M&Aコラム
(画像=tamayura39/stock.adobe.com)

コロナ禍で企業が資本金を減資する事例が増加しています。東京商工リサーチが公表した動向調査によると、資本金1億円超から1億円以下に減資し、税制上の大企業から中小企業に分類が変わった企業は2021年上半期(4~9月)に684社に上り、2020年上半期を大幅に上回る結果となりました。大企業を維持するメリットが低下し、コロナ禍で打撃を受けた財務内容の改善や節税のため、身の丈に合った経営を求める企業体質が背景にあると分析しています。

資本金に対する指標の変化

動向調査は東京商工リサーチのデータベースで資本金を比較し、約260万社が対象となりました。資本金は従来、事業規模や信用力を測る目安でしたが、赤字累積の解消など「中小企業化」による優遇措置を求めて減資する企業が目立ち、必ずしも資本金の大きさが企業の実力を表す指標ではなくなったことを示しています。

2021年3月末と2021年9月末の資本金を比較すると、増資は6,785社だった一方で減資は1,824社で、1億円超の資本金を1億円以下に減資した企業は684社となり、2020年の一年間に減資した997社の約7割に達し、年間1,400件のペースで推移しています。

減資企業の産業別の最多はサービス業他で553社(構成比30.3%)となり、長引くコロナ禍で減資が高水準となっています。製造業(302社)と運輸業(83社)も増加しました。資本金を1億円以下に減資した企業の売上は10億円以上が367社と半数を超え、うち100億円以上が全体の1割強の107社(構成比15.6%)となり、事業規模が大きな企業による減資も増えています。

制度見直し議論も必要

東京商工リサーチは減資が節税目的か財務改善が目的かの区別は難しく、資本金の増減で税負担の大きさが変わる現行制度の問題点や制度見直しの議論が必要だと指摘します。コロナ禍で財務内容が悪化し、過剰債務に陥った企業も多く、今後も資本金の減資動向が注目されます。

公認会計士で日本M&Aセンター取締役の熊谷秀幸は「平成18年の会社法により最低資本金制度が廃止されて以降、資本金の考え方も変容してきています。税務上も企業規模を資本金のみではなく、従業員や課税所得金額等を基準に含める税制改正が行われてきたところですが、今後さらに踏み込んだ議論が為されるものと考えます」と話します。引用:東京商工リサーチ「2021年度上半期『減資企業』動向調査」

無料会員登録はこちら