経営戦略や分析に役立つフレームワーク7選!それぞれの強みや弱み、注意点まで詳しく解説
(画像=Chaosamran_Studio/stock.adobe.com)

フレームワークを活用すると、経営戦略の策定や分析の効率が飛躍的にアップする。しかし、さまざまな種類が存在しているため、どれを使うべきか迷っている経営者も多いだろう。今回は経営戦略に役立つフレームワークや、活用する際の注意点を解説していく。

目次

  1. 経営戦略の策定に役立つフレームワークとは?
  2. フレームワークを活用するメリットと必要性
  3. 代表的な7つのフレームワーク!それぞれの強みと弱み
    1. SWOT分析
    2. 3C分析
    3. VRIO分析
    4. PEST分析
    5. ファイブ・フォース分析
    6. 4P分析
    7. PDCAサイクル
  4. フレームワークを活用する際の注意点
    1. 自社の目的や特性に合ったものを選ぶ
    2. フレームワークによる分析は目的ではない
  5. 経営戦略まで落とし込むことを忘れずに

経営戦略の策定に役立つフレームワークとは?

質の高い経営戦略を策定するためには、社内外のさまざまな情報を分析する必要がある。この分析に役立つものが、今回紹介する「フレームワーク」と呼ばれるものだ。

ビジネスにおけるフレームワークとは、分析や意思決定などをスムーズに行うための枠組みのこと。3C分析やSWOT分析などが有名であり、目的別にさまざまなフレームワークが存在している。

フレームワークを活用するメリットと必要性

経営戦略の策定にフレームワークを活用すると、主に以下のようなメリットが生じる。

・思考時間が短縮される
・何から考えるべきか分かりやすくなる
・アウトプットの漏れやブレを防げる

自社に対するイメージは人によって変わるため、複数人で経営戦略を考えると全体をまとめることが難しい。また、日によって分析結果が変わったり、重要な内容を見落としたりなど、アウトプットに漏れやブレが生じる可能性もある。

その点、フレームワークを使うと誰でも同じ流れで分析できるため、漏れやブレを防ぎながら一貫性・整合性のある戦略を立てやすくなる。特に今回紹介するフレームワークは視覚的にも分かりやすいので、社内へ情報共有する際にも役立つだろう。

代表的な7つのフレームワーク!それぞれの強みと弱み

ここからは、経営戦略に関する代表的なフレームワークを紹介する。各フレームワークの強み・弱みも確認した上で、自社に最適なものを選んでいこう。

SWOT分析

SWOT分析は、自社を取り巻く環境の分析や、自社の強み・弱みの把握に役立つフレームワークだ。具体的には「強み・弱み・機会・脅威」の4つの項目に分けて、以下のような形で分析を行っていく。

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このSWOT分析を活用すると、自社の状況を客観的に判断できるようになる。また、各項目について社内で議論をすれば、意思の統一や共有もスムーズに進められるだろう。

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ただし、SWOT分析はすべての要素を分類する必要があるので、場合によっては実情と異なる結果になる恐れがある。例えば、強みと弱みの両方の側面をもつ要素は分類が難しいため、ほかのフレームワークと組み合わせながらうまく活用したい。

3C分析

内部環境や外部環境を簡単に分析したい場合は、3C分析の活用もおすすめだ。3C分析では以下の3つの項目に分けて、それぞれに該当するものを書き出していく。

・自社(Company)…他社にはない強みと、無視できない弱みを記載する。
・顧客(Customer)…顧客の性別や年齢、価値観などを記載し、ターゲット層を洗い出す。
・競合(Competitor)…競合の強みや弱み、市場でのシェア、社会的評価などを記載する。

3C分析はシンプルなフレームワークだが、新事業の方向性づけやマーケティング戦略の策定時にも役立つ。ただし、顧客や競合の状況が頻繁に変化する場合は、こまめに内容を見直さないと効果的な戦略を打ち出せなくなってしまう。

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流動的な要素が多い場合は、上記のSWOT分析と組み合わせることが望ましい。2つの分析結果を組み合わせれば、流動的な要素も含めた形で自社の状況を把握できるようになる。

VRIO分析

SWOT分析や3C分析で「自社の強み」を記載するときに、希望的観測が入ってしまうことがある。「この部分が優れていたら良いな」と感じる部分を強みに含めると、自社の状況を客観的に分析することは難しくなるだろう。

そこでぜひ活用したいフレームワークが、VRIO分析と呼ばれるものだ。VRIO分析では、保有する経営資源や能力が以下の4つに該当するかどうかで、自社の本当の強みを見極めていく。

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例えば、ある経営資源が上記のすべてに該当する場合は、競争優位性が高い(=自社の強み)と判断できる。ただし、事業によっては対象価値や希少性が大きく変動するため、VRIO分析はすべての業界・業種で活用できるフレームワークではない。

