D2Cの成功事例3選 うまくいく企業に共通するポイント
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D2Cとは、「Direct to Consumer」の略だ。自社で企画・製造した商品を消費者に直接販売するビジネスモデルを指す言葉である。他の会社や小売業者を通さず直接消費者とつながるD2Cが注目されるようになった理由には何があるのだろうか。本記事では、D2Cが注目されるようになった理由、および導入のメリットやデメリットについて紹介する。

目次

  1. D2Cの意味とは?
  2. D2Cが注目される理由
    1. コストを抑えられる
    2. 消費者の意見を取り入れやすい
    3. ネット通販に抵抗がある人が少なくなった
    4. 消費者の考え方の変化
  3. D2Cのメリット
    1. 収益性に期待ができる
    2. 「ブランド」のファンを増やすことができる
    3. 顧客データを収集できる
    4. 販売方法を自分たちで決めることができる
  4. D2Cのデメリット
    1. 魅力的な商品が必要
    2. 顧客開拓が必要
    3. 定着までに時間がかかる
  5. D2Cの成功事例
    1. 土屋鞄製造所
    2. FUJIMI
    3. FABRIC TOKYO
  6. さらなる発展が期待されるD2C。重要なのはブランディングと商品力

D2Cの意味とは?

まずD2Cとはどのようなビジネスなのかを確認しておこう。D2Cでは自社で企画製造した商品を消費者に直接販売する。販売を仲介する会社や小売業者を通さず、「楽天市場」「Amazon」といったプラットフォームサイトの利用も行わない。多くは、自社の通販サイトを利用するのが特徴だ。またD2C企業は、実店舗ではなく多くがECサイトで運営している傾向にある。

そのため実店舗での販売の補完を目的に通販部門を持っている「ユニクロ」などはD2C企業には当たらない。なおD2Cと混同されがちな用語に「B2B」「B2C」というものがある。これらとの違いも確認しておこう。

  • B2B:「Business to Business」の略、企業同士での取引を指す言葉
  • B2C:「Business to Consumer」の略、企業と消費者の取引を指す言葉

B2Bは、企業間の取引だがB2Cは対消費者という意味でD2Cと同じではある。しかしD2Cが製造も自社で行うのに対しB2Cでは製造は行わない点が大きな違いだ。ちなみに消費者に対して販売のみを行う楽天市場やAmazonなどはB2Cに該当する。

D2Cが注目される理由

D2Cが注目されるようになった理由についても触れておこう。

コストを抑えられる

自社サイトでの販売が主となるD2Cでは、店舗の運営費が不要で中間業者も入らない。そのためコストを抑えられるという特徴がある。近年D2Cが注目されるようになった大きな理由である。また企業運営にコストがかからないため、商品価格を下げることも可能だ。消費者側から見てもD2Cには、メリットが多いだろう。

消費者の意見を取り入れやすい

D2Cは、消費者の動向に特に敏感なファッション業界や化粧品業界雑貨類のメーカーが取り入れていることが多い。その理由には、D2Cは消費者の意見を受け取りやすい点がある。例えばファッション関係のD2Cであれば「どのようなデザインがいいか」「どのような素材の服を着たいか」などについてもアンケートで消費者に尋ねることが可能だ。

このようなアンケートの結果を今後の商品企画に活かすことが期待できる。

ネット通販に抵抗がある人が少なくなった

2000年代以降、インターネットの普及によりネット通販が広く普及した。さらに2020年の新型コロナウイルス感染拡大により巣ごもり需要が増加し店舗にショッピングに行く習慣も薄れつつある。自宅に居ながらネットで買い物をする流れにシフトしてきているのだ。総務省統計局の調査でもネットショッピング利用世帯の割合は、2020年5月時点で50%(前年同月は40%程度)を超えている。

これは、2002年に調査を始めて以降最も高い数字だ。ネットショッピングの利用は、若者世代に限ったことではない。例えば2020年4月時点で65歳以上の世帯におけるネットショッピングの利用率は27.1%、同5月が30.3%と約3割を占めている。年齢や世代を問わずネットショッピングを利用にするようになったことがD2Cの後押しになったともいえるだろう。

消費者の考え方の変化

D2Cが注目されるようになった背景には、消費者の考え方が変わってきていることも関係している。以前は「皆が持っているものが欲しい」「必要なものが買えたらよい」「なるべく安く買えるところを探している」という消費者も多かった。しかし近年は「自分の考えに近いブランドの商品が欲しい」「商品を購入する前にメーカーの想いまで知っておきたい」という人も増えている。

百貨店などの実店舗やショッピングのプラットフォームサイトではなく、わざわざD2Cのサイトを訪問しメーカーやブランドの考え方やモノづくりの姿勢を確認する消費者が多くなったこともD2Cが広がる一因といえるだろう。

D2Cのメリット

D2Cには、どのようなメリットがあるのだろうか。企業側から見たメリットを確認しておこう。

収益性に期待ができる

D2Cでは、企画・製造を自社で行うため、他社への依頼料や流通のコストがかからない。さらに店舗を持たず自社サイトで商品を販売するスタイルを取ることが多いため、店舗運営にかかるコスト(店舗の賃料、人件費など)やプラットフォームサイトの出店料がかからない。できるだけ経営コストをかけず高い収益性を保ちたい企業には、メリットが多いといえる。

