バンクシー展にバスキアが登場!
2018年から世界の主要都市を巡回して話題となっている「BANKSY展 GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展 天才か反逆者か)」が、いよいよ東京に上陸。2021年12月12日(日)から2022年3月8日(火)までの会期で、WITH HARAJUKU(東京都・原宿)にて開催される。70点を超えるバンクシー作品や、バンクシーの作品に影響を与えたアンディ・ウォーホルによる「マリリン」の肖像を含む100点以上の展示物が一堂に会する貴重な機会だ。(詳しくはプレスリリース参照)
その会場に、ANDARTの共同保有作品であるジャン=ミシェル・バスキアの《Jawbone of an Ass》が展示されることが決定した。本記事では展示されるバスキアの作品の見どころと、バスキアとバンクシー、そしてアンディ・ウォーホルの関係を紹介する。
❚ ジャン=ミシェル・バスキアとは?
ジャン=ミシェル・バスキア(Jean-Michel Basquiat)は、20世紀のアートシーンで最も重要とされる巨匠のひとり。ストリートでのグラフィティから活動を始め、1980年代のアートシーンに彗星のごとく登場して注目を浴びた。ハイチ系アメリカ人の父とプエルトリコ人の母を持つことから、人種問題をテーマにした作品や、政治批判のメッセージを含む作品を多く制作。アメリカで初めて成功した黒人アーティストと言われる。
天才画家として期待されるも、27歳の若さで急逝。今では世界各国の主要美術館に作品が所蔵されているほか、オークションで歴史に残るような高値で取り引きされるなど、美術史に名を残すアーティストとしての地位を確立している。日本では、ZOZO創業者の前澤友作氏が、2017年に《Untitled》を123億円で落札したことで話題になった。
バスキア落札しました。アートを好きになってよかった。このペインティングをはじめて見た時、心からそう思いました。みなさんにも見てもらえる機会を作れたらいいなと思っています。バスキアありがとう! #jeanmichelbasquiat pic.twitter.com/xZrhCcX7bz
— 前澤友作┃いま宇宙にいるよ (@yousuck2020) May 19, 2017
❚ バスキア《Jawbone of an Ass》の見どころ
バンクシー展に登場する作品は、1982年に制作されたペインティングが、2004年にシルクスクリーン版画として出版されたもの。バスキア自身は1988年に亡くなっており、生前にはプリントはほとんど制作されなかった。しかし没後、コレクターやマーケットからの強い要望を受け、バスキアの遺族が中心となって運営する財団から本作の出版が決定。背面には父親ジェラルド・バスキアのサインが入っている貴重な1点だ。
ポイント1. バスキアを代表するモチーフがいっぱい
バスキアの作品にたびたび登場するモチーフが散りばめられており、バスキアのファンも、初めてバスキア作品に接する人も、誰もが楽しめるバスキアらしい作品。
とりわけ「王冠」は、バスキアのトレードマークともいえるモチーフ。アメリカのテレビ番組「リトル・ラスカルズ」に登場する少年の髪型に影響され、バスキア自身も王冠のような髪型にしていた。また、文字や図形によって社会的なメッセージを強く発信するのも、バスキアの特徴だ。
ポイント2. パワフルかつ見事なバランス感覚
オリジナルが制作された1982年、すでにアート界の新星として名声を得ていたバスキア。確立されたスタイルを持ちながら、さらに新しいアイディアを試す努力も怠らなかった。本作のオリジナルは、アクリル絵具、オイルパステル、紙のコラージュなど、さまざまな素材を用いたミクストメディアの作品。バスキアならではの勢いと鋭さがありながら、複雑な要素が絶妙なバランスでまとめられている。
ポイント3. 最強の男の物語がテーマ
本作のタイトルには「ロバの顎の骨」という意味があり、旧約聖書に登場するサムソンの話に由来している。サムソンは旧約聖書の登場人物の中でも最強の男として知られ、力が強すぎるために理不尽な目にも遭った英雄。イスラエルの民をおびやかす戦闘民族ペリシテ人たちに立ち向かい、ロバの顎の骨1本を武器に、なんと1000人を打ち殺したとされている。サムソンを他の作品にも登場させているバスキアは、自身の爆発的なエネルギーや、社会的な抑圧への反発心を重ね合わせていたのかもしれない。
❚ アンディ・ウォーホルはバスキアの憧れ
バスキアの生前、すでにポップアートの旗手として知られていたウォーホルは、バスキアにとって憧れの存在だった。バスキアがまだ無名だった10代の頃、偶然見かけたウォーホルに自作のポストカードを売り込んだという逸話もある。
2人のアーティストは親交を深め、共同制作を行うまでになった。しかし、1987年にウォーホルが心臓発作で急逝。大きなショックを受けたバスキアは、以前から使用していた薬物にさらに依存するようになり、過剰摂取で跡を追うように翌年亡くなってしまった。
映画『ボヘミアン・ラプソディ』の脚本を手がけたアンソニー・マクカーテンは、戯曲『ザ・コラボレーション(原題)』でバスキアとウォーホルの関係を描いており、2022年には同作をベースとした映画の撮影が予定されている。
❚ バンクシーとバスキアの非公式コラボ
2017年、ロンドン中心部にある文化施設・バービカンセンター近くのトンネルに、バンクシーの壁画2作が登場した。ひとつは観覧車の絵で、ゴンドラがバスキアのトレードマークともいえる王冠になっているもの。もうひとつは、警官に取り調べを受ける人物の絵で、バスキアの代表作のひとつ《Boy and dog in a Johnnypump》から人物像と犬を引用したものだ。
バンクシーのInstagramより
バンクシーのInstagramより
壁画が公表されたのは、イギリスでは20年ぶりとなるバスキアの展覧会直前。描かれた内容からしても、バンクシーによるバスキアへのオマージュであることは明らかだ。バスキアもバンクシーと同じように、グラフィティからアーティストとしてのキャリアを築きはじめ、社会に対するメッセージを含む作品を発表してきたため、バンクシーが共感を示したのだろう。
バスキアの作品が展示される今回のバンクシー展では、ふたりの共通点やそれぞれの特徴に考えを巡らせながら、ストリートアートの巨匠たちのコラボレーションを楽しんでいただきたい。
展覧会概要
BANKSY展 GENIUS OR VANDAL?(バンクシー展 天才か反逆者か)
会期:2021年12月12日(日)~2021年3月8日(火)
会場:WITH HARAJUKU 3F WITH HARAJUKU HALL・LIFORK原宿
一般料金(日時指定チケット):平日 大人:¥1,800 /大・専・高:¥1,600 /中学生以下:¥1,200、土日祝 大人:¥2,000 /大・専・高:¥1,800 /中学生以下:¥1,400
一般料金(平日いつでもチケット):平日 大人:¥1,800 /大・専・高:¥1,600 /中学生以下:¥1,200
展覧会HP:https://withharajuku.jp/news-events/605/
*最新情報は公式サイトでご確認ください。
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文:ANDART編集部