秘密保持契約(NDA)とは?現代企業の法務に欠かせない基礎知識やポイント
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さまざまな企業と情報を共有する現代企業にとって、秘密保持契約(NDA)は欠かせないものだ。M&Aや提携のほか、外注をする際に締結するケースも多く見られる。情報漏えいのリスクを抑えるために、経営者は基礎的なポイントをしっかりと押さえていこう。

目次

  1. 「秘密保持契約(NDA)」の意味とは?
    1. 秘密保持契約(NDA)はなぜ必要?企業の主な目的をチェック
  2. NDAによって保持される秘密情報の範囲
  3. 秘密保持契約(NDA)はいつまでに締結すべき?
  4. 契約書の作成方法は?秘密保持契約に含めるべき7つの条項
    1. 1.契約の対象者と目的
    2. 2.秘密情報の定義
    3. 3.目的外使用の禁止
    4. 4.保持義務の内容(範囲)
    5. 5.契約違反時の措置
    6. 6.契約の有効期間
    7. 7.管轄の裁判所
  5. 秘密保持契約(NDA)は締結した後も重要!誤解されがちなポイント
    1. 「調印する人物=契約を守る人物」ではないことが多い
    2. 契約期間の終了後に情報が漏えいすることも
  6. 契約違反が発生した場合の対処法
  7. 安全な契約を結ぶために、基本的なポイントや注意点はしっかりと理解を

「秘密保持契約(NDA)」の意味とは?

秘密保持契約とは、自社の情報を他社へ提供する際に、その情報の漏えいを防ぐ目的で締結する契約のこと。秘密保持契約は「NDA(Non-Disclosure Agreement)」と訳されることもあり、主にM&Aや業務提携などの場で結ばれることが多い。

秘密保持契約(NDA)はなぜ必要?企業の主な目的をチェック

事業承継やグローバル化が全国的に進む現代企業にとって、秘密保持契約は欠かせないものになりつつある。

技術提携や業務提携によって他社と協力体制を築くと、生産性が高まる代わりに情報漏えいのリスクが高まる。自社の貴重なノウハウや技術が流出すれば、たちまち競争力を失ってしまう恐れがあるため、パートナー企業からの漏えいには細心の注意を払わなくてはならない。

また、最近では一部の業務を外注するにあたって秘密保持契約を結ぶようなケースも多く見られるようになった。外注の際に秘密保持契約を結ぶと、万が一情報漏えいが生じた場合に損失額を賠償してもらえるため、外注先にさまざまな情報を渡せるようになる。その結果、外注先への指示が具体化すれば、成果物を作るまでのスピードやクオリティも上がってくるだろう。

ほかにも「対等な関係を築くため」や「共有できる経営資源を増やすため」など、秘密保持契約を結ぶ目的はケースによってさまざまである。

NDAによって保持される秘密情報の範囲

「秘密情報」の定義は、法律上で明確に定められているわけではない。そのため、NDAによって保持される秘密情報の範囲は当事者間で決めることになる。

しかし、契約書に保持すべき情報をすべて記載することは難しく、さらに情報漏えいのリスクも高まってしまう。そこで一般的なケースでは「秘密情報には技術上、営業上の一切の情報を含む」のように、抽象的な文面を契約書に記載することが多い。

では、実際の契約ではどのような秘密情報が対象になるのか、以下で一例を紹介しておこう。

秘密保持契約(NDA)とは?現代企業の法務に欠かせない基礎知識やポイント

このように秘密保持契約の対象にはさまざまな情報が含まれるが、以下に該当するものは原則として秘密情報には含まれない。

・受領者がすでに知っていた情報
・契約の前にすでに公になっていた情報
・受領者の過失や故意によらず公になった情報
・受領者が正当な方法で第三者から手に入れた情報
・受領者が独自に開発または入手した情報
(※受領者は情報を提供される側のこと)

ちなみに秘密保持契約の対象に含まれていても、必要に応じて従業員や弁護士、会計士などに情報を共有するケースも多く見られる。こういったケースでは「従業員等が秘密情報を漏えいした場合、受領者自身がその損害を補償する」のように、責任の所在を契約書上で明らかにしておく必要がある。

秘密保持契約(NDA)はいつまでに締結すべき?

前述の通り、受領者がすでに知っていた情報は秘密保持契約の対象外となるため、秘密保持契約は情報を提供する前に締結しなければならない。仮に昔からの取引先であったとしても、秘密保持契約を結ばない限りは情報漏えいのリスクが確実に存在する。

中には「最初から秘密保持契約の話はしづらい」と感じる経営者もいるが、秘密保持契約に応じない取引先はそもそも信用に値しないだろう。また、最近では秘密保持契約を結ぶことに慣れた企業が多いので、締結すべきタイミングできちんと相手方に提案することを心がけたい。

契約書の作成方法は?秘密保持契約に含めるべき7つの条項

秘密保持契約に決まった形はないが、必要な内容を記載し忘れると効力を発揮しなくなる恐れがある。そこで次からは、秘密保持契約書に記載すべき条項をまとめた。

ケースによっては別の条項が必要になるケースもあるので、あくまで参考程度にチェックしていこう。

1.契約の対象者と目的

まずは契約の対象者と目的が明確になる形で、以下のような頭書きを記載する。

○秘密保持契約書の頭書き(一例)
株式会社○○(以下「甲」という。)及び株式会社△△(以下「乙」という。)は、甲乙間の技術提携(以下「本取引」という。)の検討を目的(以下「本目的」という。)として、互いに開示する秘密情報の保持に関して、以下の通り秘密保持契約(以下「本契約」という。)を締結する。

