テレワークに経営者の70%が「戻したくない」 コロナ再拡大でも断固拒否?
(画像=Ameashi/stock.adobe.com)

コロナ禍により、半ば強制的にテレワークを導入することになった企業は多い。テレワークは生産性の向上などに寄与し、従業員のワークライフバランスの向上にも成果をあげた。しかし、感染拡大が再び起きる中、出勤を増やす方向で動いている経営者も少なくない。なぜか。

2021年末時点のテレワーク実施率は、東京都で56.4%

まず、テレワーク導入の実態について把握しておこう。東京都は毎月、都内の民間企業に対し、テレワークの実施状況に関するアンケート調査を行っている。以下がその結果だ。

テレワークに経営者の70%が「戻したくない」 コロナ再拡大でも断固拒否?
出典:東京都「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!12月の調査結果」

新型コロナウイルスが日本で流行し始めた2020年3月ごろは、実施率はわずか24.0%だった。しかし翌4月に緊急事態宣言が出されると、テレワークを導入する企業が急増し、実施率は62.7%まで跳ね上がった。

その後、新型コロナウイルスの感染の拡大状況によって実施率は上下を繰り返し、最新の調査結果である2021年12月時点では56.4%となっている。実施率が下がったということは、感染拡大が収まったタイミングでテレワークを実施しなくなった企業もあるということだ。

ちなみに、「従業員規模別」では、従業員数が多い企業の方がテレワークを実施している比率が高い。2021年12月時点で、従業員数が「300人以上」の企業は73.2%、「100~299人」の企業は63.8%、「30~99人」の企業は50.2%となっている。

テレワークに経営者の70%が「戻したくない」 コロナ再拡大でも断固拒否?
出典:東京都「テレワーク実施率調査結果をお知らせします!12月の調査結果」

いち早くテレワークの再強化に乗り出した企業もあるが……

2021年の年末までの実態を把握したところで、現在の状況を予想してみよう。2021年の年末と現在で異なるのは、新型コロナウイルスの変異株である「オミクロン株」が猛威を振るっていることだ。そのため、テレワークの実施率は再び高まっているものと考えられる。

例えば、全国の中でも早い段階で感染再拡大が起きた沖縄県では、携帯電話事業を行う沖縄セルラー電話がテレワークの実施率を部署によって最大8割まで高める方針をとった。自動車メーカーのマツダもテレワークの再強化に乗りだし、出社率の引き下げ目標を掲げている。

海外でもこのような動きは顕著だ。アメリカではオミクロン株の感染者が驚異的なスピードで増える中、米Appleは職場への出社再開を無期限で延期することを決めた。

このように、感染拡大に合わせてこのように迅速な対応を取る企業が出てきているが、一方でテレワークの実施にもともと消極的な経営者も少なくないことは、事実として知っておきたい。そのような経営者の企業は、まだテレワークの再強化を行っていないかもしれない。

そのため会社員によっては、いまこんな懸念を抱えている。「オミクロン株の感染爆発が起きているのにも関わらず、うちの会社はこのままテレワークを再強化しないのではないか」「むしろ『オミクロン株は風邪』と言って、強制出社を求められるのではないか」

経営者の中にはテレワークに消極的な人が多い

2021年11~12月に文春オンラインが民間企業に対して実施したアンケート調査によれば、経営者とマネジャー、一般社員に「オフィス勤務中心、または完全なオフィス勤務に戻したいですか?」と質問したところ、以下のような結果となった。

テレワークに経営者の70%が「戻したくない」 コロナ再拡大でも断固拒否?

オフィス勤務中心または完全なオフィス勤務に「戻したい」と回答した割合は、経営者は72.7%、マネジャーは46.1%、一般社員は21.4 %となっている。立場が上がるほど、テレワークに消極的だということが分かる。一般社員と経営者ではこの点で大きな乖離があるわけだ。

公的な調査データがまだ出てきていないため実態を正確にはつかめないが、このような調査結果を踏まえると、恐らく現在の感染再拡大が起きている状況でも、テレワークの再強化に二の足を踏んでいる企業は結構多いのではないだろうか。

経営者がテレワークに消極的な理由は、データ紛失や回線トラブルのリスクがあることや、実際に対面しながらディスカッションをする機会の重要性を感じていること、テレワークだと仕事をさぼられる可能性があること、などが挙げられている。

東京都の次回の調査結果の発表に注目

前半で紹介した東京都のテレワーク実態調査は、まだ2021年12月分までの調査結果しか出ていないが、2022年2月上旬には、1月分の調査結果が公表されるはずだ。その結果を見れば、オミクロン株の猛威でテレワークを再実施した企業がどれくらい増えたか、もしくは減ったのか、明らかになる。

コロナ禍の再拡大の中で経営者たちはどのような決断を下しているのか、その傾向について調査結果などを基に今後も追っていきたい。

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

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