みそ大手の低価格商品が伸長(画像はイメージ)
(画像=みそ大手の低価格商品が伸長(画像はイメージ))

プチ贅沢需要から生活防衛へ──新型コロナの収束が予測できないことから、生活不安を抱く消費者が増えている。みそにおいても、低価格商品へシフトダウンする人が増えているようだ。それに対して、大手メーカーではより付加価値の高い商品を投入。これまでになかったみその楽しみ方を提案した商品で、さらなるみそ需要の拡大を図る。

全国味噌協同組合連合会がまとめた、2021年1月~7月のみその出荷量、生産量はともに前年を下回って推移した。出荷量が前年比で8,702t減の21万3,883t、生産量が2,017t減の22万3,898tとなった。

2021年 みその生産量・出荷量増減率
(画像=2021年 みその生産量・出荷量増減率)

総務省統計局がまとめた2021年1月~7月の家計調査によると、支出金額は1月を除いて、すべての月で前年を下回った。購入数量は2~5月までは前年を下回ったが、6月、7月で盛り返している。平均価格は6月、7月で下落傾向にある。

国内では、新型コロナの影響で、2020年は内食需要の高まりから、プチ贅沢需要が起こり、中~高価格帯の商品が売れた。しかし、2021年は新型コロナの収束が見通せない中で、消費者の生活不安が高まっていることから、生活防衛意識が強まって、低価格商品を選ぶ傾向にあるようだ。

そのため、高価格帯商品を得意とする中堅メーカーでは売上を落とすところも出てきている。逆に大手メーカーの低価格商品が売り上げを伸ばしている格好だ。

〈麹割合の高いコクとうま味が強いみそがトレンド、マルコメ「糀美人」2ケタ増〉
トレンドでは、麹割合の高いコクとうま味の強いみそが売れているようだ。

マルコメの「糀美人650g」は、毎年2ケタ増を記録している。この勢いは関東エリアだけでなく、東海エリアでの導入も広がっており、マルコメでは、「エリアを問わず全国的に好調だ」とコメントしている。

ハナマルキでは、新商品「追いこうじみそ」を発売し、追いこうじ製法ならではの奥深いコクとうま味をセールスポイントに販促を展開するとしている。

また、ひかり味噌では、みそを楽しむ新たな提案を新商品に盛り込んだ。「みその初物」というコンセプトで開発した商品「味噌ヌーボー初熟(はつなり)」を投入した。秋ならではの季節感を味わえる商品として提案し、新酒ワインを表すヌーボーを商品名に入れ、年に1度の大寒仕込みで仕込んだみその初物を味わえる商品として訴求する。

竹屋では、「乳清ミネラル糀みそ」のパッケージを大胆に変えた。女性をメインターゲットに据え、「おいしく、かしこく、うつくしく。」をキャッチコピーに、「塩分」はひかえて、「おいしさ」はひかえないといったメッセージを訴求していきたい考えだ。

神州一味噌では、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社内に設置した「味噌事業推進部」と連携し、立て直しに乗り出した。本社もサッポログループの本社機能が集まる東京都渋谷区の恵比寿ガーデンプレイスに移転することから、スピード感のある展開を期待したい。

中堅メーカーでは、信州味噌が健闘している。主力の「コクとかおり」や「大寒仕込み」に加えて、「山吹」シリーズの販売も好調のようだ。全体の業績も前年を上回って推移。昨年プチ贅沢需要で購入してもらった消費者がリピーターとなり、継続して購入してもらっているようだ。

調味料としても使いやすい、顆粒みそや液状みそでは、どの店でもラインアップのひとつとしてそろえる売場が増えてきた。一気に需要が高まる商品ではないが、時短・簡便といったトレンドは、コロナ禍において未だ有効なキーワードであることから、今後もある程度の売り上げは確保できるものと考えられる。

〈大豆油糧日報2021年9月29日付〉