頭書きにおいて注意しておきたいポイントは、「誰が義務を負うのか」を明確にしておく点だ。上記では「互いに開示する」と記載したが、もしいずれか一方の企業のみが守秘義務を負うのであれば、「甲が開示する秘密情報の保持に関して」のように内容を調整する必要がある。

2.秘密情報の定義

前述の通り、秘密保持契約によって保持される情報はケースごとに異なる。したがって、どのような情報が対象になるのかが分かる形で、秘密情報を定義しなければならない。

対象を広くするのであれば「営業上・製造上・技術上」といった文面がよく使用されるが、細かい情報を開示する場合は定義をさらに細かくする必要がある。「○○分野において」や「○○の場で」などの文面も使いながら、保持したい情報がきちんと含まれるように定義しよう。

3.目的外使用の禁止

受領側による情報の悪用や漏えいを防ぐために、秘密保持契約書には「目的外での使用を一切禁止する」といった文面を記載することが多い。ここでいう目的とは、頭書きで記載した内容(※前述の例では技術提携が該当)のことだ。

また、メールやデータの流出を防ぎたい場合は、「コピー(印刷)の制限」も加えておくと安全性が高まる。

4.保持義務の内容(範囲)

保持義務の内容とは、「どういった形で情報を保持するのか?」を明示する条項のこと。簡単に言い換えれば「保持すべき範囲」のことであり、どの人物まで秘密情報を公開できるのかが分かる形で記載しておく。

保持の範囲は最小限に設定すべきだが、あまりにも範囲を狭めると業務に支障を来す恐れがあるので注意しておきたい。

5.契約違反時の措置

秘密保持契約の違反があった場合は、損害賠償や契約解除で対応することが一般的だ。したがって、契約書には「契約違反があった場合、提供側は受領側に対して賠償請求・契約解除ができる」といった文面を記載しておく必要がある。

また、情報漏えいがさらに広がらないように、「秘密情報の使用差止を請求できる」の一文も加えておくことが望ましい。

6.契約の有効期間

契約の有効期間は、年月日が分かる形で明記しておく。また、契約期間が終了した後も秘密情報を保持させたい場合は、「○○に関する秘密情報に関しては、契約終了後も契約条項の効果を持続するものとする」といった残存条項を記載する。

7.管轄の裁判所

秘密情報が漏えいした場合は、損害賠償等に関して裁判で決着をつけることもある。トラブルに発展すると事態がスムーズに進まなくなる可能性もあるので、秘密保持契約書には管轄の裁判所も記載しておこう。

秘密保持契約(NDA)は締結した後も重要!誤解されがちなポイント

秘密保持契約を結んだからと言って、情報漏えいのリスクがゼロになるとは限らない。思わぬ誤解がリスクを引き寄せることもあるので、契約の締結後にも気を抜かないことが重要だ。

そこで次からは、秘密保持契約の締結後に誤解されやすい2つのポイントを紹介する。

「調印する人物=契約を守る人物」ではないことが多い

秘密保持契約書に調印をする人物は、基本的に代表取締役や役員などの上層部が多い。しかし、実際に情報を保持する役目を負うのは、ほとんどのケースで現場の従業員だ。

つまり、調印する人物と契約を守る人物は別であることが多いため、社内で十分な共有ができていないと情報漏えいのリスクは高まる。したがって、契約前には関係する人物としっかりコミュニケーションを取り、可能な範囲で契約内容を共有しておこう。

契約期間の終了後に情報が漏えいすることも

相手企業に提供した秘密情報は、契約期間の終了後に漏えいすることもある。前述の残存条項によってある程度は阻止できるが、この条項の効力も永久的に発揮されるわけではない。

そのため、もし漏えいすると困る情報を提供する場合は、秘密情報の返還・廃棄についても契約書に記載しておこう。例えば、「契約完了後に秘密情報は廃棄するものとする」の一文を加えておくと、情報が万が一漏えいしても損害賠償などの措置を取れるようになる。

契約違反が発生した場合の対処法

秘密保持に関して契約違反が見つかった場合は、具体的な状況をきちんと把握する必要がある。そのため、いきなり契約解除や損害賠償に向けて動くのではなく、まずは受領者に対して状況報告や調査などを求めたい。

調査を通して受領者に非があることが分かったら、次は契約書の内容を再度確認した上で、損害賠償などの措置を取ることになる。ただし、この工程では法律の知識が求められるケースも多いので、無理をせずに弁護士などの専門家に頼ることが重要だ。

なお、情報漏えいは損害の立証が難しいことから、秘密保持契約を結んでいても損害賠償を受けられない可能性がある。また、裁判が長引くと大きな労力も発生してしまうので、開示する情報の内容や範囲は必要最小限に留めることを意識しよう。

安全な契約を結ぶために、基本的なポイントや注意点はしっかりと理解を

秘密保持契約書にはひな形も存在するが、毎回同じものを使うと必要な条項を記載し忘れてしまうリスクがある。保持すべき情報はケースによって異なるので、秘密保持契約書はその都度新しく作成することが望ましい。

常に安全な形で契約を結ぶために、本記事で紹介した内容はしっかりと理解しておこう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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