来展望を明らかにした。

国内M2M市場規模推移・予測

国内M2M市場規模推移・予測

1.市場概況

 2018年度の国内M2M市場(事業者売上高ベース)は2,010億円で、前年度比7.5%増となった。同年度では、LTE(Long Term Evolution)対応の通信モジュールを中心として、主要3通信キャリア及びMVNOのサービスがともに堅調さを維持している。前年度2桁伸長での反動はあったものの、依然としてマーケットは拡大基調にある。 2019年度はLTE対応の通信モジュール導入が一巡したことや、MVNO関連需要もやや鈍化傾向にあり、全体としても伸びが低下したことで、前年度比6.0%増(120億円増)の2,130億円を見込む。

2.注目トピック

産業向け「5G」× IoT / M2Mの可能性

 2020年代の中頃になると、既存の4G/LTEや有線ネットワーク、無線LANなどを代替する形で、産業用途での「5G(第5世代移動体通信システム)」× IoT/M2Mマーケットが登場してくると考える。5G活用に関しては、通信キャリアを中心にITベンダー/SIer、各種研究機関、ユーザ事業者などが連携して様々な実証試験を行っており、課題抽出や検証が進み、PoC(概念実証)に入っている案件も少なくない。

 産業向け5G活用としては、当面は交通インフラ(自動車関連)及びエネルギー関連が最大のターゲットになる。交通インフラでは、5Gは自動運転の実現には不可欠なテクノロジーであるが、自動運転では他の要素技術の進展も必要であり、一般車両/公道での実現は2030年前後になると考える。それよりは、車車間通信(V2V)や路車間通信(V2I)、さらには歩車間通信(V2P)での基盤として5Gを活用することで、安全運転支援や遠隔運転支援、スマートシティの実現といったソリューションの高度化が期待される。

3.将来展望

 M2M市場は、2020年度以降も引き続きMVNO関連分野での新規需要開拓が見込まれるものの、マーケット構造として、従来タイプのM2MがIoTに置き換わる流れが継続することで、M2MとIoTとの境界は一層透明化し、場合によってはM2M自体の呼称が消失する可能性もあると考える。実際、大手ITベンダーや通信キャリアなどでは、ここ2~3年でM2Mを冠した組織が急速に消失している。
但し、従来型の携帯電話規格に準じた通信モジュールを使ったM2M通信需要は底堅く、仮に名称が消えたとしても、M2Mビジネスは堅調な推移を続け、2023年度の国内M2M市場(事業者売上高ベース)は2,570億円になると予測する。