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また、技術革新が起こると模倣可能性も変わってしまうため、VRIO分析はこまめに実施することが必要になる。

PEST分析

次に紹介するPEST分析は、マクロ環境(自社で統制できない外部環境)の分析に役立つフレームワークだ。PEST分析では「政治・経済・社会・技術」の4つの項目に分けて、自社に影響する外部環境を見極めていく。

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比較的わかりやすいフレームワークだが、PEST分析にも注意しておきたい欠点が存在する。

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例えば、輸出業を行っている企業には、膨大な種類のマクロ環境が存在している。関係する国の法律や規制はもちろん、文化や為替レート、予期せぬ災害・犯罪など、すべての要素を書き出すことは難しいだろう。

また、各要素の影響度も分かりづらいので、マクロ環境の種類があまりにも多い場合は別のフレームワークと組み合わせることを考えたい。

ファイブ・フォース分析

外部環境の中でも「競合」を分析したい場合は、ファイブ・フォース分析が役に立つ。ファイブ・フォース分析では、5つの項目を以下のような形で整理することで、自社の優位性や状況を分析していく。

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○主な分析内容
・新規参入業者…どんな企業が参入してくるか、参入するハードルは高いか
・代替品…どのような代替品があるか、代替品はどれくらいあるか
・買い手…買い手とはどのような関係性か(主に交渉力)
・売り手…売り手とはどのような関係性か(主に交渉力)
・競合他社…業界内ではどんな競争があるか、何が競争要因になっているのか

ファイブ・フォース分析は市場参入・撤退の判断にも活用できるが、これまで紹介したフレームワークに比べるとやや複雑だ。また、代替品や競合が多い業界では、分析をするために多くの情報を収集しなければならない。

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また、外部環境が頻繁に変化する業界では、分析結果も短期間で変わることがあるので注意しておこう。

4P分析

次に紹介する4P分析は、マーケティング戦略の分析に活用できるフレームワークだ。4P分析では以下の4つの項目を整理し、自社の課題を洗い出しながら効果的なマーケティング戦略を考えていく。

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4P分析は自社の強み・弱みの分析にも活用できるが、注意したい欠点も潜んでいる。

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例えば、自社が特徴的な流通手段を有していても、それが顧客にとって有益なものとは限らない。企業目線で4P分析をすると、顧客のニーズを無視した分析結果になってしまうことがあるので、常に顧客の価値観を意識しながら分析を進めていこう。

PDCAサイクル

さまざまなビジネスシーンで活用されるPDCAサイクルは、実は経営戦略の策定にも役立つ。
PDCAサイクルとは、ある施策に関して「計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)」を繰り返しながら、その施策をブラッシュアップしていく手法だ。

経営戦略は中長期的な計画になりやすいので、実行をしている最中に状況が変化することもあり得る。そのため、策定した戦略を実行した後には評価を行い、改善する機会を設けることが重要になる。

ただし、万能なフレームワークに見えるPDCAサイクルにも、以下のような欠点があるため注意しておきたい。

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PDCAサイクルはすでに策定した戦略を元に行われるので、実は新しいアイディアが生まれにくい。したがって、PDCAサイクルを繰り返しても効果が表れない場合は、元々の経営戦略自体を見直す必要があるだろう。

フレームワークを活用する際の注意点

経営戦略に役立つフレームワークは多く存在するものの、使い方を誤ると間違った分析結果が出てしまう。そこで以下に、フレームワークを活用する際の注意点をまとめた。

自社の目的や特性に合ったものを選ぶ

同じものを分析する場合であっても、活用するフレームワークによって結果は変わってくる。例えば、SWOT分析と3C分析はいずれも内部環境・外部環境を分析するものだが、前述の通り3C分析では流動的な要素が加味されない。

したがって、経営戦略のフレームワークを選ぶ際には「自社の目的」と「自社の特性」に合ったものを選ぶことが重要だ。また、1つのフレームワークで分析できる内容は限られているため、複数のフレームワークを組み合わせることも検討しよう。

フレームワークによる分析は目的ではない

フレームワークの活用に慣れると、分析自体が目的になってしまうことがある。しかし、最終的な目的は経営戦略の策定であり、フレームワークの活用はそのための手段に過ぎない。

また、従業員による話し合いやアイディアの出し合いなど、経営戦略を策定する方法はほかにもいくつかある。フレームワークはあくまで手段の1つであり、分析した結果が必ずしも正しいとは限らないので、依存しすぎないように注意しておこう。

経営戦略まで落とし込むことを忘れずに

質の高い経営戦略を立てるには、さまざまな角度から内部環境・外部環境を分析することが重要だ。そのための手段として、今回紹介したフレームワークはぜひ活用していきたい。

ただし、フレームワークはあくまで手段なので、分析結果はきちんと経営戦略まで落とし込んでいこう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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