日本植物油協会は5月24日、千代田区の如水会館で、令和4年通常総会で新会長に就任した新妻一彦会長(昭和産業社長執行役員)が会見を行った。油糧種子が高騰する中、適正価格実現の取り組みを粘り強く継続し供給責任を果たしていくこと、日加(日本とカナダ)や日米パートナーシップといった各国政府や団体との連携の継続的な発展に努めることなど、今後の抱負を語った。
足元の状況として、「コロナ禍に伴う消費低迷の影響もあり、わが国経済は大きな影響を受け、昨年のGDPはリーマンショックを超えて戦後最大の落ち込みを記録し、現在も低迷を脱していない。植物油業界をはじめとした食品産業も、国民の命を守るため、安定した食料生産とサプライチェーン機能維持の役割を果たしてきたが、業務用中心に厳しい環境が継続している。今後とも植物油の安定供給の維持継続と、消費拡大への取り組みを強化していく」とした。
油糧種子の高騰に触れ、「国連食糧農業機関(FAO)が毎月公表している世界食料価格指数は、昨年以来、植物油が歴史的な価格水準を維持しており、その原料となる油糧種子が高騰を続けている。さらにロシアによるウクライナ侵攻により、油糧種子を取り巻く環境は一段と不透明さが高まっている。世界的な植物油価格の高騰は、そういった特殊要因もあるが、供給面では温暖化に伴う異常気象の干ばつなども影響し、原料となる油糧種子の大幅な生産減少、需要面ではカーボンニュートラルの世界的潮流のもと、バイオ燃料の需要拡大など、需給両面で変化が進展していることが背景にある。このような変化は一過性のものではなく、長期的継続する構造的な変化であり、こうした変化に対応した国内市場の構築は喫緊の課題だ」との認識を示した。
その上で、「我が国における植物油業界は厳しい原料事情の中にあるが、消費者に安全で安心な商品を安定的に届けるためにも、適正価格実現の取り組みを、今後とも粘り強く継続し、命を守る植物油のサステナブルな供給責任を果たしていくことがますます重要になってきている」と語った。
〈会員相互がフェアな競争を行いつつ、一致団結して業界の健全な発展を推進〉
次に環境面の課題について、「植物油業界はSDGsを踏まえたサステナビリティの確保に積極的に取り組み、温室効果ガスについても、他業界より高い水準で削減してきた。今後、各社の現状を踏まえ、着実に削減努力を継続していく。また、プラスチック資源循環促進法がこの4月に施行されている。これまで業界として取り組んできたリデュース(廃棄物の発生を少なくすること)に引き続き取り組むとともに、ケミカルリサイクルなど新たな技術にも注視していく」と説明した。
植物油の価値向上に関しては、「日油協の最新アンケート調査でも、オリーブ油、ごま油、こめ油、アマニ油、えごま油など、多様な油が注目を集めており、コロナ禍にあっても、家庭の食卓に登場するメニューに使用頻度が増えている。こうした動向を踏まえ、コロナ禍で生じた閉塞感を打破し、新たな植物油の時代を創出していくために、植物油全体の価値、評価を一層高め、市場活性化に向けたさらなる努力に傾注する必要がある。今後も積極的に広報普及活動をしていく」と述べた。
また、「22年度事業計画を踏まえ、国際的には日加、日米のパートナーシップなど、各国政府や団体との連携の継続的な発展に努めるとともに、国内では消費者や関連ユーザーなど、植物油を使ってもらっている人たちに植物油の価値をこれまで以上に深く理解してもらえるよう、努力していかねばならない。植物油の健康価値について、時宜を得た正しい情報を市場に提供するため、関係機関との連携を一層強化し、レシピや調理適性など、価値ある情報を発信していく」と展望を述べた。
続いて、「今後、国内の内外、分野を問わず、さまざまな事態が重層的に生じてくることが予想される。当業界は、わが国フードシステムの基幹的産業であり、国民の命を支える植物油を、安全、安心、安定的に消費者に届ける責務を有する。会員相互がフェアな競争を行いつつ、一致団結して業界の健全な発展を推進していくことが重要だ」と語った。
〈大豆油糧日報2022年5月25日付〉