食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈輸入品は盛り上がりに欠けるが安定需要、輸入量は増加予想〉
10月の鶏肉需給は、緊急事態宣言が全国で解除されたことで、外食産業の活況、量販店販売の落ち着きが予想されたが、外食を自粛する動きは根強く、コロナ前ほどの回復には至らなかった。他方で量販店販売も好調と言える状況ではなく、良くも悪くも宣言解除前後では情勢は大きく変わらなかった。

国産生鮮品では徐々に秋めいた気候に変わるなか、一時期は高騰した野菜価格も落ち着き、後半になるにつれモモ需要が強まった。ムネ・ササミは輸入品の不安定な供給事情も鑑み、凍結品需要が高まっており、相場も高水準を維持した。とくにササミは年間契約分以外での手当が難しいこともあり、生鮮品よりも凍結品が高値をつける状況となっている。

一方で輸入品は、外食産業の制限が解除されたが、目に見えて引き合いが増加しているとは言い難い。ブラジル産は調達コストが上昇していることもあり、高水準を維持し、タイ産は現地コロナ感染状況もあり、安定せず相場は高止まりしているが、現実的には相場たたずの状況が続いている。需要面ではからあげ専門店や、総菜需要が堅調で一定の払い出しが続く。10月の平均相場は、日経加重平均でモモが603円(前月582円)、ムネが328円(前月317円)と正肉合計931円となり、前月比32円高となった。昨対比ではモモが29円安、ムネが36円高となり、正肉合計では7円高となった。

〈供給見通し〉
日本食鳥協会がまとめているブロイラーの生産・処理動向調査によると、11月の生体処理羽数は前年同月比2.9%増、処理重量も2.1%増といずれも増加予測となっている。

地区別では、北海道・東北では羽数が3.2%増、重量2.2%増、南九州地区でも羽数が2.2%増、重量が1.5%増と主要産地の生産体制は安定している。

12月の予測では羽数は0.9%増も、重量は0.6%減となっており、前年と比べ重量は微減と予測されている。それでも、2021年通年では羽数が0.5%増、重量は1.5%増と増加傾向が維持される見通しとなっている。

農畜産業振興機構の鶏肉需給予測によれば、11月の国産生産量は14.6万tと前年同月比3.8%増を見込む。前月比では1,000t程度の減少を見込むが、2カ月連続で14万t台後半を維持する見込みで、9〜11月の3カ月平均予測でも1.8%増の14.2万tを予測しており、盤石な供給体制を維持する。

一方で輸入品は、タイからの輸入量は引き続き減少見通しだが、代替需要や国内在庫の減少などからブラジルからの輸入量増加が見込まれ、13.7%増の5.2万tと予測している。ことし3月以来の5万t超えが見込まれる。そのため、3カ月予測でも3.8%増の4.7万tと予測している。出回り量は、前年同月を上回るとみられ、在庫水準は過去5年平均比で2割程度下回る見込みだ。

〈需要見通し〉
量販店での販売はモモに移り、気温の低下と共に鍋需要が本格化することから、国産生鮮モモは強含みの展開が見込まれる。ムネ・ササミは凍結品を中心に加工需要はまだまだ続くものと見られるが、輸入量が増加することからもちあい推移。輸入品の末端需要は地域差があるが、コロナ禍の低迷を脱しつつあり、強気な相場ではあるが一定の需要が今後も継続するものとみられる。昨年のような家畜疾病が発生した場合は、国産を中心に締まった展開も予想され、正肉合計1,000円相場に突入する可能性もゼロではない。

〈価格見通し〉
国産生鮮モモは、日経加重平均で既に610円台半ばに達しており、徐々に需要が強まり、月間平均で620円前後、ムネは安定した需要に支えられ330円前後と見込まれる。農水省市況ではモモが630円前後、ムネが340円前後と見込まれる。

〈畜産日報2021年11月5日付〉