ヤマダフーズ 山田社長
(画像=ヤマダフーズ 山田社長)

国内食品市場は高齢化・人口減による縮小の恐れがあり、納豆業界もその影響が懸念されている。そのような中、大手納豆メーカーで、業務用トップ・ヤマダフーズ(秋田県仙北郡)の山田伸祐社長は、離乳食や介護食用の納豆を強化しターゲットを広げ、国内市場縮小の影響に対抗する考えだ。2022年2月には納豆のフリーズドライ設備が稼働予定で、新たな商品展開や海外市場開拓にも意欲を示す。

ヤマダフーズの納豆事業は、市販用が約65%、残り約35%が回転寿司やコンビニの納豆巻き向け、ホテル朝食のカップ納豆など業務用だ。前期(2021年8月期)の納豆事業実績は、市販用は前期比105%と伸長も、業務用は外出自粛などの影響で90%前後の推移と、トータルでは前期をわずかに下回った。一方で、山田社長は直近の業務用の動向に関して、「8月下旬頃から受注に回復の兆しが見える」と話す。

家庭用市場では、ヤマダフーズの強みであるひきわり納豆カテゴリが活性化している。同社はひきわり納豆を製造する際、原料の選定からこだわり、大豆の鮮度も重要視する。「粒納豆と兼用せず、ひきわり納豆に加工しておいしい大豆を契約栽培で調達し、自社で割っている。割った大豆は酸化しやすいため3〜4日以内に使い切り、大豆の鮮度も重視している。また、圧力釜で蒸し上げるのが一般的だが、当社は、連続蒸煮窯で低温・短時間で蒸すことによる明るい色味が特長だ。加えて、自社開発のひきわり納豆専用の納豆菌を使用するなど、技術の積み重ねが差別化に繋がっている」と話す。

このほか、市場ではフレーバー納豆の構成比が14%まで高まっている。ヤマダフーズは、春と秋にフレーバー系新商品を少なくとも1品投入し、消費者の納豆購買意欲の喚起に貢献している。「過去の納豆ブームや昨年の春先など需要に供給が追い付かなくなった局面では、各社がアイテムを絞って生産効率を上げ対応した。当社は、納豆のノンユーザーの方に購入して頂くタイミングであるとも捉え、目新しいフレーバー商品の出荷をあえて止めずに供給し続けた」。

〈離乳食や介護食向け納豆強化、FD設備稼働で販路・用途広げる、海外展開も〉
また、高齢化・人口減少による国内市場縮小の懸念に対してヤマダフーズは、「離乳食や介護食用納豆といったニッチなマーケットを開拓し、ターゲットを広げていく」方針だ。同社の「超・細か〜いきざみ納豆」は、子どもも食べやすいとして以前から支持されている商品であり、栄養が豊富な納豆は従来から離乳食として活躍してきた。一方、ねばりを低減するための湯通しや、粒納豆はすりつぶす手間がかかっていた。そこで同社は、ペースト状に加工し、さらに冷凍で賞味期間1年、1袋15gの使い切りサイズというスペックの離乳食用納豆を、PB商品として昨年発売。「予想以上に良好な売れ行きでニーズを再確認した」。

2022年2月には、助成金を受け、納豆のフリーズドライ(加工設備が稼働予定だ。「おかゆやスープのトッピングに使える利便性の高い離乳食として、クルトンのようにサラダやパスタのトッピング、菓子など、新しいフリーズドライ納豆商品の開発をしていきたい。また、インスタントラーメンの添付品など、加工食品メーカーにもアプローチし、販路と用途を広げていく」と展望を話す。

加えて、「コロナ禍前に出展した海外の展示会では、ねばりやニオイが気にならないフリーズドライ納豆の菓子をサンプリングし、かなり好評だった。海外で納豆が定着するまで長いスパンがかかると思うが、海外展開をひとつの戦略として進める」という。

納豆業界を取り巻く環境は、原料大豆の価格上昇や、物流遅延が懸念されている。「国産大豆は、品種・産地によって状況が異なるが、当社が納豆や豆腐で使用している秋田リュウホウは、昨年の西日本の天候不良の余波で価格が上昇した」と懸念を示す。輸入大豆については、「相場高騰の影響は深刻であり、価格改定の必要性を感じている。加えて、コンテナが調達できず、輸入大豆の入庫が大分遅れている」と注視している。

〈大豆油糧日報2021年10月11日付〉