コンサルタントの薦める至高の1冊『修身教授録』

『修身 教授録』は、1937~38年に、哲学者の森信三が師範学校の修身科で教えていた際の講義録です。

深く人生の真義並びに生き方の本筋について言及している名著です。今回は、識学理論に沿って、本書のポイントを解説してきたいと思います。

目次

  1. 位置認識
  2. 結果設定を部下に任せてはならない
  3. 変化を嫌ってはならない
  4. 「恐怖」の意識
  5. 目標の性質

位置認識

本書はまず、「われわれ人間にとって、人生の根本目標は、結局は人として生をこの世にうけたことに真の意義を自覚して、これを実現する以外にない」と説くことから始まります。

「真の意義」に改めて深く思いを致すとき、「『個』は『集団の一部』である」との事実にたどり着くことができると著者は言います。

多様性が尊重される昨今、集団よりも個をまず強く認識する風潮が広がっていますが、自らの位置が周囲の認識とずれてしまうと、自身の価値を発揮することは難しくなります。

その点、個は集団の一部であるという認識を持つことができれば、この誤りから容易に脱することができるでしょう。

企業ではどうでしょうか。

企業が、「自らの真の意義を自覚して、これの実現」を追求するとき、正しい位置認識をしたのであれば、次はどこに向けて、いつまでに到達すべく動くかを決めていく必要があります。

つまり、「何」を「いつまでにする」との「結果」を設定していくことになります。

結果設定を部下に任せてはならない

識学では部下を迷わせずに集中させることがマネジメント上極めて重要だとお伝えしています。

しかしながら、多くのリーダーは部下のモチベーションを尊重するあまり、この結果設定を部下に任せています。言い換えれば部下の裁量に配慮するマネジメントを実践してしまっているのです。

部下にとって働きやすい環境をよかれと思って整えますが、そのマネジメントが逆に部下に迷いを生じさせたり、部下との間に感情的な軋轢を招いたりしているのです。

そして、そのことに気づいていないリーダーがあまり多いのが現実です。

「多少なりとも感謝の念の起こらない間は、真に人生を生きるものとは言い難い」と著者は説いています。

自らの結果設定が相手の求める内容と一致しないとき、個人にとっても組織にとっても感謝には至らないという事実に正対することが、経営者にとって、極めて大切だと言えるでしょう。

変化を嫌ってはならない

著者は「真面目」という極めて日常的な単語を使って変化の重要性を説いています。

「真面目という字を真という字の次に、『の』の字をひとつ加えてみたら『真の面目』と読まねばならなくなる。真面目ということの真の意味は、自分の『真の面目』を発揮する事。真面目な生活に入るには、どうしても時間の無駄をしないということが、何よりも大切な事柄となる」

『修身 教授録』より

識学も、「世の中のありとあらゆるものは時間のなかに生きているため、どこかが常に変化している。

設定した結果を実行するためには変化が必要である」と説いています。

人間は経験を積めば積むほど変化を拒むものです。しかし、変化がないと、自らの真の意義の実現は叶いません。

「恐怖」の意識

本書の「死生の問題」の章では、「自己の生に徹することによって生を超えるとともに、そこにおのずから死をも超える道が開かれる。かくして人生を真に徹して生きる人には、生死はつねに一貫となり、さらには一如ともなるわけであります」と解説しています。

求められていることを正確に把握し、それに応える生き方こそ、恐怖を正しく認識することとなり、恐怖心に対応する正しい態度だと著者は語ります。

識学では「恐怖とは、変化の意識を抑制する意識のことである。ヒトは未経験の物事に自然と恐怖心を覚える。危険を察知する恐怖心は本能として携わっており、生きていくために必要な感情である」と説いています。

恐怖を正しく認識できなければ、自らの真の意義の実現から遠ざかってしまうのです。

目標の性質

著者は、「大志抱け」という名の章で、次のような薫陶を発信しています。

「野心とか大望というのは、自己中心のものです。すなわち自分の名を高め、自己の位置を獲得することが根本動機となっているわけです。ところが、真の志とは、この二度とない人生をどのように生きたら、真にこの世に生まれてきた甲斐があるということを考えて、心中に常に忘れぬということでしょう。ですから結局最後は、『世のため人のために』というところがなくては、真の意味で志とは言い難いわけです」

識学では、目標を「位置・結果・変化・恐怖が確定した状態で、それらを完了するためにどのような優先順位で行動すれば良いかが決定される性質を持つ意識」と定義しています。

目標の質が上がれば、目標を達成するまでの行動の質も上がります。

目標を正しく設定できなければ、結果に到達できず、損失時間を発生させてしまうのです。

他者から設定されている目標を誤って認識したまま「達成した」と報告しても、評価は獲得できません。

自分らしく生きることがフォーカスされる今、部下に正しく目標を設定できていますか。その部下は正しくその目標を認識できていますか。

経営者の方に向け、改めてこの二つの問いを送りたいと思います。

私は、経営者がよかれと思って行っているマネジメントが、個人の成長にブレーキをかけ、逆に組織を衰退させているという現実を多々目にしてきました。

私は、個人が成長して、その成長を組織の発展に繋げていくテーマの最適解が識学だと考えています。

ぜひリーダーの皆さんの組織が未来に向かって、長期的視野で成長できるように、お手伝いしたいと思います。