トヨタの平均年収っていくら? コロナ禍の影響はある? 自動車メーカー大手3社を比較
(画像=BjörnWylezich/stock.adobe.com)

新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい始めてから2年あまりが経過。この間、多くの企業がサプライチェーン寸断による半導体不足や物流混乱で生産面でも大きな影響を受けた。

自動車業界も例外とは言えないが、大手3社の平均年収からはコロナ禍にあっても経営の強さが垣間見える。本記事では、自動車メーカー大手3社のトヨタ・ホンダ・日産の平均年収を紹介する。

自動車の売上高は年収に反映する?

日本の自動車メーカーでは、世界販売台数も企業規模を示す時価総額もトヨタがトップだ。3社の売上高は下記の通り。

トヨタの平均年収っていくら? コロナ禍の影響はある? 自動車メーカー大手3社を比較

2020年3月期のトヨタの売上高はホンダに対して約2.02倍、日産に対して約3.05倍となった。2021年3月期はホンダに対して約2.27倍、日産に対しては約3.78倍だ。

上記を踏まえ、各社の年収を見ていこう。企業の給与体系は、年齢・勤続年数・職種・役職などのさまざまな基準で決められるものである。売上高はどのように反映されるのだろうか。

トヨタの平均年収は?

まずはトヨタから見ていこう。有価証券報告書によると2021年3月31日現在のトヨタの平均年収は858万3,267円となっている。

トヨタの平均年収っていくら? コロナ禍の影響はある? 自動車メーカー大手3社を比較

前年同期と比べると従業員数は2,759人減少している。しかし平均年齢および平均勤続年数は微増。人員体制の若返りを実施したとは考えにくいが平均年収が約7万5,000円下がっているのは、売上減少による賞与減とも考えられる。

ホンダの平均年収は?

次にホンダの平均年収を見てみよう。有価証券報告書によると2021年3月31日現在のホンダの平均年収は798万9,000円。トヨタに比べて平均年齢が高く、平均勤続年数も長い。しかし、平均年収は約59万円ほど低い。

トヨタの平均年収っていくら? コロナ禍の影響はある? 自動車メーカー大手3社を比較

平均年収は、前年に比べて約17万9,000円低下している。ホンダは、主に四輪事業において同社と株式会社本田技術研究所のデザインなど一部機能を除く四輪商品開発機能を統合、ならびにホンダエンジニアリング株式会社を合併。それに伴い前年に比べて従業員数は1万人増えている。

そのため前年の平均年収と比べて下がった要因がコロナ禍の売上減少の影響とは、一概には言い難い。平均年齢、平均勤続年数が若返りをしていることが同社資料から見て取れるが、従業員体制の変化が関係していることも推測できる。なおEVシフトを見据え、担い手となる社員の世代交代を図ることを目的に、2021年4~5月にかけて55~64歳未満の従業員を対象に希望退職を募った。

これに2,000人を超える応募者があったため、2022年3月末の平均年収はさらに下がることも予想される。

日産の平均年収は?

最後に日産の平均年収を紹介する。同社の2021年3月31日現在の平均年収は796万5,467円。トヨタに比べると平均年収は62万円程度下がるが、ホンダとは2万円程度と僅差。売上高もホンダの6割程度であるにもかかわらず、平均年齢はホンダよりも低く平均勤続年数も短い。

トヨタの平均年収っていくら? コロナ禍の影響はある? 自動車メーカー大手3社を比較

同社の平均年収は前年に比べると約13万7,000円の低下。冒頭で各社の売上高を見たが、ホンダは前年比-11.4%であるのに対し日産は前年比-20.2%と減少率が大きいにもかかわらず、下げ幅はホンダより小さい。これらのことから自動車業界の平均年収は、売上高や企業規模に必ずしも比例していないことが分かる。

コロナ禍に見る自動車業界のリスク

国税庁の「令和2年度 民間給与実態統計調査」によると2020年度における日本の給与所得者の平均年収は433万円。世界各地で起こったロックダウンや半導体の供給不足に伴う減産で自動車メーカー各社は苦戦を強いられた。2回の大幅減産を余儀なくされたが、自動車大手3社の平均年収は高水準を保っている。

通常、減産は固定費負担の増加で収益を悪化させるが、人件費……つまり給与への影響はないのだろうか。そのカギを握るのは、生産と販売のバランスと考えられる。コロナ禍では、地域バランスの重要性が露見した。コロナ禍の自動車メーカー各社のなかで特に大きな影響を受けたのは、生産地域が集中していて販売の分散度の高いメーカーだ。

少ない生産拠点から世界各地に分散して出荷するということは、物流の距離が長く仕向地が多いということである。コロナ禍の移動制限が長く続く状況ではディーラーへ卸すことができず、既存出荷分が一時的にポートに留め置かれてしまう。その分費用も発生してしまい収益を圧迫するのだ。今回見た大手3社は、販売地域に応じて生産地域を分散させておりバランスがいい。

それが収益および給与への影響を抑えた要因とも考えられる。しかし長く続く減産で需給ひっ迫による価格上昇が長引けば、旺盛な需要を冷やしかねない。今後の各社の調整力に注目したい。

續 恵美子
著:續 恵美子
ファイナンシャルプランナー(CFP®)。生命保険会社で15年働いた後、FPとしての独立を夢みて退職。その矢先に縁あり南フランスに住むことに。夢と仕事とお金の良好な関係を保つことの厳しさを自ら体験。こうした経験をもとに、生きるうえで大切な夢とお金について伝えることをミッションとして、マネー記事の執筆や家計相談などを行う。
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