アフリカ各国の“中国化”が加速? 中国共産党出資の「一党制・国家主導者」養成校開設
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中国共産党が4,000万ドル(約55億2,817万円)の資金を提供したリーダーシップ養成校がタンザニアに開校し、初めての研修が行われた。タンザニア、南アフリカ、モザンビーク、ジンバブエ、アンゴラ、ナミビアの6ヵ国から将来有望な与党幹部を集め、一党制と国家主導を軸とする中国統治と経済モデルを伝授することが目的だ。

習国家主席「世界は100年に一度の大きな変化を経験」

サウスチャイナ・モーニング・ポストなどのメディアによると、2022年2月にタンザニア東部の都市キバハで開校した「ムワリム・ジュリウス・ニエレレ・リーダーシップスクール(Mwalimu Julius Nyerere Leadership School)」は、中国共産党と南部アフリカ諸国の6つの与党が資金を提供して建設したものだという。

「アフリカ各国の政党と国政運営の経験の交流及び相互学習」をテーマに、5月下旬から約2週間の期間、中国共産党の主催で開催され、120人の幹部が研修に参加した。

習近平国家主席は参加者宛ての祝辞の中で、現在、世界が「100年に一度の大きな変化」を経験しているとし、「中国・アフリカの団結と協力の強化、リスクや課題への取り組み、共通の発展の促進、人々の幸福の増進がこれまで以上に重要である」と強調した。

養成校は6カ国の政党が統治能力を向上させるための「重要なプラットフォーム」を提供し、「各国の発展と活性化を促進する上で積極的な役割を果たす」「中国とアフリカの友好関係を積極的に深め、その精神を継承・発展させることを望んでいる」とも呼びかけた。

中国のアフリカにおける影響力拡大に懸念の声

その一方で、養成校の存在を「中国共産党中央党校(中国共産党の高級幹部の養成機関)の分校」と見なし、その影響力と支配力の拡大に懸念を示す声もある。

ニューヨークタイムズ紙は、共産党が1921年の設立とほぼ同時に国内に高級幹部の養成機関を発足させ、何世代にもわたって「理想の幹部」を養成していると指摘した。ちなみに中国国内の養成機関の歴代の学長には、毛沢東や習近平が名を連ねている。

このような背景から、「アフリカでも同様の戦略を展開しようとしている」と一部の専門家が危惧を抱くのも無理はない。

中国政府の狙いが、アフリカ各国の政党との関係を強化すると同時に独裁体制連合を作り、アフリカにおける影響力をさらに強めることにあると見て間違いないだろう。

アフリカ各国は「共産党のイデオロギー」を模範にする?

しかし、これら6ヵ国が「自発的に」中国の統治と経済モデルから学ぶことを目指している点は念頭に置くべきである。

一帯一路プロジェクトを含め、近年、発展途上国に対する中国の影響力の拡大が国際社会から批判を受けているが、中国とアフリカは古くから親交が深かった。中華人民共和国外交部の資料によると、その歴史は海路による直接の交流を開始した7世紀にさかのぼる。それ以来、中国とアフリカの貿易と文化・経済・政治・軍事的交流は広がり続けてきた。

例えばタンザニアは南部アフリカ諸国と同様に、ジュリウス・ニエレレ政権下で1960~70年代にわたって毛沢東主義と中国共産党の支援や影響を大きく受けた。また、ジンバブエのエマーソン・ムナンガグワ大統領は、1960年代に南京の陸軍士官学校に通って訓練を受けた経験もあるという。

さらに新型コロナウイルスのパンデミック以前には、年間数百人のアフリカの役人が共産党の政治・経済モデルを学習する目的で中国を訪れていたという。

つまり、6ヵ国の指導者にとって、中国共産党のイデオロギーは中国の社会的・経済的成功の象徴であり、それを模範とすることで自国の発展を促すという思想が受け継がれてきたのだ。

リーダーシップ養成校の開設は、このような思想や概念をより強める役割を果たすとの見方が強い。

「第二の中国」にはならない?

これに対し、「中国の一党制・国家主義体制をそっくりそのままアフリカに植えつけ、支配力を強化しようとしている」という解釈は誤りだとの指摘もある。

フランス国立科学研究センターの上級研究員兼香港バプテスト大学の研究教授であるジャン・ピエール・カベスタン氏は、国立アジア研究局を介して発表した論文の中で次のように反論している。

中国は特にサハラ以南(サハラ砂漠より南の地域)との関係強化に注力しているが、その目的はアフリカを「第二の中国」にすることではなく、中国式の統治や経済組織、「(中国式の)民主主義」を促進することだという。

一方、元駐エチオピア米国大使でジョージ・ワシントン大学エリオット国際関係大学院のデビッド・シン教授は、6与党は養成校に対してそれぞれ異なる期待を抱いているが、「政治権力を永久に保持する方法を学ぶためのものと考える傾向がある」点は共通していると述べた。

今後も拡大する中国の存在感

カベスタン氏は、2021年11月の第8回中国アフリカ協力フォーラム(FOCAC)で発表されたホワイトペーパーを引用し、中国共産党がサハラ・アラブ民主共和国を除くアフリカ連合(AU)54カ国中51カ国、合計110の政党と関係を築いている点を主張している。

これはすなわち、今後中国がアフリカで存在感を増していく可能性を示唆しているのではないだろうか。

文・アレン琴子(英国在住のフリーライター)

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