食品産業新聞社
(画像=食品産業新聞社)

〈スライス系中心の手当買いで、相場も強含みの展開か〉
9月の牛肉の末端消費は月間通して弱く、3連休や祝日も振るわなかった。輸入品のコストが高騰した関係でホルスはスソ物中心に堅調だった半面、ホルスのロースを含めて和牛・交雑種の単価の高い部位は動きが振るわず、在庫圧迫感が強まった。

量販店では棚替えが進むなか、彼岸以降も暑さが続いたことで冷しゃぶ用の薄切りや焼肉が多くみられたものの、全体的には国産豚肉や鶏肉の方が売れ行きは良かったようだ。10月は新型コロナウイルス緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が解除されたことで、飲食店の営業再開や地方への行楽客の増加など、業務用の発注が期待される。

とはいえ10月1週目は目立った引合いは見られず、若干ロイン系の補充買いが見られる程度で、小売り関係の動きも前月と変わらず。現状では期待感が先行している。それでも気温低下に伴ってスライス系中心に月後半に向かって需要は緩やかに強まってくるものとみられ、枝肉相場も和牛去勢4等級で2,400円前後と、各等級ともに前月から一段上げと予想される。

〈供給見通し〉
農畜産業振興機構の牛肉需給予測によると、10月の成牛出荷頭数は和牛が4万頭(前年同月比6.4%減)、交雑種が2.1万頭(5.7%増)、乳用種が2.9万頭(3.1%減)と予想している。緊急事態宣言の解除や共励会など、この時期の相場上昇を見込んで出荷を控えていた出荷者もいるとみられ、和牛はこの予想を上回る可能性もある。輸入品は、チルドが2.2万t(1.6%増)、フローズンが2.9万t(2.6%減)と見込んでいる。例えば米国産の8/9月生産価格は前期(6/7生産)とほぼ変わらず高止まりしているため、末端、とくに外食方面からの引合いがどの程度強まるか注目される。

〈需要見通し〉
すでに量販店の棚割りはスライス系が中心となり、バラも焼肉よりスライススペックが目立つようになった。もっとも売れ筋はホルスを中心とした国産牛の切り落とし・薄切りなど単価の安い商品が中心。輸入品の供給事情を反映して価格差が縮小したことからホルスのシャンクや内臓関係の引合いも良い。和牛・交雑種はモモなどスソ物の動きも弱く、厳しい環境が続いている。気象庁の季節予報によると、向こう1カ月の気温は西日本中心に平年よりも高い確率としている。

また、農水省の野菜価格見通しによると、白菜などは長雨・曇天の影響で月前半は平年より高値水準で推移するとされている。カタロース中心に本格的なスライス需要が強まってくるのは今月後半からとみられる。

一方、宣言解除で回復が期待される外食や行楽需要も下旬に向かって徐々に強まってくるだろうといった見方が多いものの、引続き接待需要などは厳しい展開が続くとみられる。また全面解除後も東京都の「リバウンド防止措置」など自治体でも一定の制限が継続されている。客足の戻りも自粛の反動による一時的なものか、あるいは安定して継続していくのか、問屋筋も見極めているところ。衆院選も控えているため、やはり実力としての需要が見えてくるのは11月以降といえる。

〈価格見通し〉
和牛について、昨年は「和牛肉保管在庫支援緊急対策事業」関連で凍結玉を集める動きが相場を押し上げる要因となった。今年はすでに市中在庫も多く、あらかた量販店向けに決まった分の作業を行うのみとなっているため、前年ほどの下支えにはならないとみられる。

10月は祝日もないため、宣言解除後の外食関係の需要がポイントといえ、年末の手当ての動きも含めて下旬にかけて強含むとみられる。和牛去勢A5で2,500~2,600円、同A4で2,400~2,500円前後、同A3で2,200円前後、交雑去勢B3で1,500~1,600円、同B2で1,400円前後、乳雄B2で1,050円前後と予想される。

〈畜産日報2021年10月5日付〉