群馬県の山本一太知事が怒った。47都道府県が対象の「魅力度ランキング」に対してである。「信頼度が低い」と批判を展開し、法的措置も辞さない姿勢だ。2021年のランキングで群馬県は44位。順位が低いことが知事の怒りを買ったのか。それとも本当に問題があるランキングなのか。
そもそも都道府県の魅力度ランキングとは?
今回、長野県の山本一太知事が怒ったランキングは、株式会社ブランド総合研究所が発表した「地域ブランド調査2021」の中で紹介されている「都道府県の魅力度ランキング」だ。2021年10月に発表された。
ランキングにおけるTOP10とワースト10は以下の通りとなっている。
群馬県は点数が15.3で44位となっている。ちなみに、前年の2020年のランキングでは40位で、2021年は順位を4つ下げた結果となった。
群馬県知事の怒りの内容
群馬県知事の怒りがもっともなのか、山本知事の主張を振り返ってみよう。
山本知事はランキングについて「ずさんなもの」と述べている。知事がこのように口にしたのは、県の検証チームで順位の妥当性などを分析した結果、信頼性に足るものではなかったからだという。以下のようにも語っている。
「根拠の不明確なランキングにより魅力がないという誤った認識が広がることは、県民の誇りを傷つけるのみならず、経済的な損失にもつながるゆゆしき問題」「弁護士とも相談し、法的措置も検討する」
つまり今回の「山本知事vs魅力度ランキング」の争点は、ランキング結果にしっかりとした根拠があるかどうか、と言えそうだ。では、都道府県の魅力度ランキングは、どのような調査を経て作成されているか。
「魅力度」はどのように算出されている?
ブランド調査研究所は「魅力度」の算出方法を公表している。具体的には「どの程度魅力を感じますか」という質問に対して5つの回答を用意し、「とても魅力的」との回答を100点、「やや魅力的」との回答を50点として、以下の計算式で魅力度を点数化したという。
魅力度(点)=100点×「とても魅力的」の%+50点×「やや魅力的」の%
計算式の妥当性に関しては論じないが、いずれにしても、1つの質問の結果で魅力度ランキングが作成されたということのようだ。
山本知事が怒ったとき、ネットなどでは「やや大人げないのでは?」「目くじらを立てるほどでも…」といった声もあったが、この調査方法がメディアなどで紹介されたあとは、知事に賛同する声がネット上などで目立ち始めた印象を受ける。
ブランド総合研究所側の反論は?
このような状況の中、ブランド総合研究所側はどのように反論をしているのだろうか。NHKの取材に対して、ブランド総合研究所の田中章雄社長は「魅力があるかどうかを5段階で評価してもらったものを数値化しているわけですから、魅力度以外の何ものでもない」と語っている。
調査を実施している意図としては「調査をして発表し、それを活用して地域を活性化してもらおうという思い」とし、山本知事の批判については「はっきり言って、何を意図しているのかわからない」と語っている。
今のところ、今回の騒動について両者が「和解」したといった情報はない。お互いの意見がすれ違ったまま、この騒動がさらなる発展を見せるだろうか。
「ランキング商法では?」と指摘する声も
魅力度ランキングについては、そのランキングを報じるメディア側の責任に言及する声もあった。
毎年発表される都道府県の魅力度ランキングを、テレビや新聞、ウェブメディアはある程度大きめに報じる。仮に1つの質問だけで作成されるランキングに信頼性がないと判断されるものであれば、メディアはこのランキングを紹介すべきではない、という声だ。
もちろん、メディアが何を報じるかは「報道の自由」があるため規制はできない。そもそも魅力度ランキングの信頼性についても賛否あるため、メディアがこのランキングを紹介すべきではないと断言することはできないが、このような声は今後増えてくるかもしれない。
付け加えると、魅力度ランキングに対しては「ランキング商法では?」と指摘する声もある。ランキング自体が、詳細な調査結果を販売するためや自治体に対するコンサルティングサービスのために作成されているのでは、といった内容だ。
魅力度ランキングは、議論を巻き起こしているが、良いか悪いかは別にして、いずれにしても来年はランキングへの注目度がさらに高まりそうだ。
文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)