「ブランド」のファンを増やすことができる

百貨店やショッピングモール、プラットフォームサイトなどへ出店する場合「とりあえず」「必要だから」「安いから」といった理由で購入されることも多い。またプラットフォームサイトには、似たような商品を扱う店も多いため、2回目、3回目の購入につなげることが難しいかもしれない。しかし自社サイトの場合は、サイトに訪れてくれる消費者に商品購入だけでなく自社の想いをじっくり伝えることもできる。

結果的にメーカーやブランドのファンを増やすことにもつなげられるだろう。一度ファンになった消費者は、何度も商品を購入してくれるリピーターになることも期待できる。

顧客データを収集できる

自社サイトであれば顧客データを効率よく収集できることもメリットの一つだ。サイトの滞在時間や離脱率などのデータを分析すれば今後の販売戦略に活かすこともできるだろう。またデータがあれば顧客の購入の傾向が分かるため、ダイレクトメールなどに効率よく活用できる。リピーター作りや定期購入者の発掘にも役立てることができるはずだ。

また顧客データは、消費者の新しい商品開発のヒントにすることもできる。売れ筋商品やこれからの流行を探るうえでも有益な情報となるだろう。

販売方法を自分たちで決めることができる

百貨店やプラットフォームサイトへの出店の場合、セールを行う期間、売り出す商品などをある程度その店・サイトに合わせることが必要だ。しかしD2Cの場合は、自社サイトになるため、自分たちでセールの時期や内容を決めることができる。売れ筋商品や消費者のニーズに合った商品のセールも柔軟に開催できるため、今以上に消費者の心をつかむことも可能だ。

また自社サイトであればニーズにきめ細かに対応した商品展開もできる。例えば「小ロットで新しい商品を次々と発売していく」「服のサイズを細かく準備してどのような体形の人にも買ってもらえるように工夫する」など消費者に飽きられない仕組みを作ることも検討できるだろう。

D2Cのデメリット

D2Cには、デメリットもある。こちらについても確認しておこう。

魅力的な商品が必要

D2Cでは、自社で商品を企画製造することになるが、収益を上げるためには魅力的な商品を開発しなければならない。顧客のニーズを探り購入につながるような商品を企画するにはそれなりの時間とコストがかかることも覚悟しておかねばならないだろう。

顧客開拓が必要

既存のプラットフォームサイトを利用した場合、そのサイトをすでに利用している顧客を取り込むことが可能だ。しかし自社サイトを作った場合、一から顧客の開拓が必要になる。自社の顧客ターゲットとなる層へサイトの認知度が上がるようにダイレクトメールを利用したり顧客になりそうな人たちが興味のあるサイトに広告を出したりするなど、ある程度の時間や手間がかかることも押さえておきたい。

定着までに時間がかかる

自社サイトの場合、顧客開拓だけでなく定着するのにも時間がかかる。全く認知度がないところから「認知度を上げてファンを増やす」という目標に向かって多角的に取り組んでいくことが必要だ。

D2Cの成功事例

これからD2Cに取り組みたいのならば成功事例を知っておくことも重要だ。いくつかの企業の成功事例をチェックしてみよう。

土屋鞄製造所

1965年創業、ランドセルの製造で有名な企業。2000年以降は、仕事用カバンや大人が使える財布などの革小物の販売を自社サイトで行っている。サイトでは一つひとつの商品について開発に至るまでのエピソードや職人の想いを紹介しており、購入する人もそれらのストーリーを共有できる。

FUJIMI

サプリメントなどの通信販売を行う企業。サイト上でいくつかの質問に答えると自分に合ったサプリメントが処方され、消費者は処方されたサプリメントを定期購入する仕組みである。一人ひとり届く商品が違うという、「パーソナライズ」で顧客の心をつかむのに成功している。

FABRIC TOKYO

メンズアパレル企業。オーダーメイドのスーツやシャツの販売を行う。生地メーカーや中間業者を通さず自社ですべてを行うため、オーダーメイドでありながら比較的安価で商品を提供できるのが大きな強みだ。採寸については「自分で行う」「手持ちのスーツを計る」「店舗で行う」など、さまざまな方法が選択できる。

採寸したサイズデータをクラウドに登録しておくとインターネット上から自分にぴったり合ったサイズの服がいつでも注文可能になる気軽さも消費者に受け入れられている理由の一つだ。

さらなる発展が期待されるD2C。重要なのはブランディングと商品力

自社で商品の企画・製造・販売を行うD2Cは「運営コストを抑えられる」「顧客のニーズに応えられる」という特徴がある。消費者側から見ても低価格で品質の良いものを購入できる点は大きなメリットだ。ただしD2Cであればすべての企業がうまくいくわけではない。「ブランドの認知度を上げる」「ファンを増やす」「魅力的な商品を作る」といった強みがないと消費者の心はつかめないだろう。

これからD2Cというビジネスモデルの成功を目指すのであれば、商品開発と同時にブランディングにも力を入れていくことが非常に重要となってくる。

文・田尻宏子(ファイナンシャルプランナー)

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